EVのスーパーカー。アスパーク「OWL」
アスパークが開発しているEVスーパーカー「OWL」。ボディをフルカーボン製にし、850kgという軽量化を実現した。今回はレース用のスリックタイヤを履いて時速0→100km(ゼロヒャク)の加速で2秒切りという驚異的な記録を叩き出したが、今後、市販の溝付きタイヤでもゼロヒャク2秒を目指す。
アスパーク R&D事業部が世界最速を目指して開発を進めている市販EVスーパーカー「OWL(アウル)」。英語でフクロウを意味する名を持つこの4WDのEVスーパーカーが、2月11日に栃木県の同社のテストコースにおいて時速0→100km(ゼロヒャク)の加速性能を試す走行実験を実施。2回の走行で、どちらも2秒を切るタイムをマークした。
「OWL」の時速0→100kmのテスト走行の様子。2秒未満で時速100kmに到達するということは、わずか30mほどで時速100kmに到達するということ。スリックタイヤなので、制動距離も通常の半分ほどで済むため、正味60~70mほどの直線距離があれば、ゼロヒャクのテストを行えるのだそうだ。
2秒切りの様子を詳細に見てみる
1回目で時速100kmを突破したのが1.89秒。2回目は1.921秒を記録した。このレベルの加速になると、時速100kmに達するのにわずか30m前後しかいらないという。
ゼロヒャク2回の走行実験の結果。縦軸は到達速度、横軸は走行した経過時間。時速100kmを超えたのは、1回目は1.89秒。2回目は1.921秒。2回目の走行実験では、1秒を少し経過した辺りで1回目と比べて速度の伸びが鈍化した瞬間がある。機械制御で運転しているわけではないため、どうしても差は出るという。
ちなみに現在市販されているスーパーカー(ガソリン車)のゼロヒャクがどれぐらいかというと、フェラーリ「488GTB」が3秒フラット、ランボルギーニ「ウラカン ペルフォマンテ」が2.9秒、そしてポルシェ「911 GT2 RS」が2.8秒という具合。市販車の2秒切りはとんでもない世界なのだ。ゼロヒャク2~3秒の凄さについて知りたい人は、ぜひこちらの記事もお読みいただきたい(新しいタブが開きます)。
「OWL」の特徴
「OWL」は、全高がわずか990mm、ボディはカーボン製で車重は850kgという軽量さが特徴。モーターによる4輪駆動である。
また「OWL」の特徴として、軽量化と低重心化のためにモーターとして定格出力40kWの小型のものを2基搭載している。ただし、ゼロヒャク2秒を達成するには、320kWの出力が必要ということで、1基40kWの出力を160kWに引き上げるためのパワーアンプを新開発したという。1/1000秒単位で電流を制御しているそうだ。
また、EVの動力源というとリチウムイオンバッテリーを搭載しているイメージが強いかと思う。しかし、実はリチウムイオンバッテリーはパワー密度が低いので、「OWL」が目指す大加速を得るためには、瞬間的にそれだけの大電流を流すことができないのだそうだ。そこで、ブレーキング時の回生エネルギーを蓄えるのに利用されているキャパシタを動力源として採用。ちなみに、市販時にはこのキャパシタとリチウムイオンバッテリーを併用し、切り替えて使うようにするという。
さらに、ゼロヒャク2秒を達成するにはタイヤのグリップ力も重要だ。ウィングなどでダウンフォースを得て車体を押さえつければいいと思うかもしれないが、実はダウンフォースは時速50kmを超えてしばらくしないと働き出さない。ゼロニヒャクなら効果はあるが、ゼロヒャクではダウンフォースに頼れないのである。
そのため、どれだけタイヤそのものが路面をしっかりグリップできるかがポイントとなり、結果としてサスペンションがとても重要になるというわけだ。そのため、サスペンションの動きも常時センサーがチェックしているという。
ドアはバタフライ方式の一種を採用しており、斜め上方に開く。全高はわずか990mmしかないため、F1などのモータースポーツ専用車両に近い視点と思われる。同じ時速100kmでも、普通車などとは迫力やスピード感が段違いのはずだ。
「OWL」のスペック
詳細なスペックは以下の通り。
【シャシー&ボディ】
全長×全幅×全高:4830×1935×990mm
ホイールベース:2527mm
トレッド(前/後):1603/1552mm
地上最低高:90mm
車両重量:850kg
タイヤサイズ(前/後):(前)275/30R19 (後)335/30R20
【性能】
1充電走行距離:150km
最高速度:時速280km
最大回転数:4000rpm
モーター:40kW×2
定格出力:65kW
最大出力:320kW
最大トルク:764N・m
ドライブシステム:4WD
バッテリー:スーパーキャパシタ+バッテリー
総電圧:300V
最大電流:2000A
「OWL」の価格と今後の計画
「OWL」のリアビュー。
今回はレース用のスリックタイヤを履いていたが、市販化した際には溝の入った通常のタイヤでもゼロヒャク2秒を目指すとしている。そして同時に、市販化に向けての法規などの認証取得を進めていく予定とした。
そして価格だが、350万ユーロを予定。1ユーロ約130円(2月19日現在)として計算すると、4億5500万円。生産台数は限定50台の計画で、市販1号機は2019年内の予定だ。
2018年2月19日(JAFメディアワークス IT Media部 日高 保)