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公開日:2025.12.19

東京~神奈川の新ルート! 多摩川に建設中の「等々力大橋」はいつ完成? 将来は「新横浜」に4車線で直結【いま気になる道路計画】

東京都と川崎市の境目に流れる「多摩川」に、新たな橋「等々力大橋(仮称)」が建設中だ。新横浜まで繋がる重要ルートの一部となる、同橋の計画詳細やメリット、工事の進捗状況などを見ていこう。

文=鳥羽しめじ

資料=東京都、川崎市

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「等々力大橋」は多摩川の「橋空白地帯」に建設中

等々力大橋の概要。

等々力大橋の概要。

東京都と神奈川県川崎市の間には「多摩川」があり、両岸からの自由な移動を阻んでいる。しかし、そこに架かる橋はきわめて少なく、各橋をボトルネックとした交通混雑が課題となっている。

主要な一般道路に着目すると、4車線以上の大きな橋は、産業道路「大師橋」、第一京浜「六郷橋」、第二京浜「多摩川大橋」、中原街道「丸子橋」、国道246号「二子橋」しかない。

特に丸子橋~二子橋の間隔は5kmにもおよび、途中に有料の第三京浜があるとはいえ、対岸に人口集積エリアを抱えながら隔絶されたような状態だ。そのため、どちらの橋も渋滞が激しく、両橋をつなぐ多摩川の堤防道路も渋滞ポイントとなっている。

その「橋空白地帯」のちょうど中間地点に、新たな橋「等々力大橋(仮称)」が建設中だ。

「等々力大橋」の構造と将来計画は

目黒通りの先に等々力大橋がつながる。

目黒通りの先に等々力大橋がつながる。

「等々力大橋(仮称)」は、全長386mの両側歩道付きの4車線道路で、東京・川崎側の両方で堤防道路と交差点で接続し、右折レーンが設置される計画だ。前述した二子橋から2.7km、丸子橋から2.3kmの位置にできる。

完成イメージを見ると「斜張橋(しゃちょうきょう)」のような存在感があるが、等々力大橋の構造は桁橋(けたばし)だ。

桁橋は、橋脚の両側に支持台を設置して、その上に桁を置いたシンプルな構造でできている。ただし、等々力大橋では、桁をスリムにしたり、橋脚本数が少なくて済むように、荷重の一部を小規模なケーブルによる補鋼が肩代わりするという、いわば「斜張橋要素のトッピング」がされているため、その見た目が斜張橋に似ている。近年の建設では、このような構造をバランス的に組み合わせた設計の採用事例は多い。

目黒通り、等々力大橋、宮内新横浜線が一体となって、東京~神奈川を貫く主要道路となる計画だ。

目黒通り、等々力大橋、宮内新横浜線が一体となって、東京~神奈川を貫く主要道路となる計画だ。

さらに、等々力大橋は東京側・神奈川側の両側にある都市計画道路をつなぐ、壮大なネットワークの「最終仕上げ」になる決定的な存在でもある。

東京側は「目黒通り」として、白金台から目黒駅、都立大学駅から等々力に到達して多摩川堤防で途切れている。中央分離帯が完備された4車線道路で、都市計画道路名は「放射第3号線」だ。

神奈川側は「宮内新横浜線」として、多摩川堤防から武蔵新城へと南下し、高田・新羽を経由した後、新横浜駅のロータリーまで結ぶ。4車線の都市計画道路だ。新幹線駅へのダイレクトアクセスを担う主要南北軸となる。

「目黒通り」「等々力大橋」「宮内新横浜線」が全線開通すれば、都心~新横浜が4車線道路でまるごと繋がるというわけだ。

工事はどこまで進んでいるのか

建設中の橋脚の様子。

建設中の橋脚の様子。

等々力大橋の建設はどこまで進んでいるのだろうか。

2017年に着工を迎え、2025年で整備は8年目となった。その間、毎冬の非出水期のタイミングを狙うように、川崎側の橋台をはじめとした、計3基の橋脚が建造されてきた。残るは東京側の橋台1基で、それができれば橋桁の架設がはじまる。しかし、その東京側の橋台が整備事業の悩みのタネになっている。

東京側の橋台を設置する堤防上には「多摩堤通り」が走っているため、工事に伴い一旦、陸側に道路を仮迂回させる必要がある。しかし、その迂回部分の用地確保が難航しているという。2023年時点の用地取得率は約50%とまだ半分。2026年度内に迂回路を完成させる目標が掲げられているが、現場では特段の動きは見られない。

この用地取得の難航や橋脚工事での工法変更などを受けて、開通予定は2025年度から「2030年度」へ延期された。しかし、この予定もあくまで用地取得が順調に完了することが前提だ。

川崎側はどうだろうか。多摩川を越えて府中街道の「西下橋交差点」までの720m(宮内工区)が未開通で、用地取得は2025年3月時点で約60%。現場ではモザイク状に更地が確認できるが、まだまだ「ここに道路ができるんだな」と実感できるレベルではない。

川崎市は、まず「堤防道路(多摩沿線道路)にT字路で接続する形で先行開通する」としていた。橋台自体は既に完成しており、T字交差点を受けるコンクリート構造物も陸側に鎮座している。

しかし、横浜方面へ通り抜けできなければポテンシャルは発揮できないため、等々力大橋の完成予定が5年延期になった後は「等々力大橋と一体的な供用の開始を目指して事業を推進してまいります」と方針を明確にしている。

ちなみに宮内新横浜線の全体を見ると、尻手黒川街道(しってくろかわどうろ)と交差する子母口(しぼくち)地区までが開通済み。そこから高田駅の約2kmが未開通となっている。川崎市が2029年度まで掲げる道路整備プログラムではリストアップされておらず、まずは等々力大橋と宮内工区に集中したいという意思が伺える。

このように、東京~神奈川の夢の主要ルートとなることが期待される「目黒通り+等々力大橋+宮内新横浜線」は、まず「東京側の橋台工事に伴う迂回路の用地取得」が最重要課題だ。用地取得がいつ終了するのかは不透明だが、引き続き状況を注視していきたい。

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