鳥取~島根をぐるり!「中海・宍道湖8の字ルート」計画が進行中。境港も出雲大社も便利に。複数箇所で事業中【いま気になる道路計画】
鳥取県と島根県をつなぐ新たな高規格ルートを確保するため「中海・宍道湖8の字ルート」のプロジェクトが進行中だ。開通済みの区間や工事中の区間もある。この道路について、開通のメリットや進捗状況を見ていこう。
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山陰道から遠い北側エリアに「中海・宍道湖8の字ルート」が計画中
「中海・宍道湖8の字ルート」の概要。
「山陰自動車道」は、鳥取県・島根県・山口県の日本海側をつなぐ延長約380kmの壮大な高速ネットワークだ。整備事業は着々と進められており、鳥取と島根の区間は、ほぼ全線開通というところまできている。
山陰道は、ずっと日本海沿岸部を走っているイメージがあるが、実は鳥取と島根の県境エリアは様子がまったく異なる。
地図を見れば一目瞭然だが、米子~松江~出雲では陸地が北側へ大きく広がっており、「中海(なかうみ)」「宍道湖(しんじこ)」を中心に、鳥取県境港市や島根県松江市、旧平田市、出雲市など、複数の市街地を抱えている。しかし、これらは山陰道、国道9号、JR山陰本線などから遠く離れており、アクセス性が極めて低いことが課題となっている。
なお、境港には年間120万人、出雲大社には年間700万人の観光客が訪れており、ますます同エリアの周遊性が重要になってきている。
「中海・宍道湖8の字ルート」の概要。
そんな「取り残されてきたエリア」を道路網に組み込むべく、近年立ち上がったプロジェクトが「中海・宍道湖8の字ルート」構想である。これは、同エリアで計画されている複数の高規格道路の事業を具体化へ推進しようという試みだ。
2025年10月には「整備促進総決起大会」が開催され、国土交通大臣、島根・鳥取県知事、国会議員をはじめ、約120人の関係者が参加。整備促進に向けて本格的なスタートを切った。まさに今、熱くなっているプロジェクトといえるだろう。
壮大な「境港出雲道路」も検討進行中
境港出雲道路の概要。
「中海・宍道湖8の字ルート」を構成する高規格道路の計画ごとに進捗状況を見ていこう。
・松江だんだん道路(2013年に開通済み)
松江市の南北移動をスムーズにする延長5.2kmのバイパス。山陰道「松江JCT」から北へ分岐し、橋梁とトンネルで市街地北部にある「川津IC」につながるルートとなっている。
松江市は宍道湖と中海に挟まれた狭い平野部にあり、南北移動の際に市街地の混雑を避けることが難しく、さらに2つの湖の間に流れる「大橋川」が街を分断し、橋が強烈なボトルネックとなって渋滞が発生していた。
松江だんだん道路の開通により、山陰道から北部エリアへは信号ゼロで移動可能となった。「8の字ルート」では、重要な「真ん中の交差部分」を担っている。
・境港出雲道路(検討中)
中海・宍道湖北側エリアの東西軸として、島根県東部の美保関町から松江市北部を経て、出雲大社付近から山陰道「出雲IC」方面へつなぐ約70kmの高規格道路だ。生活道路レベルだが、広域交通と混在している「国道431号」のバイパスとして検討されている。立体交差中心の設計で信号待ちの時間ロスをなくす、中長距離アクセス道路になる計画だ。
島根県が事業主体で、これまで「川津バイパス」(2008年に4車線完成)、「東林木(ひがしはやしぎ)バイパス」(2013年に全線開通)など局所的な改築が行われてきたが、「8の字ルート」構想の元ではさらに包括的な整備検討が進められる予定だ。
2025年9月には「境港~出雲間における道路交通課題に関する意識調査」という地域アンケートが実施された。国直轄事業における事業化への最初のプロセス「計画段階評価」に相当する調査で、最終的には概略ルートや構造が決定されていくこととなる。
まだある「8の字ルート」プロジェクトの計画
米子境港道路の3つの概略ルート案。
・松江北道路(事業中)
境港出雲道路のうち、松江市内で事業中の延長10.5kmの区間。松江イングリッシュガーデン付近の国道431号現道から分岐し、松江市街の北側を迂回して、東側の松江だんだん道路 川津ICに直結するルートで計画されている。開通すれば、山陰道 松江JCT~宍道湖北側エリアの所要時間は13分も短縮すると試算されている。
2021年に都市計画決定され事業化。5年が経過した現在は、調査設計と用地取得などの段階で、工事本格化はまだ先になりそうだ。
・米子自動車道 米子~境港(検討中)
米子道は、落合JCTから北上すると山陰道 米子JCTに接続した地点で終了している。これをさらに北へ延伸し、境港まで到達させる計画だ。
境港は、港湾施設や臨海工業地域が広がる工業や物流の拠点であるだけでなく、米子鬼太郎空港を擁する観光都市としての存在感も高まっている。しかし、主要アクセスルートである国道431号は、生活交通と物流が混在して渋滞や交通事故などが発生している。ここに高規格バイパスを整備することにより、中長距離の交通流をスムーズにする狙いがある。
2025年4月、国の直轄事業として「計画段階評価」がスタート。6月には早くも3つの概略ルート案が提示され、地域アンケートが9月末まで実施された。ルート案の最終決定も近づいており、そのあとは都市計画決定と環境アセスメント、そして正式な事業化が迫っている。
・山陰道4車線化(一部事業化)
国が優先的に4車線化を進める高規格道路として「優先整備区間」にリストアップされた。山陰道の一部暫定2車線区間で4車線化が進められている。「米子西IC~東出雲IC」19.6km区間では、2021年に「米子西IC~安来IC」6.6km区間が事業化された。「松江玉造IC~宍道JCT」14km区間では、2024年に宍道スマートICから東へ3kmの区間が事業化された。
このように、国レベルで機運が高まっている「中海・宍道湖8の字ルート」プロジェクト。事業化区間も検討中区間もあるが、境港出雲道路や米子道 米子~境港では、ルート案を固める段階まで進んでいる。まずは数年以内の事業化に期待がかかる。複数の計画が同時進行するプロジェクトだけに、今後も目が離せない。
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