2020年04月20日 15:40 掲載

クルマ 【自動車燃費ランキング2019:軽自動車編】軽自動車の燃費性能、頭打ちの状態か?


神林 良輔

第7位:マツダ フレア(DAA-MJ55S)33.4km/L

画像9。マツダ「フレア」。スズキ「ワゴンR」のOEM車で、2019年の燃費ランキング(軽自動車)で単独の7位となった。

画像9。2代目「フレア」。6代目ワゴンRのOEM車である。

 スズキから6代目ワゴンRのOEM供給を受け、2017年2月3日にフルモデルチェンジを実施したマツダの2代目「フレア」(画像9)。本来ならワゴンRと同じ順位のはずだが、ワゴンRの燃費値31.0km/Lに対し、「フレア」は33.4km/Lで単独の第7位となった。これは、マツダが独自に燃費面を改善したというわけではない。理由は、ワゴンRが2019年の年末に車両型式を変更するビッグマイナーチェンジを実施したことに端を発する。このビッグマイナーチェンジで、パワートレインを一新したことから燃費も改善するかに見えたが、前後の衝突被害軽減ブレーキなどの予防安全装備などが追加されたことで重量が増加し、逆に低下。31.0km/Lに下がってしまったのだ。

 OEM車の「フレア」においても、同じタイミングでマイナーチェンジが実施されていたら、「フレア」が単独で第7位ということはなかった。しかしワゴンRは2019年末時点でマイナーチェンジが実施されていたが、「フレア」が実施されたのは2020年1月23日のこと。つまり、年末時点ではマイナーチェンジ前だったので以前の燃費値の33.4km/Lのままだったというのが真相だ。こうして、オリジナル車よりもOEM車の燃費性能がいいという現象が起きたのである。2020年4月現在「フレア」には、2種類のグレード「HYBRID XG」と「HYBRID XS」が用意されており、どちらの2WDモデルとも31.0km/Lとなっている。「フレア」はS-エネチャージを搭載するハイブリッド車だ。

第8位:マツダ フレア クロスオーバー(DAA-MS41S)32.0km/L

画像10。マツダの初代「フレア クロスオーバー」。スズキの初代「ハスラー」のOEM車である。2019年の燃費ランキング(軽自動車)で第8位を獲得。

画像10。初代「フレア クロスオーバー」。スズキの初代ハスラーのOEM車だ。

 マツダは、スズキからのOEM車のうちアルトがベースのキャロル以外は「フレア」シリーズとして展開しており、スズキのハスラーのOEM車には「フレア クロスオーバー」(画像10)の名が与えられている。初代「フレア クロスオーバー」は2013年12月26日に発表され、2014年1月31日から発売が始まった。「フレア クロスオーバー」はエネチャージを筆頭に、エコクール、アイドリングストップシステムなどを搭載。最も燃費に優れるグレードは、3種類あるうちのノンターボの「XG」と「XS」の2WDモデルだ。当初は29.2km/Lだったが、2015年5月13日のマイナーチェンジで、S-エネチャージを搭載して燃費が向上。両グレードの2WDモデルは32.0km/Lとなった。

 この「フレア クロスオーバー」も、第7位のフレアと同じ理由により、2019年のランキングでは本家のハスラーより順位が上だ。すなわち、まずスズキが2代目ハスラーを2019年12月24日に発表。一方、マツダが2代目「フレア クロスオーバー」を発表したのは2020年1月29日のこと。つまりランキング対象となる2019年末時点での販売車種は、スズキは2代目ハスラーで、マツダは初代「フレア クロスオーバー」のままだったのである。

 2代目ハスラーは、予防安全装備を搭載してクルマの安全性能は大きく向上しているが、燃費は1.6km/Lほど低下。結果、2019年のランキングで2代目ハスラーはベスト10圏外となり、初代「フレア クロスオーバー」が単独の第8位を獲得した。2020年4月現在、2代目「フレア クロスオーバー」には初代から継承した3種類のグレードが設定されており、30.4km/Lの燃費値をマークしているのは「HYBRID XG」と「HYBRID XS」の2WDモデルとなっている。

第9位:スズキ ワゴンR(5AA-MH95S)31.0km/L

画像11。スズキの6代目「ワゴンR」。2019年の燃費ランキング(軽自動車)で第9位となった。

画像11。現在のスズキの軽自動車を代表する人気車種の「ワゴンR」。2019年の販売台数は7万8582台で第7位。

 2017年2月1日に登場した、スズキの軽トールワゴンの6代目「ワゴンR」(画像11)。「ISG」(※8)の高出力化とリチウムイオンバッテリーを大容量化したマイルドハイブリッドシステムを搭載した。なお、6代目では、従来S-エネチャージと呼ばれていたこのシステムを、マイルドハイブリッドと呼ぶようになった。その性能は、発進から時速100kmまでの加速時にモーターがエンジンをアシストするというもの。また、発進時などのクリープ走行を10秒間だけモーターのみで行うことも可能だ。

※8 ISG:Integrated Starter Generatorの略。「モーター機能付き発電機」のこと。三菱電機が開発した、ハイブリッド車向けのスターターと発電機の機能を併せ持ったシステムである。

 副変速機構付きCVTのギア比は、加速性能と燃費性能を両立するよう最適化がなされた。さらに、軽量かつ高剛性を特徴とするスズキの新型プラットフォーム「HEARTECT」を採用し、ボディや足回りの軽量化も実施。先代との比較(2WD車同士)で約20kgの軽量化が達成された。「ワゴンR」には「HYBRID FZ」と「HYBRID FX」のふたつのグレードがあり、どちらの2WDモデルも31.0km/Lを計測している。

第9位:ダイハツ ムーヴ(DBA-LA150S)31.0km/L

画像12。ダイハツの6代目「ムーヴ」。2019年の燃費ランキング(軽自動車)で第9位となった。

画像12。ダイハツの6代目「ムーブ」。2019年の新車販売台数は12万2835台で、年間ランキングは第5位だった。

 「ムーヴ」は1995年に初代が誕生し、現行の6代目(画像12)は2014年12月12日に発売された。「ムーヴ」の燃費性能の向上も軽量化がポイントだ。ミラ イースと同じ軽量高剛性ボディ骨格構造「Dモノコック」を採用したほか、フロントフェンダー、バックドア、ルーフスポイラーなどの樹脂化も実施。それらにより、従来と同等の衝突安全性能を確保しながら、ボディで20kgの軽量化を実現した。

 そしてエンジン回りでは、イオン電流で燃焼状態を把握することで再循環させる排気ガスを最大化すると同時に、その排気ガスを水冷式クーラーで冷却することでノッキングを抑制する「i-EGRシステム」で燃費を向上。さらに、エンジン冷却水とCVTフルードを相互に熱交換して温度を最適化させ、エンジンの燃焼効率とCVTの変速効率を向上させる機構も搭載した。そのほか、気筒別燃焼制御、低粘度CVTフルード、温度条件に応じた最適統合制御、吸気温度の低減といった技術が投入されている。

 また6代目は、デザイン段階から空力を考慮して設計されたことも特徴的といえるだろう。空気抵抗の大きいトールワゴンではあるが、フロントアンダースポイラーやスポイラー一体型バックドア、ドアミラー、ルーフアンテナなど、複数の空力改善パーツを装備し、空気抵抗係数(Cd値)を従来比で約10%低減した。これらに加え、減速時の運動エネルギーでバッテリーに充電する「エコ発電制御」などにより、「X」と「L」グレードの2WDモデルが31.0km/Lの燃費値をマークした。

第9位:スバル ステラ(DBA-LA150F)31.0km/L


画像13。スバルの3代目「ステラ」。ダイハツの6代目「ムーヴ」のOEM車。2019年の燃費ランキング(軽自動車)の第9位。

画像13。スバルの3代目「ステラ」。ダイハツの6代目「ムーヴ」のOEM車。

 2006年6月14日に発売されたスバル(当時は富士重工業)の初代「ステラ」は、同社が自社生産した最後の軽乗用車だ。その後、スバルは軽自動車の開発を終了し、ダイハツからのOEM供給を受ける道を選択。5代目ムーヴのOEM供給を受け、2011年5月24日に2代目「ステラ」は登場した。そしてムーヴが2014年12月12日に6代目にフルモデルチェンジしたのを受け、スバルも同日に「ステラ」を3代目(画像13)にフルモデルチェンジ。31.0km/Lの燃費値を記録したのは、グレード「L」、「L スマートアシスト」、「G スマートアシスト」の3種類。上級モデル「ステラ カスタム」の「R スマートアシスト」も31.0km/Lだ。

 本家ムーヴとの外見上の大きな違いは、「ステラ」はボディカラーのホワイトが選べないところ。画像13は一見するとホワイトだが、「パール・ホワイトIII」という異なるカラーだ。一方、上級グレードの「ステラ カスタム」は、本家の上級グレード「ムーヴ カスタム」とボディカラーの差異はなく、モノトーンで全6色、ツートーンで5パターンが用意されている。


 軽自動車の燃費改善は、ここのところ足踏み状況が続いている。2019年のベスト10の平均燃費値は34.0km/Lだが、実は2015年時点で34.1km/Lを達成している。この5年間は、34.0~34.6km/Lの間を行き来している状態だ。これは、近年の軽自動車は、衝突安全性能の強化や、予防安全装備などの搭載で車重が増加傾向にあり、フレームやボディの軽量化、パワートレインの高効率化などを実施しても追いつかないことが理由のように思われる。

 では、普通・小型車のように本格的なハイブリッドシステムの搭載が有効かというと、これまた難しい。現在の軽自動車は予防安全装備などの搭載で車両価格が上がっており、そこに本格的なハイブリッドシステムを搭載すると、さらに車両価格の引き上げにつながってしまう可能性が高いからだ。その結果、軽自動車の魅力のひとつである低価格が失われかねない。自動車メーカーとしても悩ましいところだろう。

 今しばらくは、フレームやボディの超高張力鋼板や樹脂の使用比率を増やして軽量化したり、パワートレインをさらに高効率化したりすることで、燃費性能をわずかずつでも向上させていくしかないようだ。

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