「JAF全国ロードサービス競技大会」雨中の第15回、二段重ねのクルマをどう排除する?
JAF全国ロードサービス競技大会の花形といわれる、2日目の団体競技の様子。ひとりの指揮官の下、3人の隊員が役割分担し、地震により放置された事故車を移動し、緊急通行路を30分以内に確保するという災害支援活動の設定で行われた。
10月16日(月)・17日(火)の2日間にわたり、1978(昭和53)年から開催されている「JAF全国ロードサービス競技大会」の第15回が開催された(一般には非公開で行われている)。
JAF全国ロードサービス競技大会とは、全国8地区の地方本部での選抜を勝ち抜いて選ばれたJAF隊員が、故障車のけん引やパンクの応急修理など、実際の救援技術を競い合う、ポイント制で優劣をつける団体競技だ。途中3年おきに実施された時期もあったが、2007(平成19)年の第10回大会からは2年ごとに開催されており、15回目を迎えた。今回で約40年の歴史のある大会である。
その目的は、「競技大会を通じて、安全対策・接遇・救援技術を磨き、ロードサービス職員の力量を向上することで、全国どこでも高品質なサービスを提供する」というものである。
8地方本部で優劣を競う!
8地方本部それぞれで選抜が行われ、4人1組のチームを結成。2日目の団体競技では、特別支援隊員の指揮の下に災害支援活動が行われた。
8地方本部は、北海道、東北、関東、中部、関西、中国、四国、九州となっており、各地区の地方本部で選抜された隊員4人1組のチームを結成して個人および団体競技に挑戦する。
メンバーはJAFロードサービス隊の基地主任、15年以上の隊員(ベテラン隊員)、15年未満の隊員(一般隊員)、特別支援隊員という構成だ。なお特別支援隊員とは、自然災害時などが発生した際に被災地に派遣され、被災車両の排除や被災者の救援依頼に対応する役目を負っており、ロードサービス隊の経験豊富な隊員が選ばれる。
なお、チーム名は以下の通り。
北海道:アイスバーンズ
東北:挑!超!跳!東北魂
関東:関東ST~samurai 7~
中部:でぇらぁ2連覇やったるんさーズ
関西:Reach the Top
中国:力舞吼!Kabuku
四国:ボーディ4
九州:RES九FORCE(レスキューフォース)
2日目の団体競技の様子。たかだか2台のクルマと1台のバイクといえど、移動するには非常に多くの作業が必要で、どのチームも制限時間ギリギリかオーバーしてしまうほど。しかも安全性の面から、作業の手順が決まっているところもあり、そこを間違えると減点となる。
約40年の歴史で初の試みは「マネジメント競技」!
初日の基地主任の競技のひとつで、今回初めての実施となるマネジメント競技「隊員面談と朝礼」がスタートしたところ。実際と同じ環境にするため、当事者以外は別室からモニタリングすることになっていた。
今回の特徴は、4人のメンバーの中に基地主任がいること。基地主任とはJAFロードサービス隊の拠点である基地の責任者だ。自ら出動することもあるが、加えて基地のマネジメントの責任を負っている。
ロードサービス全体の士気を向上するにはマネジメント力も求められることから、今回は基地主任も選抜されることになったのである。基地主任が担当するマネジメント競技は、「隊員面談と朝礼」。部下と面談を行い、効果的な指導を行った後、朝礼で3名の隊員に周知して、善後策を検討するという内容だ。
初日の個人競技はひとり2競技ずつ8競技を実施!
キャリアが15年未満の隊員が挑む競技で、タイヤを取り外せない状況で、どうパンクを応急修理するかというもの。修理が可能か判断するための知識と確認が重要で、作業をどれだけ効率よく行えるかがポイントだ。
競技大会の初日は個人競技で、町田ドライヴィングスクールを会場として行われた。隊員ひとりにふたつの競技が設定されており、2種目の合計得点は200点満点。2日目に行われる学科競技100点満点と合わせて、1人300点満点、4人合計すると1200点満点となっている。内容は、以下の通りだ。
なお★は「お客様設定あり」を意味し、要は実際に救援を要請したドライバーがいるという設定で、お客様役を演じるスタッフがいる。ドライバーや同乗者の安全を確保し、また動揺するドライバーの気持ちに寄り添った対応ができるか、などももちろんポイントとなる。
●基地主任:
お客様の家族がパンクしたタイヤの交換途中にジャッキが倒れてしまい、そこから交代しての「タイヤ交換作業」★
マネジメント力を競う「隊員面談と朝礼」
●(15年以上の)ベテラン隊員:
トラブル件数第1位の「バッテリー上がり(バッテリー交換)」★
1台のクルマのエンジンを始動できるようにする「故障探求」
●(15年未満の)隊員:
危険な路上で立ち往生した「二輪車の搬送作業」★
クルマから取り外せない状況における応急的な「タイヤのパンク修理」
●特別支援隊員:
特殊構造のロック機構を備えたトヨタ「プリウス」を使った「ドアロック開放作業」★
故障車のけん引「レッカー作業からけん引走行しての入庫まで」
こちらも15年未満の隊員の競技で、危険な路上で立ち往生してしまったバイクを搬送する作業を行うというもの。8番の隊員の左側にいる女性ふたりが、救援要請をしたライダーたちを演じているスタッフ。彼女たちをきちんと安全なところに誘導できるか、また話しかけられてもちゃんとその時点の作業の安全を確認してから対応できるかなどが見られる。なお、一番右の人物は審判。
地震発生! 放置された事故車を移動せよ!!
そして2日目にJAF中央研修センターで行われたのが、個人の学科競技と、競技大会の花形といわれる団体競技だ。団体競技は、今回は地震が発生したという想定で、災害支援活動を行うというものだった。こちらはチームで400点満点となっている。
状況設定は、1台のクルマのボンネット上にもう1台のクルマの右後輪が乗り上げた状態で道路を塞いでしまっているというもの。なおかつ、乗り上げたクルマの下にはバイクも転倒している。これを30分という制限時間内にレッカー車2台を使って移動させ、緊急通行路を確保するのである。
下側のクルマは4WD車の日産「ブルーバード シルフィー」で、上に乗ってしまっているのがFF車のホンダ「アコード」。レッカー移動する際、後輪も駆動する4WD車や後輪駆動のFR車の場合、FF車よりも作業が増える。
特別支援隊員の指揮の下、団結力が試される!
団体競技は、特別支援隊員を指揮官とし、4人が2チームに分かれたり、または各自が単独で役割分担をしたりして作業を進めていく。チーム内の情報共有や、本部への報告、警察との連携なども重要である。
その様子はまさにプロフェッショナルであり、子どもたちにも動画でこの様子を見せれば、「JAF隊員、かっこいい!」となること間違いなしの内容だった。ちなみに、当然ながら進め方はチームによって異なり、指揮官も、キビキビとしたところが際立つ人もいれば、リラックスさせるために冗談をいう人もいるなど、それぞれ個性があった。
ポイントはやはり30分という時間制限。400点満点の内、競技時間内終了ボーナスが100点もあるので、慎重すぎた結果、完了できないと得点が伸びないのだ。
出動要請がかかり、2台のレッカー車の出動前点検をする隊員。奥側のレッカー車は同時に残りの2隊員が出動前点検を実施している。
団体競技のハイライトともいえる、「ブルーバード シルフィー」に乗り上げてしまった「アコード」の後部をレッカー車で吊り上げたところ。この状態でまずバイクを引き出し、それから「ブルーバード シルフィー」を後方に移動させ、そして「アコード」を降ろす。
競技の後半を画像で一気に紹介!
最後は、ハイライトの「アコード」の吊り下げからけん引完了まで、順を追って画像で紹介する。
「アコード」を吊り上げている内に、バイクと「ブルーバード シルフィー」を移動させたところ。アコードが動いてしまうと危険なので、前輪には車止めをかましてある。一歩間違えると隊員がクルマの下敷きになりかねない命がけの作業なので、細かい点も気を抜けない。なお、一番左は撮影スタッフ。
引き出したバイクを全力で移動させる隊員。バイクもきちんと通行の邪魔にならないように移動させないとならない。
「アコード」はFFなので前輪を載せたら、後輪はそのままにしてけん引していける。
「ブルーバード シルフィー」は4WD車のため、そのままけん引をせず、「ドリー(台車)」を装着する。
けん引終了。2台のリアウィンドウには「けん引中」の貼り紙。これも貼り忘れたら当然ながら減点。
第15回大会は、九州地方本部「RES九FORCE」が1600点満点中1139点を獲得し、総合優勝。九州地方本部は、2009(平成21)年の第11回大会以来の総合優勝となった。
第16回大会は2019年。その前には関東地区大会もあるので、今後もこうした競技大会の様子をお届けしていく予定だ。
2017年10月26日(JAFメディアワークス IT Media部 日高 保)