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クルマ最終更新日:2016.08.01 公開日:2016.08.01

【動画あり】横浜に新観光施設、水陸両用バスがスタート

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来賓や関係者を乗せて水陸両用バス1号車がスプラッシュ! 

 横浜市はみなとみらい地区において7月27日から、社会実験「~水・陸 新発見!横浜みなとまちめぐり プロジェクト~」による水陸両用バスの運行をスタートさせた。同日はテープカットなどの式典が行われると同時に、関係者並びに報道関係者向けの運行が行われた。

 一般の利用は8月10日(水)よりプレスタートし、8月末から本格運用となる。そして実験は2020年3月末まで行われる予定で、好評なら2020年4月以降は営業路線として定期運行することも検討しているという。運行担当事業者は、2015年8月の公募により決定した、日の丸サンズとシティアクセスの2社だ。

 本格運用がスタートしてからの運行スケジュールは毎日10時から18時までで、2コース各5便ほどが予定されている。ただし、天候や施設および車両の整備で運休になる場合もあるとした。

コースは桜木町と赤レンガの2種類を用意

 ルートは桜木町コースと赤レンガコースの2つを用意。JR桜木町駅から徒歩10分程度の帆船が展示されている「日本丸メモリアルパーク」、もしくは赤レンガパークの2か所に乗車場があり、どちらから乗っても約70分の周遊となる。

 コースはどちらも陸上ルートと海上ルートで構成されており、通常の海上ルートはパシフィコ横浜・赤レンガ倉庫沖(下画像の緑色のルート)となるが、波や風が穏やかなときは新港ふ頭を一回りする青色のルートを運行することが計画されている。

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コースは2種類あり、どちらも陸上ルートと海上ルートが組み合わされ、約70分と本格的な観光コース

 海へのスロープは、日本丸メモリアルパーク内に新たに設けられ、すぐ近くからスプラッシュの瞬間や、逆に上陸してくる瞬間を見ることが可能。海水によるサビなど金属部品の腐食を防ぐため、このスロープにはシャワーが設置されており、車体(船体)下面を洗浄できる仕組みだ。

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水陸両用バスの運行のため、日本丸メモリアルパーク内に新たにスロープが設けられた。

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1台○億円の水陸両用バスの詳細!

赤地にくじらをあしらったデザイン!

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ラッピングされた1号車。赤地なので、視認性が高く、遠くからもわかる。

 水陸両用バスは8トントラックのシャシーを大幅改造し、乗客44名分のシートを設けてある。

 車両部分の日通商事と、船舶部分の隅田川造船により、合同で製造された。1台1億円ほどだそうで、現在は2台ある。ちなみに、水陸両用バスも自動車検査と船舶検査の両方をクリアーしているのはいうまでもない。スペックは以下の通り。

全長:11.98m
全幅:2.48m
全高:3.79m(航海灯を含まず)
ホイールベース:6.22m
車両総重量:約1万3140kg
排水量:43.1t
総トン数(船舶容積):11t
喫水:1.35m(車両下部含む)
乗客(座席数):44名

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水陸両用バスの車(船)内の様子。乗客用シートは44席ある。

エンジンは陸上用と水上用と2種類搭載

 エンジンは車両用として日野「J08E」と、船舶用としていすゞマリン「UM4BG1TCX」の2種類を搭載。それぞれ切り替えて使用する仕組みだ。スペックは以下の通り。

●J08E
排気量:7961cc
出力:210kW(285PS)
最高速度:時速100km

●UM4BG1TCX
排気量:4329cc
出力:154kW(209PS)
最高速度:時速約7kt(時速13km)
通常航行速度:時速4~5kt

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車体下部を後方から。舵があってその奥にスクリュー、そして後輪とその車軸という具合。

 ちなみにバスのデザインは、横浜市内で活躍中のデザイナー・天野和俊氏によるもの。くじらをあしらった絵柄となっており、水上ではくじらが海面を泳いでいるようなイメージとなる。式典時には1号車のみがラッピングされており、下の画像の通り2号車はグレーだったが、このあと同じデザインでラッピングされる予定だ。

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まだラッピングが済んでいない2号車。まるで軍用の船舶のような渋い雰囲気で、曇天の日はステルス性が高い!?

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操縦席はどうなってるの?

操縦者はドライバー兼キャプテン!

 また面白いのが、操縦者の肩書き。陸上ではドライバー、水上ではキャプテンということで、肩書きも切り替わる形だ。免許は大型2種と1級小型船舶の両方を所持する必要がある。

 操縦系は基本バス用のステアリングやペダル類がまずあって、そこにジョイスティック型の船舶用の操縦装置が操縦席右手に、船舶用エンジンのメーター類などが左側に設けられている。船舶の操縦というと操舵輪のイメージだが、スペース的な都合もあり、最近は小型船舶などで採用されることも多いジョイスティックになったというわけだ。

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ドライバー兼キャプテンズシート。基本はクルマで、究明浮き輪の右が船舶用エンジンの回転計など。

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船舶用の操縦は、ステアリング右にあるジョイスティックで行う。ステアリングは使わない。

 操縦性は安定感があって、旋回性能も悪くないという。ちなみにタイヤがフロートになってしまって船体を不安定に指せてしまいそうなイメージがあるが、そんなことはないそうだ。

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実際に乗ってみたら開放感が…!

スプラッシュのときは両手を挙げて!

 そして乗ってみての感想だが、やはりスロープを降りて海に突入するスプラッシュの瞬間は、テーマパークのアトラクションのようで、迫力がある。女性アテンダントが乗り込んでいて(バスガイドとはいわない)、いろいろとマイクで説明などをしてくれるのだが、スプラッシュの瞬間は両手を挙げてバンザイ状態でカウントダウンするよう案内される。

 実は、大丈夫なのかちょっと不安だったのだが、ダッパ~ンといっても、まったく転覆しそうな不安定な揺れなどは一切なく、逆にあまりにも安定しているので驚いてしまったほど。しかも、この日は風もあまりなかったことと、後方の席だったのもあり、水しぶきを被るようなこともなかった。もちろん、デザイン的に客席にばしゃばしゃと水しぶきがかかるようなことがないような設計だ。

 陸上では、2階建てバスの2階のような位置になるので、着座していても周囲を結構高所から見下ろす形になるのだが、水上ではそれが一気に変わる。さすがに手は届かないのだが、水面が結構近く感じられて、なかなか気持ちがよかった。

やはり海は広くて大きくて開放感がいい!

 プレス向けの内覧では、スロープから1kmほどのところまで航行。ここまで来ると、非常に気持ちいい! ちょっと曇り空なのが残念だが、周囲にもう建物がないため、クセになりそうな開放感である。

 離れたところにはベイブリッジや港湾施設、大型船舶、パシフィコ横浜を初めとするみなとみらい地区の大型建造物などが見え、陸上からは見られない、新鮮な横浜の景観を拝める。あれは何だろう、あそこに行ってみたいな、となってくるのだ。

 ちなみにみなとみらい地区は、海から見た景観も考慮されて街が整備されているそうである。

 また、そうした解説を女性アテンダントが行ってくれるのだが、海らしく水兵をイメージした実にすてきな制服となっている。

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アテンダントの制服は、ご覧の通り水兵をイメージしたものとなっている。

上陸は衝撃がすごそうだが果たして!?

 今回は陸上ルートがカットされているのでずっと短いのだが、実際には70分ほどになる。そして最後に待つのが、スロープの上陸だ。アテンダントが、無事上陸できるのかと、ドライバー兼キャプテンと乗客にプレッシャーをかけるが、もちろん問題なく上陸。

 遠方からスロープに向かっていくと、スロープの横幅がかなり狭く見えるので、確かに多少は心配になるのだが、さすがにそれほど速度が出ているわけではないので、それは問題なし。

 それよりも、上陸する瞬間に浮力が一気に抜け、タイヤやサスペンション、シャシーに一気に車重がかかって大丈夫なのか心配だったが、もちろん問題はまったくなし。安心感バツグンで上陸は行われた。

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横浜観光の新たな目玉となるか!? 利用料金などは?

横浜観光の新しい目玉が誕生した予感!

 乗ってみて、やはり海はいいなぁ~、というのが正直な感想。開放感がすばらしく、リフレッシュ間違いなし! 悩みがあったとしても、「悩みって何だっけ?」となるのは間違いない。今回は陸上コースがカットされていたのだが、1台のバスに乗ったまま、陸上からも海上からも観光できるというのは、なかなかできない体験ではないだろうか。

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遠くに見えるベイブリッジ。右手には港湾施設があり、大型船舶なども。この開放感はお金を払う価値あり。

 それも、横浜のような街でそれができることがすばらしい。間違いなく、同地の新しい観光ツアーとして人気を博すことだろう。 料金は、大人3500円、小学生以下1700円。当日受付だ。正直なところ、もう少し安いと利用しやすいと思うので、ぜひ企業努力で値下げを実現してもらいたい。

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2号車と水上ですれ違い。色味がグレーなので、水上だとさらに軍用の特殊車両風に見える。

 世界規模で見た場合、水陸両用バスが活躍している港湾都市は多いという。例えば、米国ボストンなどでは40台も就航していて、市民や観光客の足として活躍していそうだ。

首都圏で海上観光も行う水陸両用バスはここのみ!

 日本でも、水陸両用バスは各地で観光用に利用されているが、首都圏ではこのほかに、日の丸サンズの関連会社である日の丸自動車興業が季節運行している、「東京スプラッシュツアー「スカイダック」 東京スカイツリーコース」があるぐらい(2016年は9月30日まで運行中)。

 ただし、こちらは江東区東大島で旧中川にスプラッシュすること自体を目玉としており、観光要素は正直あまりない。

 水陸両用バスを運行するには、スロープを作る必要があるし、また観光用に水上航行するには、関係する行政に許可を取り付けるなどの手続きも多く、就航させること自体が大変である。

 それでも非常にすばらしい内容だと思うので、港湾都市ならではの、陸と海の両方から観光できる新しいスタイルが横浜に定着することを期待したい。

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記念式典では、横浜海洋少年団の少年少女たちによる花束贈呈が行われた。

2016年8月1日(JAFメディアワークス IT Media部 日高 保)

フォトアルバム

●日通商事(車両)/隅田川造船(船舶)「社会実験 横浜水陸両用バス」(サイズ900×600:全24点)

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