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クルマ最終更新日:2020.11.30 公開日:2020.11.30

「アカカンガルー」|第16回アニマル”しっかり”みるみる

世界中から集まったさまざまな動物たちを、間近で見て・感じられる施設がサファリパーク。そんなサファリパークで動物たちの世話をする飼育員さんに、知っておくとちょっぴり動物通になれるポイントを、 "しっかり" ご指導いただきました。富士山の自然豊かな環境にある富士サファリパークの動物ふれあい課飼育担当の小久保さんに、「アカカンガルー」を解説してもらいました。

くるくら編集部 上條 謙二

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雌雄を決するのは、キックボクシング

アカカンガルー|アニマルしっかりみるみる|くるくら

オス同士が争うときは、尻尾で体を支えるようにしながら後ろ足で相手を蹴りつける行動が見られる。

 有袋目カンガルー科の動物の中で最も体の大きい「アカカンガルー」。一部海岸地域を除くオーストラリア大陸全域に生息しています。体長は、オスで95〜140cm、メスで75〜110cmほど、体重は大きいオスになると80~90㎏にもなります。

 アカカンガルーは成長すると喉元から胸にかけての部分から赤い分泌物が出ます。その影響で体毛が赤褐色に染まります。それで「アカ」カンガルーなんですね。ただし「分泌物が出るのはオスだけで、メスは分泌されないので体は青みがかった灰色です。その分泌物は結構臭いがあって、手につくと独特の臭いがします。カンガルー舎に立ち寄った飼育員はその臭いで分かってしまうほど」(※小久保さん以下同)なんだそうです。しかも強いオスは分泌が盛んだったり、ケンカをすることで分泌量が増えたりします。

 アカカンガルーは野生下では1頭の強いオスと若いメスの個体で構成される群れを作ります(ただし園内では同じ空間で全頭飼育しているため、オスとメス混同の群れ)。

 群れの中の強いオスを決めるのは、「キックボクシングによって」です。オスは筋肉質で、腕や太ももが太く発達しています。前足で相手を押さえつけたり、はたき落とすような戦い方をします。また後ろ足で立ち上がり、前足を使って取っ組み合いをしたり、ときには尻尾で自分の体を支えながら、両方の後ろ足で相手を思い切り蹴飛ばすこともあります。そのキック力はなかなか強力で、「人間がまともに受けてしまうと内臓破裂してしまうほどの威力」と言われています。

 どちらかが戦いを止めるとそれが降参する意味になるので、そこで戦いは終了となります。また「オス同士の戦いの最中に群れのボスが中に割って入ることがあります。地位の高いボスがケンカを止めることで、『俺の方が強い』ということをアピールするための行動」なんだそうです。

尻尾は5番目の足!?

アカカンガルー|アニマルしっかりみるみる|くるくら

有袋目の動物であるアカカンガルーは、「育児嚢」と呼ばれる袋の中で子供を育てる。生後6か月くらいになると袋から顔や手足を出し、8か月くらいになると完全に袋から出る。

 アカカンガルーの身体的特徴ですが、まず目立つのは発達した立派な尻尾です。全体重を支えることができるほど発達しているので、「尻尾を手で持つととても重たい」そうです。尻尾の長さは、体長と同程度です。直立する場合は尻尾は支柱のようになって体を支え、飛び跳ねながら走るときは上下に動かすなどバランスをとるのにも役立ちます。「太くて長くて筋肉質なので、『5番目の足』とも呼ばれるほど」です。

 アカカンガルーは身体能力の高い動物です。「展示スペースから移動させようと誘導していると、飼育員を追い越そうとして、ジャンプして頭上を飛び越えちゃうことがあるんです。本気で跳ぶと高さは2~3m、幅は7~8mくらいは跳べます」。たしかになかなかの身体能力ですね。

 そんなパワーにあふれたアカカンガルーですが、意外に器用なところもあって、5本指の前足で小さいものや薄いものを掴むことが得意です。「エサとしてサツマイモやニンジンを5㎜厚くらいの輪切りにして与えることがあるのですが、そんな薄いものでも器用に握って食べる」そうです。

 アカカンガルーのメスには、有袋目ならではの「育児嚢」と呼ばれる袋がお腹にあります。その袋の中で子供を生んで育てます。アカカンガルーの赤ちゃんですが、かなり不完全な状態で産まれます。生まれた直後の体重は約1g、体長は2~3㎝ほどで、目は見えず、後ろ足も生えていません。前足を使って、嗅覚を頼りに袋まで移動し、お母さんの乳頭に吸い付きます。その乳で育って生後6か月くらいになるとやっと袋から顔や手足が出てきます。8か月くらいになると完全に袋から出るのですが、1歳くらいになってもまだ袋に顔を入れて乳を飲みます。ちなみに園内では「初めて袋から顔を出した日をそのカンガルーの誕生日とする」そうです。

感情が顔に現れてしまう?

アカカンガルー|アニマルしっかりみるみる|くるくら

アカカンガルーが生息するオーストラリアは気温が高いので寒いのが苦手。寒い日は体を縮こませてじっとしていることが多いという。

富士サファリパーク飼育員さん|アニマルしっかりみるみる|くるくら

「怒ったり怯えていると目を見開いたり、リラックスしていると目を細めたりと、アカカンガルーは感情が顔の表情に現れやすいんです」と飼育担当の小久保さん。

 そんなアカカンガルーですが、どんな性格の動物なのでしょうか?

「個体によって本当に性格はさまざまです。人懐っこい個体もいれば、臆病で引っ込み思案な個体もいます。概して園内のアカカンガルーは人に対してとてもフレンドリー」だそうです。

 最後に「アカカンガルーあるある」について伺いました。

 その1、「日中、休日のお父さんみたいな寝姿でいること」。
 こんな仕草になってしまうのは、「アカカンガルーは夜行性と言われており、特に夏の昼間などはほとんど動かず寝て過ごしていることが多いから」かもしれません。

 その2、「怒ったり怯えていると、目をカッと大きく見開くこと」。
 その一方でアカカンガルーは、「リラックスしていると瞼をあまり開かずに、眩しいときに人間がするように目を細めます。感情の動きが表情に現れやすい動物」なんだそうです。

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