岡山の渋滞区間に救世主! 約16kmの「総社・一宮バイパス」が整備中。まもなく一部開通で山陽道と接続【いま気になる道路計画】
岡山県の岡山市から総社(そうじゃ)市を結ぶ延長15.9kmの「総社・一宮バイパス」が整備中だ。渋滞が多発する区間の救世主となる、同バイパスのメリットや工事の進捗について解説しよう。
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岡山市と密接な関係にある「総社市」へのアクセスを強化
渋滞する国道180号の様子。
岡山県岡山市の西隣に位置する総社市は、岡山市と倉敷市という岡山の2大都市のベッドタウンとして約7万人の人口を抱えるほか、自動車部品や各種産業の工場エリアが点在している。
しかし、総社市は道路ネットワークの整備が遅れており、特に岡山市と連絡する幹線道路が乏しい。内陸部を抜ける「国道180号」は、旧態依然とした狭い2車線道路で信号も多く、集落を通過するたびに混雑で走行速度が落ち、ストレスの溜まる移動を余儀なくされている。
特に混雑するのがJR吉備線と並行する「一宮エリア」、県道と旧街道が交差する「板倉交差点」、信号が密集する「備中高松駅周辺」、そして中心街の「東総社駅周辺」だ。渋滞の影響で追突事故も多発し、さらに渋滞を避けるために、周囲の生活道路を抜け道として利用するクルマが安全を脅かしている。
また、広域的な移動においても、玄関口となる岡山自動車道「岡山総社IC」まで国道180号を延々と走る必要があり、アクセスが不便だ。これは工業地帯を抱える総社市にとって、全国流通への大きな課題となっている。
総社・一宮バイパスの位置図。
こうした背景を受け、国道180号からの交通分散を図るために「総社・一宮バイパス」が整備されている。総延長は15.9km、4車線で総社市中心部までのダイレクトアクセスを実現する壮大な計画だ。
総社・一宮バイパスのルートは、岡山市街地の外周ルートを担う「岡山西バイパス」から分岐する形で岡山市から北へ進み、大平山をトンネルで貫いて「岡山総社IC」に到達。そのまま西進して総社市街地の北側を横断し、高梁川(たかはしがわ)沿いの180号現道に接続するルートだ。
これが全線開通すれば、岡山市北区楢津~岡山総社ICの山岳区間の所要時間は31分→12分へと「19分短縮」、岡山総社IC~総社市街地の所要時間は17分→8分へと「9分短縮」すると試算されている。
延長約16km「総社・一宮バイパス」の全体像は
総社・一宮バイパスの概要。
気になる総社・一宮バイパスの進捗だが、まだ各地で部分開通しているのみで、ネットワーク機能は果たせていない。しかし、現在も工事が進展中で延伸開通が間近に迫っている工区もある。
「岡山市北区一宮~岡山市北区今岡」の約700m区間は、2026年2月に延伸して山陽道「吉備スマートIC」に直結を果たす予定だ。2007年のIC開設以来、ずっと裏道のようなアクセス道路しかなかったが、4車線でそのまま山陽道に入れるようになる。
東隣の岡山ICが中心街から離れているため、吉備スマートICとの直結は、山陽道の利便性を大きく向上させるだろう。
総社・一宮バイパスの計画と今後
工事が進む「今岡第1高架橋(仮称)」付近の様子。
総社・一宮バイパスは、吉備スマートICから先に6.7kmの山岳区間が待ち構えている。ここは詳細設計の段階で用地取得も必要なため、着工はまだまだ先となるだろう。そして長いトンネル工事であるため、着工しても不測の地質にあたれば、さらに工期延期の可能性もある。
いっぽう、岡山総社ICから西は、順調に整備が進んでいる。2007年までに「岡山総社IC~総社市総社」の3.4kmが開通。その後、2022年に「総社市総社~総社市小寺」の1.9kmが延伸開通した。残るは、山岳地帯をトンネルで抜け、JR伯備線をまたいで高梁川沿いへ出る「総社市小寺~総社市井尻野」1.7kmの1工区だけとなっている。
この最終工区は、詳細設計が固まってきているが、さまざまな課題も浮き彫りになっている。鉄道交差部の離隔確保、水路など支障物件との兼ね合い、精密な地質調査による軟弱地質の発見、国のトンネル工事ガイドラインの変更などによって、各所で設計見直しが必要となったのだ。2025年10月に公表された事業再評価の結果、主にこの工区で170億円の事業費増額となった。
なお、設計段階であり、最大の課題である用地取得が残っているため、開通予定は不透明のままだ。
このように、岡山市~総社市の「大動脈」となる「総社・一宮バイパス」だが、近く開通を迎えるのは「吉備スマートICの取り付け部」だけだ。残り工区はまず設計を固めて、それから用地取得、着工という段階にあり、次の大きなニュースはしばらく先になるだろう。壮大な道路計画の今後を引き続き注視していきたい。
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