2023年03月23日 13:30 掲載
ライフスタイル 長野道が全線開通30周年! その素晴らしき整備効果
長野自動車道 全線開通30周年のあゆみ
姨捨(おばすて)SA(上り)。写真=NEXCO東日本・NEXCO中日本
1986年の初開通から延伸を重ね、1993年に全線が開通した長野道(岡谷JCT~更埴JCT間)は、2023年3月25日をもって全線開通から30周年を迎える。長野道は2005年の日本道路公団の民営化に伴い、現在は安曇野IC~更埴JCT間をNEXCO東日本が、岡谷JCT~安曇野IC間をNEXCO中日本がそれぞれ管轄している。
延長75.8kmの長野道は岡谷JCTを起点に、北上しながら開通工事が進められた。諏訪湖のほとりにある岡谷JCTは、中央道と長野道の分岐点に位置しており、首都圏と中京圏を結ぶ役割を持っている。1993年に開通した長野道北端の更埴(こうしょく)JCTは上信越道と連絡し、北陸圏や北関東圏への移動を円滑にする役割を持っている。
長野道の1日あたりの平均通行台数は1990年度では約2.5万台だったものが、2019年度の調査では約4.6万台にまで増加し、累計通行台数は約4.6億台に達している。長野道といえば、1998年に開催された長野オリンピックでの活躍を連想する人もいると思うが、交通量の増加を含め、他にはこの30年でどのような効果をもたらしたのだろうか?
延長75.8kmの長野道は北陸・首都・中京圏の高速道路を繋ぐ役割を持っている。
長野自動車道の整備効果と「長野自動車道と沿線地域のあゆみ」
北信と中信が身近になり、通勤範囲が拡大
まず、長野道の存在は、長野県民の働き先の選択肢を豊かにした。例えば、長野道が開通するまでは、国道19号を通って中信地域の松本市役所から北信地域の長野県庁を目指した場合、約2時間15分の時間を要していた。しかし、開通後には所要時間が1時間25分と約50分も短縮できるようになった。また、大型車の約9割が長野道を利用するようになったことで、国道19号と403号の渋滞も緩和され、一般道として使いやすい道となった。
そして、車での移動時間を短縮できるようになったことで、北信地域と中信地域に住む人の往来も活発になり、市を跨いだ勤務先も選べるようになった。「長野都市圏パーソントリップ調査」が2016年に行ったリサーチによると、長野県民の通勤手段は車が75.3%、鉄道が6.1%、自転車が7.9%、徒歩が7.5%と、圧倒的に車の利用者が多い。このことからも、長野道が地域の労働環境改善に貢献していることは想像に難くない。
(画像右)1990年から2015年にかけての沿線市町村間の通勤流動量では、松本市ー塩尻市間が4,874人、安曇野市ー松本市間が3,063人、長野市ー千曲市間が2,852人の順で通勤者の往来が増えた。北信ー中信地域間の通勤者も、従来より2倍近く増加している。
長野道の整備による経済波及効果はおよそ3.3兆円!
長野道が全線開通した1993年から人々の移動はより活発になり、長野県の生産額は跳ね上がった。長野道開通の効果を生産額変化額累計で見てみると、2022年までで約3.3兆円の経済波及効果があるとされており、長野県内総生産(実質GDP)は1988年から2018年までで約1.6倍も成長した。
長野道沿線の景色も変わった。かつての長野道沿線は農地が多かったが、開通後は次々と工業団地が誕生し、1995年の松本市には累計4件しかなかった工場立地件数は、2020年には累計117件までに増加した。
長野道整備における生産額変化額の推移(1993年から2022年まで)。※道路整備による地域間の所要時間の短縮などによる企業の生産性向上などの経済活動の関係をモデル化し、道路整備あり・なしの場合の差を算出したもの。※山梨大学大学院武藤慎一教授監修のもと、空間的応用一般均衡モデルと呼ばれる地域間の道路整備が交易を活性化させることで生じるマクロ経済的な効果を計測することを目的に開発されたモデルを使用し算出。※民間企業資本ストックの2015年比を乗じることで30年間の生産額を算出
長野道の通行台数と長野県内総生産の推移。内閣統計表 県民経済計算における長野県の数値は2023年の5月末に更新される予定。
「2021年長野県の園芸畜産」によると、長野県はぶなしめじ、えのきだけ、はくさい、レタス、セロリ、わさびなど6品目の農産物の生産量が全国1位で、果物もリンゴ、ぶどうが2位、桃が3位と、農産物に恵まれている。鮮度が問われる農産物も、長野道の開通により速達性が向上し、中京圏・関西圏に新鮮な食材を届けている。特に名古屋市中央卸売市場における、ぶなしめじのシェアは1980年から2019年までに4.0倍にまで増え、市場の89.3%は長野産が占めているそうだ。
他にも長野県は情報通信機械の製造が盛んで、常に出荷額が全国1位をキープ、2019年の製造品出荷額は1兆873億円(出典:経済産業省 工業統計)となっている。これらを支えているのも、長野道開通による輸送時間の短縮が理由のひとつと考えられている。
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