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最終更新日:2019.11.15 公開日:2019.11.15

自動車税の減税や環境性能割など。消費増税後の車の税金を解説。

2019年10月の消費増税と同時にクルマに関わる税金制度も大きく改正された。改正後に購入した新車登録車では自動車税が減税。さらに、自動車取得税が廃止され環境性能割が導入された。自動車税、環境性能割、エコカー減税、グリーン化特例について解説しよう。

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自動車税はどれくらい減税された?

©Tiko – stock.adobe.com

 「自動税」とは、毎年4月1日時点に車検証上の所有者に対して課せられる地方税のこと。毎年5月ごろになると「自動車税納税通知書」が所有者の元に届き、同月末までに支払うもので、税額は自動車の総排気量や用途などによって決まっている。

 その自動車税が消費増税と同時に引き下げられた。これは消費増税後に予想される新車購入の減少を抑えるための施策で、対象となるのは2019年10月の増税後に購入した新車登録車(自家用自動車)である。経済産業省によると、全排気量で自動車税が引き下げられるのは、1950年の制度創設以来初めてだという。

排気量別の自動車税。改正前後の比較。 出典:経済産業省WEBサイト

  新しい自動車税の引き下げ額は、排気量の区分ごとに定められている。

 例えば、排気量が1000㏄以下の自動車税は2万5000円。引き下げ前は2万9500円だったので、4500円の減税。
 排気量が1000㏄超1500㏄以下の場合は3万500円。引き下げ前は3万4500円だったので、4000円の減税となる。

 排気量が2500cc超えると、以前の税額から一律1000円の減税となるので、排気量が少ないほど、自動車税の引き下げ幅は大きくなっている。なお、この自動車税は購入年だけでなく、購入後も毎年適応される恒久減税である。

 つまり、これから新車購入を考えている人は、排気量1000㏄以下の自家用自動車を選ぶと、今回の減税による恩恵を最も多く受けることができる。国産車だと、ダイハツのトールやブーン、トヨタのヴィッツやパッソ、スズキのクロスビーやバレーノなど。輸入車だと、アウディ・Q2、フィアット・500 TwinAir、フォルクスワーゲン・up!などが排気量1000㏄以下の乗用車。一般的にコンパクトカーと呼ばれるクルマが減税対象となる。

 ちなみに軽自動車税の税率は1万800円のまま据え置きだ。

自動車取得税の廃止と環境性能割の導入

 今回の改正で「自動車取得税」が廃止され、新たに「環境性能割」が導入された。

環境性能割の税率一覧。※上表における電気自動車とは、電気自動車、燃料電池自動車、天然ガス自動車(※2)、プラグインハイブリッド自動車、クリーンディーゼル乗用車(※3)を含む。 出典:経済産業省WEBサイト

 自動車取得税は、自動車(新車・中古車問わず)の購入時に取得価額(※1)に対して課税される税金で10月に廃止。税率は登録車3%、軽自動車2%だった。

 新しく導入された環境性能割は、自動車(新車・中古車問わず)の購入時に取得価額に対して課税される税金。税率は燃費性能に応じて、登録車は0~3%、軽自動車は0~2%が課税される。つまりは、燃費のいい車ほど税率が軽減される仕組みである。さらに、来年9月30日までは環境性能割の税率が1%軽減される。

 具体的には、電気自動車、燃料電池自動車、天然ガス自動車(※2)、プラグインハイブリッド自動車、クリーンディーゼル乗用車(※3)は非課税。ガソリン車とLPG車(ハイブリッド車を含む)は、排ガス基準(※4)をクリアした自動車に対し、2020年度燃費基準の達成率によって0~3%が課税される。

 例えば、排ガス基準および2020年度燃費基準+10%を達成した登録車を購入したとすると、10月以前の課税率は2.25%。10月以降1年間だと課税率は0%になるので、改正後は2.25%の減税となる。

エコカー減税とグリーン化特例が延長!

 「エコカー減税」と「グリーン化特例」は、燃費や排ガス性能のいい自動車に対して税金の負担を時限的に軽減する特例措置。今回の改正でどちらも適用期間が延長された。その期間は以下の通り。

【エコカー減税】
 自動車重量税に対する減税:2019年5月1日~2021年4月30日まで適用

【グリーン化特例】
 自動車税・軽自動車税に対する減税:2019年4月1日~2021年3月31日まで適用(2021年4月1日からは新基準が適用)


自動車重量税に対するエコカー減税

 自動車重量税は、自動車の車両重量に応じて課税される税金。この税金は、エコカー減税によって負担減となる。減税対象となるのは、排ガス基準(※4)をクリアした自動車で、2020年度燃費基準の達成率に応じて減税率が定められている。

自動車重量税に対するエコカー減税率。※上表における電気自動車とは、電気自動車、燃料電池自動車、天然ガス自動車(※2)、プラグインハイブリッド自動車、クリーンディーゼル乗用車(※3)を含む。 出典:経済産業省WEBサイト

 例えば、2020年度燃費基準+40%以上を達成している自動車は初回車検時に自動車重量税が免税となる。2020年度燃費基準+90%以上を達成している自動車は2回目の車検も免税となる。


グリーン化特例

 グリーン化特例は、期間内に新車登録を行った自動車のうち、排ガス基準(※4)をクリアした自動車に適応される制度。燃費性能等に応じて次の年の自動車税や軽自動車税が軽減される。

自動車税・軽自動車税に対するグリーン化特例の減税率。※上表における電気自動車とは、電気自動車、燃料電池自動車、天然ガス自動車(※2)、プラグインハイブリッド自動車、クリーンディーゼル乗用車(※3)を含む。 出典:経済産業省WEBサイト

 例えば、2019年4月~2021年3月31日までに登録した新車で、2020年度燃費基準+30%以上を達成している自動車の場合、次の年の自動車税が75%軽減される。

 2021年4月1日~2023年3月31日までは、減税率の基準が変わり、電気自動車、燃料電池自動車、天然ガス自動車(※1)、プラグインハイブリッド自動車、クリーンディーゼル乗用車(※2)を新車登録した場合、次の年の自動車税が75%軽減される。

減税後の自動車税シミュレーション

1000㏄のコンパクトカーを購入し、8年間保有した場合の料金シミュレーション。出典:経済産業省WEBサイト

 1000ccの乗用車を135万5000円で購入し、8年間保有すると仮定して、改正前と改正後に購入した場合を比較してみよう。

≪ 税額試算に当たっての前提条件 ≫
・自動車取得税/環境性能割額の算出にあたり、カタログ価格に0.9を掛けた金額を取得価額(オプション等は含まない)とする。
・自動車取得税および自動車重量税の税額はエコカー減税適用後。エコカー減税適用終了後の自動車重量税額は本則税率が適用されるものと仮定。
・自動車税は、自動車税の恒久減税に加え、適用される場合のグリーン化特例による軽減額との合算。

 まず、新車購入時にかかる消費税を計算してみよう。

 ・改正前(消費税 8%):135万5000円 × 0.08 = 10万8400円
 ・改正後(消費税10%):135万5000円 × 0.10 = 13万5500円

 ・改正前後の差額:13万5500円 - 10万8400円 =① 2万7100円

 上計算のように、消費税額は10月以降に2万7100円上がった。


 改正前に購入した場合の自動車税は年間2万9500円。改正後購入した場合は、年間2万5000円である。その自動車を8年間保有するとして自動車税の合計を計算してみよう。

 ・改正前(引き下げ前):2万9500円 × 8年 = 23万6000円
 ・改正後(引き下げ後):2万5000円 × 8年 = 20万円

 ・改正前後の差額:23万6000円 - 20万円 =② 3万6000円

 上記のように8年間保有すると、自動車税の合計は3万6000円安くなった。


 次に、自動車取得税と環境性能割を比較してみよう。

 ・改正前(自動車取得税):(135万5000円×0.9)×2.4%=2万9200円
 ・改正後(環境機能割) :(135万5000円×0.9)×1%=1万2000円

  改正前後の差額:2万9200円-1万2000円=③1万7100円

 改正前後の課税額を比較すると、改正後の方が1万7100円安くなった。


 改正後に増えた消費税と減ったクルマの税金の差額は、 ①-(②+③)=-2万6000円 となる。

 つまり消費増税によって増えた負担(消費税2万7100円増)は、8年間自動車を保有する間の課税額で2万6000円お得になることが分かった。ちなみにこの自動車の場合、3年間保有することで消費増税によって増えた負担はチャラになる。


 このように改正後のクルマの税金は、消費増税による負担増でも数年先まで保有することを見据えると課税額が安くなることが分かった。それ自体は大歓迎なのだが、ただ減税の種類が多く仕組みも複雑で、ユーザーはすべてを理解するのに苦労しそうだ。新税なのに「環境性能割」という割引を思わせるような名称も、ユーザーの理解を難しくしている。以前から言われているが、自動車関係の税金については、もっとシンプルで分かりやすいものにしてほしい。

 今回の一連の改正では、新環境性能が優れているクルマの税率が優遇されているので、新しくクルマを乗り換える際は、デザインや性能はもちろんのこと、排ガス基準や燃費基準も考慮に入れて購入するといいだろう。もちろん燃費が良ければガソリン代も安くなるので、ランニングコストはさらに安くなる。また、これからはEVやプラグインHVも選択肢に入れて検討する時代になっていきそうだ。

※1:取得価額とは、カタログ価格に0.9を掛けた金額。
※2:平成21年排出ガス規制NOx10%以上低減または平成30年排出ガス規制適合
※3:平成21年排出ガス規制適合または平成30年排出ガス規制適合の乗用車
※4:平成17年排出ガス規制75%低減または平成30年排出ガス規制50%低減

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