大阪~名古屋の新ルート「名阪バイパス」計画とは? 事故多発の「名阪国道」に代わる新ルートは実現するのか【いま気になる道路計画】
奈良県と三重県を結ぶ「名阪国道」は、急勾配や急カーブが連続する全国屈指の事故多発道路だ。こうした問題点を解消するため、機能強化した新ルート「名阪バイパス」の道路構想がある。その内容と現状を見ていこう。
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奈良~三重の重要ルート「名阪国道」のバイパス計画
名阪国道の概要。
関西~中部を結ぶ主要幹線道路は、わずか数本に限られている。それは南北に連なる鈴鹿山脈が立ちはだかり、東西の移動ルートが限られているためだ。
そのなかで、奈良県と三重県を結ぶ唯一の高規格道路が「名阪国道」だ。国道25号のバイパスとして1965年に開通し、信号のない自動車専用道でありながら無料で供用されている。
大阪からは「西名阪自動車道」、名古屋からは「東名阪自動車道」が直通しており、あわせて約150kmの都市間ハイウェイを形成している。西名阪・東名阪ともにNEXCOグループが管理運営する有料道路で、名阪国道のみが異彩を放つ存在だ。
名阪国道は1日5万台の通行台数があり、その約4割が大型車だ。まさに物流の大動脈だが、交通事故や災害で頻繁に通行止めが発生するなど、決して強靭な道路とはいえない。
例えば、交通事故総合分析センターが2023年に発表した統計によると、名阪国道では1年に約30件の交通事故が発生、その約7割が追突事故となっている。制限速度はほとんどの区間で時速60kmに抑えられているが、他の高速道路と比べて急カーブが多いため、急な速度低下によって前方車両へ追突する事例も多いとされている。
特徴的なのが天理東IC~福住ICの間に存在する「Ω(オメガ)カーブ」とよばれる連続的な急カーブ・急勾配区間だ。曲線半径150mのヘアピンを含む大回りで、400mを超える標高差を一気に稼ぐ構造だが、その急勾配&急カーブに対応できずに分離帯へ接触する事故や、悪天候でのスリップ事故が引き起こされている。
こうした線形不良の名阪国道に代わる存在として構想されているのが「名阪バイパス」だ。
構想路線「名阪バイパス」の想定ルート。
「名阪バイパス」は、2021年に国が策定した「新広域道路交通計画」で未検討の「構想路線」としてリストアップされている、新たな高規格道路だ。基本的に名阪国道に並行する形で、「名阪国道のバイパス計画」とも「名阪国道の作り替え事業」とも読み取れそうなルートで構想されている。
どちらにせよ、課題となっているΩカーブをなくして線形改良し、設備を抜本的に強化することで、現在の名阪国道よりはるかに走りやすく安全な高速道路にするのが目的だろう。
さらに特筆すべきは「第二阪奈道路」から直通するという点だ。
第二阪奈道は、大阪の湾岸部である阪神高速の「4号湾岸線」から「16号大阪港線」「13号東大阪線」の延長上に直通し、生駒山地をトンネルで抜けて、奈良市中心街の手前の学園前地区(宝来IC)で終点となる道路。開通は1997年で、奈良県民にとって阪奈道路の峠越えをせずに大阪市街へ直行できるバイパスルートだ。
奈良市側は中心街に直行しない中途半端な形で終わっているが、ここが名阪バイパスへ延伸接続するというわけだ。
実現すれば東大阪~生駒~奈良~四日市という新たな名阪ルートが誕生する。現在の西名阪道は起点が大阪府松原市であり、奈良県の香芝市・天理市を経由する「南側大回り」ともいえるルートだ。よりまっすぐ東進できる「第二阪奈~名阪国道」の直結ルートは、名阪間の交通流を大きく変えることになるかもしれない。
実現に向けて現在の動きは?
名阪国道の様子。
気になる「名阪バイパス」の進捗だが、まだ構想路線の域を出ておらず、本格的な検討段階には至っていない。
話が動き出すには、地元沿線地域が強く希望し、国がその希望を汲み取ることが前提となる。現在はその準備段階で、奈良県は長年にわたり、国に次年度予算への組み込みを要望し続けている。
ここで興味深いのが、これまでずっと「名阪バイパスの具体化に向けた検討」とハッキリ記載していたのが、2025年に提出された要望書では「名阪国道の抜本的な対策に向けた検討」に変化している点だ。これは何を意味しているのだろうか。
奈良県の担当者は「バイパス構想の具体化を求める意志がトーンダウンしているわけではありません。引き続き要望してまいります」と話す。
“名阪バイパスの具体化”とだけ書くと、新道路建設が先行しているかのように受け止められかねない。あくまで解消したいのは「現在の名阪国道は線形が悪く、死傷事故が多発している」という課題だ。その課題意識を明確にするための文言変更であるというわけだ。
2022年の奈良県議会で荒井知事は、この新バイパス構想とリニア中央新幹線の奈良県駅(仮)整備を絡めた質疑で、以下のように答弁している。
「第二阪奈道路、その次にリニア中央新幹線奈良市附近駅のIC、3つ目に京奈和道・第二阪奈のJCT、さらに東に延ばして、名阪国道の針の向こうでオメガカーブを越えるオメガ越えという構想があり、陳情しております。東西の新しい国土軸を考えております」
まずは「名阪国道そのものの改良」が進行中
久我ICのオンランプ延伸の概要。いくつかのICで改良が進められている。
現在、名阪国道の課題解決には国が各地で動きをみせている。2024年には、2か所あった雨量規制区間のうち1か所が規制緩和。さらに、複数のIC構造で改良工事が続けられている。
具体的には、東側の「伊賀IC~関IC」で雨量規制の通行止め基準が連続雨量200mmから230mmへ緩和され、通行止めになりにくくなった。一方、西側の「天理東IC~五月橋IC」の通行止め基準は連続雨量160mmとなっており、まだ脆弱な道路状況だ。しかし、着実に防災対策が続けられ、2025年6月には山添村内で防災工事が完了。基準緩和へと近づいている。
ICの改良工事は、久我ICの合流車線延伸を皮切りに、板屋IC、伊賀一之宮IC、大内ICで行われている。
Ωカーブでは「多機能型排水性舗装」を導入して、路面の水膜によるスリップ事故への対策を実施。導入後8年で事故が最大44%減少している。
こうした改良工事をふまえて、そのうえで「第二の名阪国道」ともいえる「名阪バイパス」を新整備していこうという機運が、いつどのように高まっていくかはまだ不透明だ。
少なくとも奈良県内では、世紀のプロジェクト「京奈和自動車道」の残り2区間(奈良北道路・大和御所道路)の完成がまず最優先事項となる。「名阪バイパス」が検討の俎上に乗るタイミングは、京奈和道の全線開通が見通せてからになる可能性が高そうだ。「名阪バイパス」の今後に、引き続き注視していきたい。
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