2021年11月18日 12:10 掲載
ライフスタイル 鉄道と道路の両方を走行できる乗り物が世界初の商用化。「DMV」ってなんだ?
一般道路と鉄道路線をシームレスで走行できるDMV
阿佐東線で導入されるDMV3台。「鉄道モード」で走行するためのフロントのガイド輪を出した状態(写真:阿佐海岸鉄道HPより)
DMVは、線路を走行するための車輪と道路を走行するためのタイヤの両方を備えた車両のこと。「鉄道モード」と「バスモード」の2つのモードを持つことからこの名がついた。最初に開発を始めたのは赤字路線を数多く抱えるJR北海道で、2002年から開発をスタート。一般的なマイクロバスをベースに鉄道を走れるよう車輪を加えた車両に改造し、一般道路と鉄道路線をシームレスで走行できるようにした。従来の鉄道路線を活用でき、新たに路線を作ることなく走行エリアを拡大できることから、過疎地での新たな公共交通として大きな注目を浴びた。
しかし、DMVを運行させるには、車両に合わせてホームを低くしなければならないことや、車体の軽さが鉄道信号機の作動にも不都合を発生させるなど、さまざまな課題も発覚。加えて2013年頃にJR北海道に発生した不祥事が重なり、結果としてJR北海道はこの計画から手を引かざるを得なくなった。それに伴い、各地で進行していたDMV計画も相次いで頓挫することになる。そして、この開発計画は国土交通省の活用検討会に引き継がれ、阿佐海岸鉄道でようやく運行の実現にこぎつけたというわけだ。
ではDMV計画が各地で頓挫する中で、どうして阿佐海岸鉄道はDMV導入に踏み切れたのか。それは阿佐東線の営業距離の短さにあった。その営業距離は今回の事業で新たに編入したJR牟岐線の阿波海南駅~海部駅間を含めてもわずか10kmしかなく、鉄道駅は全部で4か所しかない。そのため、DMVに合わせた駅の改修や信号機などの保安システムの改修にも少ない投資で済んだのだ。また、DMVのもうひとつの課題である定員の少なさも、平均乗車人数が数人程度でしかない阿佐東線では障壁とはならず、むしろDMV導入による話題性による観光需要に期待しての運行になったとも言える。
「バスモード」から「鉄道モード」に切り替わる流れを表したイラスト。ガイドウェイを通過することで可能となる(写真:阿佐海岸鉄道HPより)
一般道からは「バスモード」での前輪を、ガイドウェイのレール外側に入れて所定位置に停止。ここでモードを切り替えるとガイド輪がレールの上に下りてくる(写真:阿佐海岸鉄道HPより)
ガイドウェイ上で「鉄道モード」に切り替わったDMV。この時、フロントのガイド輪はレール上にあり、フロントのタイヤは浮いている(写真:阿佐海岸鉄道HPより)
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