はじめよう、クルマのある暮らし。

Traffic

公開日:2025.11.05

なぜ高速道路で黄色いパトロールカーが走っているのか? 特殊車両のひみつ。【川辺謙一の「道路の科学」Vol.12】

なぜ高速道路で黄色いパトロールカーが走っているのか? 特殊車両のひみつ。
【川辺謙一の「道路の科学」Vol.12】

交通技術ライター川辺謙一が語る「道路の科学」。第12回は、高速道路の特殊車両に迫る。

なぜ高速道路で黄色いパトロールカーが走っているのか? 特殊車両のひみつ。
【川辺謙一の「道路の科学」Vol.12】

文=川辺謙一

この記事をシェア

黄色のパトロールカーの役割

みなさんは、高速道路でドライブしている最中に、黄色(別の色の例もあり)のパトロールカーを見たことはありませんか? これは、高速道路を運営・管理する会社が保有している特殊車両で、おもに2つの役割を担っています。1つは、高速道路を巡回して、車両の流れや道路の状態を監視すること。もう1つは、緊急事態発生時に現場に出動して、対応することです。

たとえば、国内の高速道路会社の一つである首都高速道路(以下、首都高)では、パトロールカーとしておもに出力が大きい四輪駆動車を使っています。出力が大きいのは、他の車両をけん引できるようにするためです。車内には、発煙筒やパイロン(円錐形の標識)など、多くの道具が搭載されており、事故やトラブルに対応できるようになっています。

首都高のパトロールカーの内部。事故やトラブルに対応するための道具が搭載されている。下に、他の車両をけん引するためのロープが見える。「首都高点検・補修デモ2025」で筆者撮影

首都高のパトロールカーの内部。事故やトラブルに対応するための道具が搭載されている。下に、他の車両をけん引するためのロープが見える。「首都高点検・補修デモ2025」で筆者撮影

高速道路の維持・管理を支える特殊車両たち

首都高で使用される特殊車両には、パトロールカーの他にも多数あります。今回はその一部として、標識車や高所作業車、ETC電波測定車を紹介します。

後ろから見た標識車。大きなLED画面でドライバーに情報を伝える。LED画面の下にある円筒形のドラムは、夜間に光る。「首都高点検・補修デモ2025」で筆者撮影

後ろから見た標識車。大きなLED画面でドライバーに情報を伝える。LED画面の下にある円筒形のドラムは、夜間に光る。「首都高点検・補修デモ2025」で筆者撮影

標識車は、ドライバーに情報を伝える車両で、車体後部に大きなLED画面を搭載しています。LED画面は、「この先で工事を行っている」などの情報をおもに文字で表示します。首都高で使用される標識車では、ドライバーの視認性を高める工夫として、LED画面の下に、光る円筒形ドラムを設置しています。

高所作業車によるデモンストレーション。作業員が乗るカゴの高さは、それを支えるアームの伸縮で制御できる。「首都高点検・補修デモ2025」で筆者撮影

高所作業車によるデモンストレーション。作業員が乗るカゴの高さは、それを支えるアームの伸縮で制御できる。「首都高点検・補修デモ2025」で筆者撮影

高所作業車は、高所(高い場所)で作業するための車両です。高架橋やトンネルを点検・補修するのに使われています。

これは、作業員が乗るカゴの高さを、車上のアームを伸縮させて変える構造になっています。もちろん、高所での作業は危険がともなうので、作業員の安全性を高める工夫がされています。

なお、首都高では、高所の点検のためにドローンも活用しています。本年2月14日には、災害時等に迅速な点検手法を確立するため、巨大な吊り橋であるレインボーブリッジで点検の実証実験を行いました。

料金所のETC装置を点検するETC電波測定車。電波の強さの分布を3Dデータとして収集し、可視化できるので、点検作業を効率化できる。「首都高点検・補修デモ2025」で筆者撮影

料金所のETC装置を点検するETC電波測定車。電波の強さの分布を3Dデータとして収集し、可視化できるので、点検作業を効率化できる。「首都高点検・補修デモ2025」で筆者撮影

ETC電波測定車は、料金収受に使うETC装置の電波を、走りながら測定できる車両です。電波の強さ(電界強度)の分布を、周辺の建物をふくめた道路の3D(三次元)データとして収集し、可視化できるので、電波障害の発生箇所を発見しやすい構造になっています。

特殊車両による作業効率化

以上紹介した特殊車両は、首都高で使われている特殊車両の一部です。首都高をふくむ高速道路では、この他にも多様な特殊車両を保有しており、道路の維持・管理に活用しています。

このうち、ETC電波測定車は、点検作業を効率化した車両の一つです。従来作業員が手動で行っていた点検作業を、車両が走行するだけでできるのが特長です。

ただし、高速道路の維持・管理に必要な作業は、すべて特殊車両でできるわけではありません。たとえば道路を健全に保つための点検・補修では、作業員に頼らなくてはならない作業がたくさんあります。

鋼構造物の亀裂が広がるのを防ぐために穴を開け、ボルトで補強する作業のデモンストレーション。高速道路の点検・補修には、作業員の手に頼らざるをえない作業が多数ある。「首都高点検・補修デモ2025」で筆者撮影

鋼構造物の亀裂が広がるのを防ぐために穴を開け、ボルトで補強する作業のデモンストレーション。高速道路の点検・補修には、作業員の手に頼らざるをえない作業が多数ある。「首都高点検・補修デモ2025」で筆者撮影

記事の画像ギャラリーを見る

この記事をシェア

  

Campaign

応募はこちら!(11月30日まで)
応募はこちら!(11月30日まで)