【CEATEC2017】ホンダ、EVの充電時間の長さを解消する方策を提案
10月3日から6日まで幕張メッセで開催された、家電・エレクトロニクス系で、国内最大級の展示会「CEATEC JAPAN 2017」。
ここでは自動車系のテクノロジーをピックアップしてみる。第1弾は、国内大手自動車メーカー編だ。ただし、今回は国内大手自動車メーカーでブースを構えたのはホンダのみ。テーマとして「スマート エネルギー ストレージ マネジメント」を掲げていた。
ホンダが参考出展した、着脱可能な可搬式バッテリー「モバイルパワーパック」。量産モデルだが、発売日や価格などは未発表。
EVの充電時間の長さを解消するシステム
まず紹介するのは、着脱可能な可搬式バッテリー「モバイルパワーパック」と、その充電ステーションユニット「モバイルパワーパックエクスチェンジャー」(以下エクスチェンジャー)を中心としたシステムだ。
EVの問題点といえば、充電に時間がかかってしまうこと。特に、EVスクーターやマイクロモビリティなど、大容量バッテリーを搭載していない小型EVは油断していると街中で充電切れ、なんてこともあり得る。今は充電設備が街中にいくらでも存在するが、急速充電ですら給油のようにはいかないし、なおかつ急速充電はバッテリーを劣化させてしまうデメリットもある。
そうした問題を解消するために考え出したのが、今回のシステムだ。
仕組みとしては単純で、充電切れのモバイルパワーパックを小型EVなどから外し、街中の各所に設置されたエクスチェンジャーにセットすると、フル充電のものと交換できるのである。
また、セットされた充電切れのモバイルパワーパックはエクスチェンジャーにて充電される。そして後ほど別のユーザーが訪れた際に、フル充電になったモバイルパワーパックがまた別の小型EVに搭載されるというわけだ。
充電ステーションユニット「モバイルパワーパックエクスチェンジャー」(コンセプトモデル)。充電切れのモバイルパワーパックをセットすると、フル充電のものが取り出せるようになる仕組み。普段はシールドで覆われ、モバイルパワーパックを勝手に持ち出したり、いたずらしたりできないようになっている。複数の「モバイルパワーパック」を充電可能なほか、電力需要のピーク時は、エクスチェンジャー内のモバイルパワーパックから送電網に電力を供給することもできるという。
家庭用の増設可能な充電・給電器と屋外用可搬型も
そんなモバイルパワーパックを家庭内で使用するための装置が、増設が可能な充電・給電器「モバイルパワーパック チャージ&サプライ」だ。これにモバイルパワーパックをセットすると、モバイルパワーパックに充電することが可能な一方で、スマホなどを充電できたり、小型家電などを使用できたりするなど、給電もできる。
増設が可能な充電・給電器「モバイルパワーパック チャージ&サプライ」(コンセプトモデル)。接続すると一度に使える電力量が増える。利用する小型家電やIT機器などの数に合わせ、モバイルパワーパックと充電・給電器をそろえる形だろう。
そしてアウトドアでの利用や、非常時用の電源、また無電化地域への電力供給などにも使える可搬型のモバイルパワーパック チャージ&サプライ。ケースの中にモバイルパワーパックをセットし、キャスターとキャリングハンドルがあるので、ゴロゴロと転がしていけるというわけだ。
キャスター&ハンドル付きの可搬型「モバイルパワーパック チャージ&サプライ」(コンセプトモデル)。フタが開いて中に、モバイルパワーパックをセットすることができ、アウトドアなどのほか、非常時にもバッテリーとしても利用できる。
なお、これらのコンセプトを実現するには、まずはモバイルパワーパックを共通規格として、それを世の中に普及させていく必要がある。またエクスチェンジャーはどれだけ多くの箇所に設置できるか、といった問題もある。
さらに、モバイルパワーパックはこれまでのように個人が購入する形だと、エクスチェンジャーで交換するのには適さない。モバイルパワーパックのみリースのような形態にして、交換を容易に行える仕組みが必要だろう。
ホンダとしては1社単独では普及させられないことを承知しており、多くの企業と手を結んで、このシステムをプラットフォームとして広めていきたいとしている。
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続いては世界初の機能を搭載したスマート水素ステーション
スマート水素ステーション70MPaコンセプト
スマート水素ステーション70MPaコンセプト。ホンダは2001年から水素製造の研究開発に取り組んでおり、2014年に最初のモデルのスマート水素ステーションを開発、岩谷産業、さいたま市、北九州市と実証実験を開始した。現在は全国18箇所に設置されている。
ホンダ「クラリティ FUEL CELL」やMIRAI(トヨタ)など、燃料電池自動車(FCV)に供給する高圧水素を製造・貯蔵・充填するスマート水素ステーションをホンダは開発しており、現在ホンダ和光および青山本社ビルや沖縄県の宮古空港など全国18箇所に設置されている。
今回出展されたのは、高圧水電解型水素製造ステーションとしては世界初となる製造圧力82MPa(メガパスカル)、充填圧力70MPaというスペックでの商品化を目指して開発が進んでいるコンセプトモデル。
水素をクルマの水素タンクに充填するには、高圧にする必要がある。そのため通常はコンプレッサーを使って加圧するのだが、このコンプレッサーが場所もとるし、そもそもかなりのエネルギーを消費してしまう。これに対してホンダが独自開発した高圧水電解システム「パワークリエイター」は、コンプレッサーを使用せずに高圧の水素を直接製造することができるのだ。コンプレッサーを使用しなくてよいので、従来に比べるとコンパクトに水素スタンドを作ることもできるという。
ホンダのFCV「クラリティ FUEL CELL」。リース専用車で、価格は766万円(税込)。一充填走行距離は約750km。画像の1台のカラーリングはプレミアムブリリアントガーネット・メタリック(ルーフカラーはブラック)。
2017年10月15日(JAFメディアワークス IT Media部 日高 保)