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クルマ最終更新日:2016.06.17 公開日:2016.06.17

日産、バイオエタノールを使う新型燃料電池システム

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日産の新型燃料電池システム「e-Bio Fuel-Cell」搭載車両のシステム概念図

 日産は6月14日、バイオエタノールから発電した電気で走れる新型燃料電池システム「e-Bio Fuel-Cell」(eBFC)を開発したことを発表した。クルマのさらなる効率化と電動化による走りの楽しさを追求する、「ニッサン インテリジェント パワー」を具現化する技術の一つだという。

 eBFCは燃料電池のシステムだが、MIRAI(トヨタ)やクラリティ(ホンダ)が搭載する「固体高分子型燃料電池」(PEM)とは異なる、「個体酸化物燃料電池」(SOFC)という種類の燃料電池を使っている。SOFCの長所は発電効率の良さと、触媒用の貴金属を必要としないところ。一方、短所は、各種の燃料電池の中でも最も高温で稼働することで、これまでは800度前後にする必要があった。クルマの動力源としてSOFCを搭載するのは、今回が始めての試みだという。同社がこの課題をどのようにクリアしたのかは、今後注目していきたい。

「eBFC」ならガソリン車とEVのいいところ取りができる!?

 燃料電池車というと前述のMIRAIもクラリティも燃料は水素だが、eBFC搭載車はバイオエタノールを利用する。ただし、バイオエタノールでSOFCを直接稼働するのではなく、バイオエタノールから水素を取り出す改質器を搭載し、その水素でSOFCを稼働する。同社ではSOFCの発電効率の高さから、航続距離はガソリン車並みの600km以上が実現可能としている。

 バイオエタノールを燃料とする利点は、常温常圧で液体なので、水素のように高圧に対応する必要がなく扱いやすいこと。燃料タンクにはガソリン車と同様なものが利用でき、燃料スタンドも整備しやすい。つまりeBFCを搭載すれば、扱いやすい液体燃料を短時間で充填し、長距離走行も可能で、さらに電動駆動ならではの静粛性も得られるという、ガソリン車とEVのいいところ取りをしたようなクルマを開発できるというわけだ。

→ 次ページ:バイオエタノールは、カーボン・ニュートラル

バイオエタノールは、カーボン・ニュートラル

 ただし、走行中はCO2フリーの水素燃料の燃料電池車とは異なり、バイオエタノールを燃料にすると、走行中にCO2を排出することになる。改質時の反応でCO2がでてしまうからだ。もっとも、バイオエタノールは植物由来の燃料なので、排出されるのは原料となるさとうきびやトウモロコシが成長過程で大気中から吸収したCO2である。それが再び大気中に放出されるだけなので、グローバルな視点で見ればカーボン・ニュートラルを実現できる(バイオエタノールではなく、化石燃料由来のエタノールではCO2が増加してしまう)。

 バイオエタノールは、日本では自動車メーカーを始めさまざまな企業や大学、研究機関などがその生産技術を開発しているが、実際のところクルマ用の燃料としてはあまり普及が進んでいない。政府も環境問題の観点から普及させようとはしているが、進捗はしていない。そのため、一般には馴染みがないのが事実だろう。

 しかし世界レベルで見てみると、バイオエタノールは北南米やアジアなどですでに広く流通しており、中にはブラジルのようにガソリンスタンドで100%エタノールの供給インフラが整っているような国もある。日産がeBFCを開発した理由には、そうした地域のエネルギーと既存インフラの活用が可能であることもありそうだ。

2016年6月17日(JAF MATE社 IT Media部 日高 保)
6月18日15時50分修正

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