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クルマ最終更新日:2018.02.04 公開日:2018.02.04

【ドライブミュージック】 2本のチェロでロックする、 イケメン2人組『2CELLOS』!

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 楽器の中で一番人間の声に近いといわれるチェロ。チェロの包み込むような低音のビブラートや、柔らかくも真っ直ぐに伸びるソロの旋律は、車の中で聞くといっそう胸に響く気がするのはなぜか。車窓に映る景観が相乗効果をもたらすからかもしれない。

 今回のドライブミュージックは、クラシック音楽をベースにして、ロックから映画音楽まで、2台のチェロだけで今まで聞いたことがない演奏を行い、チェロの可能性を広げる2人組『2CELLOS(トゥー・チェロズ)』を紹介したい。

冒頭の写真:2014年に発表された『CELLOVERS(チェロヴァース)』(ソニー・クラシカル)

チェロで弾くマイケル・ジャクソンで衝撃デビュー

 2CELLOSは、クロアチア出身のルカ・スーリッチ(冒頭写真右)とステファン・ハウザー(同写真左)からなるチェロ・デュオ・ユニット。子供の頃からチェロを演奏し、クラシック界で将来を有望視されていた2人が留学先のロンドンで再会し、将来の夢を語りあったことで2CELLOSは生まれた。

 2011年に2人はマイケル・ジャクソンの『スムーズ・クリミナル』を、2本のチェロのみで演奏した自主制作映像をYouTubeにアップした。チェロに抱く優雅なイメージを完全に裏切る、弦が切れるのもお構いなしに激しくロックする超絶演奏は世界中で話題に。わずか3週間で視聴300万回を突破した。これをきっかけに音楽レーベルからのオファーが殺到し、同年6月『2CELLOS』でCDデビュー。全米クラシカル・クロスオーバー・チャートとアマゾンUSクラシカル・チャートで1位となり、無名の新人としては驚異的な数字を記録した。

 2CELLOSは世界各国でコンサートを行う傍ら、エルトン・ジョン、ズッケロ、ラン・ランなど著名アーティストとの共演やコラボを果たし、現時点で4枚のオリジナルアルバムを発表している。
 日本では、2013年にNTTドコモのCMに出演したことで、「イケメン・チェリスト」として話題になったので、ご存知の方も多いと思う。

チェロで創造する宇宙『チェロヴァース』

 冒頭の写真は、2014年発売のアルバム『CELLOVERS(チェロヴァース)』のものである。タイトルは、「チェロでつながる宇宙」を意味する造語で、2人のオリジナル楽曲の名前でもある。
 チェロヴァースは、今までの2CELLOSの歩みがよりダイナミックに進化したサウンドで味わえるアルバムである。

 彼ら独自のアレンジによるロックやヘビメタのチェロ・バージョンは、コンサートではロックコンサート並みに観客を沸かせるナンバーである。今回のアルバムでは、アイアン・メイデンの『トルーパー(The Trooper)』がロッシーニの序曲から、AC/DCの『サンダーストラック(Thunderstruck)』がヴィヴァルディのチェロ・ソナタからシャウトして曲が移り変わるというまさにクロスオーバーな試みを行っている。

 「ミックスをすることによって、クラシック音楽の要素にロックに繋がるものがたくさんあることを示したかった」とルカは述べている。クラシックやロックのジャンルの垣根を超越することは、彼らがデビューの時から行ってきたことであり、その既成概念を打ち破る痛快さこそが彼らが世界中で認められた理由であるように思う。

 『サンダーストラック』のビデオの舞台は、中世の宮廷音楽会。クラシック音楽を楽しみに来た貴族たちの前に2CELLOSが登場する。演奏は優雅なチェロ2重奏で始まるが、段々とヒートアップし、AC/DCの曲へと移行。超絶的な速弾きで床を転がりながら演奏する2人をもう誰も止められない……。この情熱的パフォーマンスをぜひご覧いただきたい。

 他にもアメリカのフォークロックサウンドに挑戦した『I Will Wait』、水面に浮かぶ月を見るがごとく、しっとりとした情感が漂うスティングのバラード『Shape of My Heart 』、クリストファー・ノーラン監督の映画『インセプション』の中のスコアなど、多彩な楽曲が並ぶ。
 オリジナル『チェロヴァース』は、軽快な旋律の繰り替えしが宇宙的な拡がりを感じさせるポジティブな雰囲気の曲。「チェロの魅力の世界にみんなを招待したい」というアルバム全体を象徴すべきアーティストの想いがこもった作品である。

<収録曲>
1 The Trooper (アイアン・メイデン) ロッシーニ:ウィリアム・テル序曲とのマッシュアップ
2 I Will Wait(マムフォード&サンズ)
3 Thunderstruck(イントロ)ヴィヴァルディ:チェロ・ソナタ第5番RV40 IIより
4 Thunderstruck(AC / DC) 
5 Hysteria(ミューズ) 
6 Shape of My Heart(スティング)
7 Mombasa(ハンス・ジマー『インセプション』)
8 Time(ハンス・ジマー『インセプション』)
9 Wake Me Up(アヴィーチーfeat, アロー・ブラック) 
10 They Don’t Care About Us (マイケル・ジャクソン) 
11 Live and Let Die(ポール・マッカートニー&ウイングス)
12 Street Spirit (レディオヘッド)
13 Celloverse (2CELLOS)
<日本盤ボーナス・トラック>
14. Satisfaction(ローリング・ストーンズ)

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甘く切ないサントラで泣かせる最新作『スコア

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2017年発表の映画のサントラをカバーした『SCORE(スコア)』。ソニー・クラシックから発売中。

 2017年に発売された最新作『SCORE(スコア)』は、全曲「映画音楽」で構成されたコンセプトアルバムであり、名門ロンドン交響楽団と共演した話題作である。

チェロで奏でる映画音楽の新境地を開いた『SCORE』

 今回のアルバムは、2CELLOSお得意の激しいロックナンバーは影をひそめ、オーケストラを背景とした勇壮さや甘美なメロディーでの情感の高まりなど、彼らがクラシック音楽の分野で身につけてきた内面性がより前面に押し出されている。

 クロアチアや日本でクラシック・コンサートの公演も成功させている彼らは、さまざまな経験を積むなかで、映画音楽を手がけたいという思いが膨らんでいったという。
 映画『タイタニック』でセリーヌ・ディオンが主題歌を歌った『My Heart Will Go On』は彼女の歌声が頭に焼きついているほどインパクトのある楽曲である。しかし情感にかたよりすぎることなく「端正な演奏」で切なさを強調した2CELLOSの表現力は、独自の世界観を完成していると称えたい。

 『ある愛の詩』や、『ティファニーで朝食を』の『ムーン・リヴァー』、『ゴッド・ファーザー 愛のテーマ』といった映画史に残るラブ・ソングでは、チェロの低い音色が旋律としてこれほどロマンチックに響くことに驚かされる。
 また、ミディアムテンポの『レインマン』や、シンセサイザーを控えめに使い、メロディを強調した『炎のランナー』などアレンジのすばらしさが耳に残る。前にも言ったがアルバム全般を通して、「情熱を内に秘めた端正さ」のようなものが伝わってくる。派手さではなく表現力で勝負した彼らの力量がいかんなく発揮された会心作である。

<収録曲> 
1『ゲーム・オブ・スローンズ』メドレー 
2 メイ・イット・ビー (『ロード・オブ・ザ・リング』) 
3 フォー・ザ・ラヴ・オブ・ア・プリンセス(『ブレイブハート』)
4 ある愛の詩  
5 ニュー・シネマ・パラダイス 
6 ムーン・リヴァー(『ティファニーで朝食を』)
7 『ゴッドファーザー』愛のテーマ 
8 マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン 
9 レインマンのテーマ 
10 カヴァティーナ(『ディア・ハンター』)
11 マレーナ 
12 『シンドラーのリスト』メイン・テーマ
13 『炎のランナー 』よりタイトルズ
14 ナウ・ウィ・アー・フリー(『グラディエーター』)
<日本盤ボーナス・トラック>
15 『M21-許し forgiveness』坂本龍一 feat. 2CELLOS(映画『怒り』より)

 2つのアルバムを通して、甘く切ない旋律もエモーショナルな叫びも自在に表現する、2CELLOSのチェロの世界が存分に堪能できる。
 ジャンルを超えた拡がりをみせる2CELLOSの開放的なサウンドは、寒い日は続くものの春の兆しが見えはじめ、心も冬から春へと転換したいと思う季節にふさわしいドライブミュージックだ。

2018年2月4日(JAFメディアワークス IT Media部 荒井 剛)

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