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クルマ最終更新日:2020.11.09 公開日:2020.11.09

今冬の長期予報を日本気象協会に聞いた。暴風雪時は運転を控えよう

降雪地帯の居住者や、降雪地帯に出かける可能性のあるドライバーにとって、今年も積雪量が気になる季節になってきた。そこで、昨年に引き続き、日本気象協会所属の気象予報士である岸為良(きし・さだよし)さんに、降雪量や平均気温など、2020年12月から2021年2月にかけて今冬の長期天気予報を聞いてみた。

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北日本は平年並みか暖かく、東日本と西日本は冬らしい寒さに

画像1。今冬の気象予想。気象庁資料「寒候期予報(令和2年9月25日発表)の解説」より。

画像1。今冬の気象予想。気象庁資料「寒候期予報(令和2年9月25日発表)の解説」より。

 岸さんは学生時代に気象予報士の資格を取得し、企業・自治体への気象情報の提供や、道路・交通関係の気象コンサルティングなどを行っているベテランの気象予報士だ。そんな岸さんに、今冬は冬らしく寒いのか、それともここ数年続いている暖冬なのか、まずは12月から2月までの平均気温について聞いてみた。

 「今冬の平均気温ですが、北日本は平年並みか高い予想です。一方、東日本や西日本ではほぼ平年並みで冬らしい寒さとなりますが、12月は平年並みよりも低くなる予想もあります。
 その理由は、今冬は “ラニーニャ現象” によって、東日本と西日本では偏西風が南に蛇行するため、大陸からの寒気が流れ込みやすくなるからです(画像1)。一方で、北日本では、偏西風の蛇行が平年より北に盛り上がるため寒気が流れ込みにくく、低気圧の影響を受けやすくなる見込みです。
 日本付近では、東日本・西日本と、北日本では寒気の影響の受けやすさに違いが生じ、気温傾向にも差が出ると考えられます。昨年、一昨年は “エルニーニョ現象” が発生したため暖冬傾向でしたが、今年は北日本以外では冬らしい寒さとなる見込みです」。

 ラニーニャ現象とは、太平洋の赤道海域において、日付変更線をまたぐ辺りから南米沿岸にかけての海面水温が、平年より低い状態が1年ほど続く現象のことだ。その反対に同じ海域の海面水温が平年よりも高い状態となるのがエルニーニョ現象である。どちらも通常は数年おきに発生し、日本を含めた太平洋沿岸地域だけでなく、世界の天候に大きな影響を与えるとされる。

西日本の日本海側で降雪量が多くなる可能性あり

 冬の天気で最も気になるものといえば、雪だろう。今冬の降雪量はどうなのだろうか。

 「今冬はここ数年に比べると気温が低いため、雪の降りやすい地域が多くなる見込みです。特に、ラニーニャ現象で大陸からの寒気が流れ込みやすくなる西日本の日本海側では、降雪量は平年並みか多くなると予想されています。前回のラニーニャ現象の影響があったのは2017-18年の冬のことで、2018年2月5日から7日にかけて北陸地方で大雪となり、福井市では7日だけで147cmの積雪が記録されました(画像2)。また今冬の同地域の天気としては、曇りや雨・雪の日が多くなる見込みです」。

画像2。2018年2月6日12時の実況天気図 。東日本より西で冬型の気圧配置が強い。2017-18年はラニーニャ現象が発生した。特に、2018年2月5日~8日は北陸地方を中心に記録的な大雪となり、福井市では7日に147cmの積雪を記録した。

画像2。2018年2月6日12時のtenki.jp実況天気図 。2018年2月5日~8日は、ラニーニャ現象の影響で福井市など北陸地方で記録的な大雪となった。

 西日本以外の地域の降雪量はどうだろうか。

 「寒気が流れ込みにくい北日本では、降雪量は平年並みか少なくなる見込みです。ただし、冬型の気圧配置が一時的に強まった場合には、大雪の恐れがあります。また、北日本の太平洋側の地域では低気圧の影響を受けやすいため、平年よりも晴れの日は少ないでしょう。
 東日本の日本海側(新潟県周辺)の降雪量は平年並みで、天気は曇りや雨・雪の日が多いという予想です。また首都圏に加え、東日本から西日本まで、太平洋側の広い地域では冬らしく晴れる日が多い見込みです(画像3)。
 しかし注意が必要なのが、寒気が流れ込んで気温が低い日が続いた後に、本州の南岸を低気圧が通過した場合(南岸低気圧と呼びます)です。地上付近の気温が低くなっているところに、本州の南岸を低気圧が通過して降水があると、雨ではなく雪として降るため、普段雪の降らない関東地方や東北地方の太平洋側で大雪になる可能性もあります(画像4)。南岸低気圧の予報の時には、首都圏を含めた太平洋側の地域でも、大雪に対して注意・警戒が必要となるでしょう」。

 本来は雪が降ることが少ない関東地方の南部や東北地方の太平洋側にも大雪を降らすのが、南岸低気圧だ。テレビなどの天気予報などでその言葉を聞いた時は忘れないようにしよう。

画像3。2018年1月14日15時の実況天気図。冬型の気圧配置が緩み、日本付近は広く高気圧に覆われ、穏やかな日となった。ただし、その数日後には画像4のように太平洋側で大雪となる。

画像3。2018年1月14日15時のtenki.jp実況天気図。冬型の気圧配置が緩み、日本付近は広く高気圧に覆われ、穏やかな日となった。ただし、その数日後には画像4のように太平洋側で大雪となる。

画像5。2018年1月22日21時の実況天気図。地上付近の気温が低くなっているところに、本州の南岸を低気圧が通過して降水があると、雨ではなく雪として降るため、普段雪の降らない関東地方や東北地方の太平洋側で大雪になる可能性がある。このとき東京では23cmの降雪量を記録した。

画像4。2018年1月22日21時のtenki.jp実況天気図。関東の南部の海上にあるのが南岸低気圧。このときは、東京で23cmの降雪量を記録した。

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今冬に備えてしておくべきこと

大雪も想定して事前の対策を確実にしておくこと

 続いて、冬に備えての準備について聞いてみた。

 「近年の傾向として、雪が降るときは短時間に大量の雪が局地的に積もるため、注意が必要です。短時間での強雪に備えるためにも、あらかじめスタッドレスタイヤに替えたり、チェーンの準備をしたりしておきましょう。また、最新の天気予報や道路情報を確認し、状況によっては外出を延期・中止するなど、安全を第一にした行動を取るようにしてください。
 冬型の気圧配置が強まるような時には、北西の風が強く吹き、日本海側の地域を中心に北日本では風雪が強まります。特に、周囲が平坦地で開けた道路では、地吹雪による吹きだまりや視程障害に巻き込まれる恐れがあります。激しい吹雪の中では、周囲が白一色となり視界が奪われたり、道路上に大きな吹きだまりができたりして車の運転が困難になることがあります」。

 万が一、雪のせいで走れなくなってしまってクルマに閉じ込められてしまったときは、どうしたらいいのだろうか。

 「吹雪で視程がなくてクルマを走らせられなくなったとき、積雪量が多い場合はマフラーが雪で塞がれてしまい、車内に逆流した一酸化炭素によって中毒を起こす危険性があります。長時間走れないような事態のときは、エンジンを切ることも検討しましょう。また、地吹雪の発生は局地的で一時的なものであることが多いので、安全な場所で地吹雪が収まるのを待ちましょう」。

 排気ガス中に含まれる一酸化炭素は、酸素の数百倍も血液中のヘモグロビンとの結合性が高い。そのため、体内に取り込まれると酸素が運搬されなくなり、それが一酸化炭素中毒を引き起こす。吸い込んだ一酸化炭素の量が多いと、最悪の場合は死に至る危険性もある。一酸化炭素は無味無臭であり、気がついたときには中毒症状が進んで、身体を動かせないという事態になることも往々にしてあるという。

 その一方で、エンジンを切ればエアコンが使えなくなるため、今度は低体温症で命を落とす危険性が出てくる。大雪の中、クルマに閉じ込められるというのは、かくも危険な状況である。不要不急の事情がない限りは、大雪が予想される中の外出は控えるようにしよう。

 「ここのところ暖冬の年が続いたため、寒さや雪に対して警戒心が薄まっている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、今冬は厳しい寒さの日が多くなると予想されていることを、ドライバーの皆さまにはぜひ覚えておいていただければと思います。
 また、雪が予想されるような時には、最新の天気予報を必ず確認してください。特に以下のキーワードが報道されている時や、大雪や吹雪の予報が出ている時には、不要不急の運転は控える方がよいでしょう」

【キーワード】
●上空の強い寒気
●強い冬型気圧配置
●暴風雪
●視程障害
●南岸低気圧(太平洋側の地域)

昨年に引き続いて今年もお話を聞いたのは、日本気象協会所属の気象予報士の岸為良(きし・さだよし)さん。

昨年に引き続いて今年も岸為良(きし・さだよし)さんにお話を伺った。奈良県出身で、趣味はサイクリング。旅先で出会った風景を写真に収めるのが楽しみだそうだ。


 雪は油断できない。気象と地形などの条件が重なると、2018年の福井市のように1日で150cm近くも積もるようなペースで降ることがある。この量だと、交通量が少ない夜間などに立ち往生した場合、そのままクルマが雪に埋もれてしまう危険性もあるはずだ。もし今冬に西日本の日本海側を走ることがあったら、天候のチェックとクルマの準備、防寒対策などを入念にしておくようにしよう。

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