2022年01月14日 13:00 掲載

ライフスタイル 第43回/動物のオス
メスにアピールするために進化したオスの特徴
【アニマル“しっかり”みるみる】

世界中から集まったさまざまな動物たちを、間近で見て・感じられる施設がサファリパーク。そんなサファリパークで動物たちの世話をする飼育員さんに、知っておくとちょっぴり動物通になれるポイントを、 "しっかり" ご指導いただきました。富士山の自然豊かな環境にある富士サファリパークの動物ふれあい課飼育担当田中さんに、「動物のオス」について解説してもらいました。

文・上條 謙二

ネッキングがオスのキリンの頭を大きく頑丈にした!?

富士サファリパーク_動物のオス キリン|くるくら

キリンのオスは、メスと比較して体高が大きい。また、角が発達していることも特徴。

 昆虫のカブトムシやクワガタムシのオスには、頭部にあるツノ状の突起やハサミ状の顎のように外見からはっきりとした特徴があります。哺乳動物のオスでも、動物種によっては体のつくりや行動・生態でメスと明らかな違いが見られることがあります。今回は、哺乳動物に見られるオスの特徴を、草食・肉食・雑食動物別にピックアップしてみました。

●草食動物3種のオスの特徴まとめ

富士サファリパーク_動物のオス 草食動物3種のオスの特徴|くるくら

 キリンのオスの特徴の一つは角にあります。キリンはオス・メス共に多くの場合、角は5本生えます。頭頂部に大きく目立つ2本の角があり、前角と呼ばれる額に生える角が1本、それ以外にも後頭部(耳の付け根あたり)に2本の短い角があります。「特にオスの場合は、額の前角の盛り上がりが大きいのが特徴」(※田中さん以下同)です。

 成獣のオスは、頭骨が発達しており、メスに比較して頭が大きく、顔もごつごつとしたつくりになります。オスの頭骨の重さは、メスの頭骨に比べ2倍以上もあります。

 キリンのオス特有の行動の一つに「ネッキング」があります。群れ内での順位決めや、メスをめぐって行われる闘争行動の一種で、オス同士が互いに横に並び4本の足を踏ん張って、長い首をムチのようにしならせて相手の首や胴体めがけて激しくぶつけ合います。オスの頭骨が大きくてごついのは、このネッキングによる衝撃から脳を保護するためとも言われています。

 カバのオスの場合もキリンと同様に、メスに比べて体が大きいうえに、顔が骨ばっており、四角く角張っているのが特徴です(メスは顔に丸みがある)。

 オスはなわばり意識が強く、いくつかのユニークな威嚇行動をとります。その一つが「撒き糞」と呼ばれる行動です。水中で短く平たい尻尾を左右に激しく振って、肛門から出てくる糞を辺りに撒き散らします。行動の理由は、自分のテリトリーを主張するための糞による臭いづけだと考えられています。

 「口を大きく開けること」も代表的な威嚇行動です。他のオスより大きく口を開くことで自分の存在を誇示します。ちなみにカバは口を150度開くことができます。カバの牙(犬歯)は、ゾウなどと同様に生涯伸び続けます。この牙はカバの大きな武器でもあります。

 シロサイのオスの場合も、外見上の特徴は角にあります。頭部に2本ある角(角はメスもある)は、体格同様にメスよりも大きく発達しています。角は基本的に外敵と戦うために使うものですが、メスが発情期を迎えると、メスをめぐってこの角を突き合わせ、強さを競い合います。

 シロサイは、角を木や石などの硬いところにゴリゴリと擦りつけて自分の気に入った形に整えます。オスの場合は、メスよりも細く鋭く尖らせる傾向があります。

オスとメスで体格差のないリカオン

富士サファリパーク_動物のオス リカオン|くるくら

イヌ科の動物であるリカオンは、オスとメスとでほとんど体格差がない。

●肉食動物3種のオスの特徴まとめ

富士サファリパーク_動物のオス 肉食動物3種のオスの特徴|くるくら

 ライオンの場合、オスの外見上の一番の特徴は、たてがみが生えることです。頭部から首回り、肩から肘や腹の下までを覆って生えており、生涯伸び続けます。概して若い個体のたてがみは色が明るく、年を取っていくごとに色が濃くなっていきます。また、オスの体の特徴としては、メスと比較して筋肉が発達してゴツゴツとした体つきであることが挙げられます。

 ライオンのオス特有の行動は、メスをめぐって争うことです。ただその一方で、「メスがいない所ではオス同士で集まって、身体を擦り合わせたり、転がって戯れる姿がよく見られます。メス同士でも行う場合もありますがオス同士の方が頻繁」です。オス同士のこのようなじゃれ合いは、コミュニケーションの一環として行っていて、「特に若いオスがより活発に行う傾向がある」そうです。

 トラのオスも体はメスよりも一回り大きくがっしりしています。オス特有の行動としては、尿のマーキングの方法が挙げられます。メスもマーキングは行うのですが、「オスの場合は、尿を後ろ方向にまっすぐ勢いよく飛ばすのが特徴」です。

 次に取り上げたリカオンは、ライオンやトラと違って、オスとメスに体格差があまりないことが特徴です。

 行動としてもオス特有というものがないのが特徴です。野生下では、オスもメスも群れの一員として協力して狩りや子育てを行うリカオンですが、オス・メス問わず群れ内の序列には厳しく、通常の場合の繁殖は優位のペアに限られています。

オスのクマはものへの執着が強い

富士サファリパーク_動物のオス アメリカグマ|くるくら

アメリカグマのオス同士の力比べは、取っ組み合い。相手を転がしたり、乗っかったりして、その際には、口で首元に噛みついたり、手で顔を押しのけたりもする。

●雑食動物2種のオスの特徴まとめ

富士サファリパーク_動物のオス 雑食動物2種のオスの特徴|くるくら

 最後は雑食動物であるクマ科の動物種2種です。

 ヨーロッパ、アジア、北アメリカに広く分布するヒグマ(日本に生息するヒグマは「エゾヒグマ」と呼ばれる)は、メスに比べてオスの体が大きく、特に肩の筋肉の盛り上がりは目立ちます。

 オス特有の行動としては、繁殖の時期になると、木などに背中をこすりつける「背こすり」や木などに爪で跡をつける「爪とぎ」が挙げられます。オスがメスに自分の存在をアピールし、なわばりを主張するための行動と考えられています。この時期のオスは戦闘的になり、「後ろ足で立ち上がり、口を大きく開いてぶつかり合って、オス同士で力比べをよく行います」。またオスのヒグマは食べ物に対しては貪欲で、「他の個体が食べているものを奪おうとしてケンカになることが多い」そうです。

 もう一方のアメリカグマは、北アメリカの森林に生息するクマ。アメリカグマもオスとメスの体格差が大きく、オスはメスより一~二回りほど体が大きくなります。

 野生下ではオス・メス共単独で生活していますが、「園内では複数頭で飼育するため、オスは力比べの取っ組み合いを行い、一度始めるとどちらかがあきらめるまでしばらく続く」そうです。アメリカグマもヒグマ同様に、オスはなわばりを主張するために木などに「背こすり」を行います。またアメリカグマのオスは、「ものへの執着や独占欲が強い傾向がある」そうです。

「オスとメスで体のつくりも行動にも違いがないリカオンですが、園内の個体だと、気性としてはむしろオスの方がメスよりもおとなしいのが面白いです」と田中さん。

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