クルマのある暮らしをもっと豊かに、もっと楽しく

クルマ最終更新日:2019.09.24 公開日:2019.09.24

自動運転の時代はいつやってくる? 新連載「いま、自動車業界でなにが起きているのか?」(第2回)

100年に一度の変革期にあると言われる現在の自動車業界。今後、モビリティは社会をどう変えていくのか? 本連載では、モータージャーナリストの大谷達也が専門性の高い内容をやさしくかみ砕き、解き明かしていきます。第2回は進化する「運転支援システム」と「自動運転」について。

文・大谷達也

進化のカギは地図にあり

 日産が発表した運転支援システム「プロパイロット2.0」が、限られた条件ではあるものの “ハンズオフ可能” 、つまり”手放し運転ができるクルマ”として話題を呼んでいます。

 すでに同社は、前車に追従して車速を自動制御する「ACC(アダプティブクルージングコントロール)」に、車線追従に必要なハンドル操作をサポートする「LKAS(レーンキープアシスト)」などを組み合わせて「プロパイロット」として製品化していますが、その進化版といえるものです。

 ちなみに、従来の「プロパイロット」と同様の機能はスバル、トヨタ、ホンダ、マツダなどからも多数製品化されていました。

 では、どこが新しいのでしょうか?

 プロパイロット2.0の新機能の話題になると、どうしても “ハンズオフ” に目を向けがちですが、実は日本市場にハンズオフを導入したという意味ではドイツのBMWのほうが一足早かったようです(BMWは2019年4月10日に発表。いっぽうのプロパイロット2.0は同年5月16日の発表で、製品の発売は9月)。ただし、日産はプロパイロット2.0が「世界初のシステム」だと主張しています。

 プロパイロット2.0が本当の意味で「世界初のシステム」と主張できるポイントがどこにあるかといえば、それはナビゲーションシステムと3D高精度地図データを連動させた点にあります。

 3D高精度地図データには、ナビゲーションシステムにこれまで内蔵されてきた地図データよりも格段に詳細な情報が含まれており、高速道路の形状はセンチメートル単位の細かさでデータ化。さらに、すべての車線の区分線情報、速度標識、案内標識まで情報として取り込まれています。

 では、ナビゲーションシステムと3D高精度地図データを連動させると、いったいどんなことができるのでしょうか?

日産が採用する「3D高精度地図データ」は、ゼンリンがダイナミックマップ基盤株式会社の3次元地図共通基盤をベースに、独自に収集・整備した情報を加えたもの

プロパイロット2.0を搭載した新型スカイライン

プロパイロット2.0は運転支援技術

 これまでのナビゲーションシステムは走行車線や追い越し車線といった車両通行帯に関する情報を持っていなかったため、たとえば、高速道路の分岐などではどの車線を走っていれば目的とする路線に合流できるかがわかりませんでした。

 しかし、プロパイロット2.0では、あらかじめ目的地を設定しておくと、分岐地点で正しい車線を走行するようドライバーを支援してくれます。

 具体的には、分岐の手前でナビゲーションシステムが目的とする車線への変更を提案。これをドライバーが承認すると、システムが周囲の安全を確認しつつ、車線変更に必要なハンドル操作などをサポートしてくれるのです。

 とても便利な機能で、「もはや、これは自動運転の一種では?」と思ってしまいそうですが、プロパイロット2.0はあくまでも”運転支援装置”であり、運転の操作はクルマではなくドライバーが担います。もちろん、責任もすべてドライバーにあります。いま説明したとおり、システムがまずドライバーに「車線変更をしてもいいか?」を尋ね、ドライバーがスイッチを押してこれを承認する必要があることが、そのなによりの証拠です。

技術だけではなく、法律や保険の整備も必要

 自動運転に関するニュースなどで、よく”レベル〇〇”という言い方がされます。なんだか難しそうに思えますが、とてもシンプルに説明すれば、レベル2までは運転支援車であり、運転操作の主体はあくまでドライバーにあります。レベル3からは、限定的ではあるもののなんらかの自動運転ができるクルマになるということです。レベル3以上の自動運転車で、自動運転システムが作動中に起きた事故は、最終的に自動車メーカーがその責任を負う方向で考えられているようです。

 こうなると、自動車メーカーとしても完璧な技術ができるまでは自動運転車として提供することはできません。法律や保険などの整備も必要になります。技術的にはかなり進んでいるともいわれる自動運転ですが、レベル3以上の実用化にはまだ時間がかかといわれるのは、このような背景があるからです。

 この点、日産のプロパイロット2.0はあくまでもレベル2であり、したがって事故の責任はドライバーが負います。分岐などでドライバーの意向を確認するのはこのためで、ハンズオフ機能が同一車線内に限られることをわざわざ断っているのも、同じ理由によります。

 先ほど紹介したBMWのハンズオフも同様にレベル2なので、同一車線内のみ有効ですし、作動の開始にはドライバーの承認が必要なほか、ハンドルから手を放していてもドライバーが前方を注視していることを赤外線カメラで監視。さらに「前走車がいて車速60km/h以下の高速道路限定」という条件がすべて満たされて、初めて機能します。

 部分的にハンズフリーができたとしても、運転支援のレベル2と、自動運転が可能になるレベル3では、システムの構成やドライバーの役割に大きな違いがあります。ちなみに、世界初のレベル3は早ければ2021年にも製品化されると見られています。

BMWや日産のほか、国内外の多くの自動車メーカーがレベル2以上の車両開発を進めている

この記事をシェア

  

応募する

応募はこちら!(4月30日まで)
応募はこちら!(4月30日まで)