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公開日:2025.12.17

立川~日野をつなぐ新ルート!「中央南北線」計画はどこまで進んだ? 多摩川に新たな架橋「富士見橋」の構想も【いま気になる道路計画】

多摩川を越える「立日橋」と多摩モノレール。

「中央南北線」は、立川市を南北につらぬき、さらに多摩川を越える新たな架橋も建設される都市計画道路だ。開通メリットや現況、工事の進捗を見ていこう。

多摩川を越える「立日橋」と多摩モノレール。

文=鳥羽しめじ

資料=東京都、立川市、日野市

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多摩地域の貴重な「南北幹線」そして「新たな多摩川架橋」

中央南北線の位置図。

中央南北線の位置図。

東京多摩地域の主要南北軸は「伏見通り・新武蔵境通り」「新府中街道」といった4車線道路はあるが、まだネットワーク網としては貧弱なのが実態だ。

特に、20万人近い人口を抱える立川市には幹線道路がなく、広大な「幹線道路空白地帯」となっている。JR中央線が街を東西に分断しており、北側と南側まっすぐ連絡する道路はほぼない。どこへ行くにも信号交差点を右左折する必要があるため、立川駅周辺をボトルネックとした交通混雑が顕著になっている。

さらに、多摩川を越えた南岸の日野市街地へのルートは、架け替え工事中の「日野橋」、多摩モノレールと一体の「立日橋」の2本しかない。西側に3kmほど進めば「多摩大橋」も利用可能だがかなり大回りになる。当然、交通流は橋に集中し、特に八王子市街地と直結する甲州街道の日野橋における渋滞は深刻だ。

都市計画道路「中央南北線」は、こうした立川駅周辺の交通混雑を解消すると期待されている。

「中央南北線」は、中央のオレンジ色「陸上自衛隊敷地」の右側を南北に抜ける道路。

「中央南北線」は、中央のオレンジ色「陸上自衛隊敷地」の右側を南北に抜ける道路。

「中央南北線」は、立川市砂川地区の玉川上水付近(将来は新五日市街道が整備予定)を起点に、陸上自衛隊立川駐屯地の東側をまっすぐ南下。JR青梅線をまたぐと、JR中央線の西側を並行して多摩川を渡り、日野駅前で甲州街道に接続するルートで計画されている。なお、多摩川には、新たに「富士見橋(仮称)」が建設される。

これが全線開通すれば立川~日野を結ぶ3本目の多摩川越えルートになるだけでなく、立川市街地北部から日野駅への最短距離ルートが誕生する。JR青梅線の踏切での待ち時間がなくなることで、緊急輸送の定時性確保にも期待がかかる。また、立川駐屯地は広域防災基地に指定されており、災害発生時に緊急車両や物資の輸送車両などのアクセスを確保するためにも貴重な道路となる。

現在の都市計画では、昭和記念公園までが幅60m、JR青梅線以南が幅40m、富士見橋が幅15.5m、日野市内が幅20mの幅員で計画されている。現状、富士見橋は2車線の計画になっているが、今後の都市計画変更で4車線になる可能性もある。

昭和記念公園付近までは開通済み。未開通部はどこ?

中央南北線の開通済み区間。手前の線路が青梅短絡線だ。(c)Google Earth

中央南北線の開通済み区間。手前の線路が青梅短絡線だ。(c)Google Earth

中央南北線はどこまで開通しているのだろうか?

中央南北線の「五日市街道~昭和記念公園」の2.5km区間は、立川飛行場跡地の再開発時に先行整備されて開通済み。さらにJR青梅線南側の250m区間が開通済みだ。現状では開通区間が少ないため、まだ「立川市役所へのアクセスが便利になった」程度にとどまっており、そのポテンシャルは発揮できていない。

しかし、未開通区間には大きな課題が残る。それは、JRの2本の線路を越える立体交差だ。まず、昭和記念公園の南側に「JR青梅線」があり、その約300m先に「青梅短絡線」という別の単線がある。主に中央線から青梅線へ乗り入れする電車が使用する「裏ルート」のような線路だ。そのため立体交差が2か所必要であり、調整の手間も単純に倍増することになる。

立川市とJRは2023年に調整会議を設立。事業化を目指して、立体交差の構造や工法、周辺道路との接続方法などについて協議を続けている。

中央南北線の進捗と今後

中央南北線は日野駅付近で甲州街道に接続する。

中央南北線は日野駅付近で甲州街道に接続する。

中央南北線の課題は、JRとの立体交差だけではない。立川市街地から多摩川までの間には、武蔵野台地が削られてできた「立川崖線」という急激な崖があり、目で見ても明らかなほど、北側に対して南側がストンと落ちたような地形になっている。その高低差は約15mもあるため、「橋梁案」「掘割案」「トンネル案」など、複数の構造案で検討されていくことになるだろう。都が指定する「立川崖線緑地保全地域」との調整も必要となりそうだ。

なおこの区間は、都の10か年計画「第四次事業化計画」において2025年度までに整備すべきとされた優先整備路線にリストアップされている。さらに2022年策定の「TOKYO強靭化プロジェクト」でもリーディング事業として明記されているため、後回しにされる可能性は低そうだ。

気づけば「第四次事業化計画」もあと数か月で終わりを迎える。中央南北線の計画は、駆け込みで何らかのアップデートが発表されるのだろうか。あるいは、残された宿題として、次の10か年計画「第五次事業化計画」に引き続きリストアップされるのだろうか。今後の動向にも注目していきたい。

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