はじめよう、クルマのある暮らし。

Cars

公開日:2025.11.05

なぜダイハツはフルハイブリッドを開発? 次期「タント」は軽自動車業界の勢力図をガラリと変えるか【国沢光宏のジャパンモビリティショー2025はコレを見ろ!】

ダイハツ Kビジョン|Daihatsu K-VISION

ダイハツが「ジャパンモビリティショー2025(JMS2025)」で発表した“新しいハイブリッドシステム”に注目が集まっている。それが今回初お披露目となった軽自動車用のフルハイブリッドだ。しかも次期型タントと思わしき「Kビジョン」も展示されているではないか。ダイハツの狙いは何か? 自動車評論家の国沢光宏氏が、その真価を独自の視点で読み解く!

ダイハツ Kビジョン|Daihatsu K-VISION

文=国沢光宏

この記事をシェア

なぜ軽自動車にはフルハイブリッド車が存在しないのか

東京モーターショー改めJMS2025では新型車や新技術など多数出展された。そんな中で、最も身近な技術が、ダイハツのブースに展示されていた軽自動車用のフルハイブリッドシステムである。

ご存知の通り東京都は2030年以降、純エンジン車を新車登録できなくなる。フルハイブリッド車か電気自動車と言うことになるワケ。けれど現時点で軽自動車のフルハイブリッド車は存在しない。

なぜか? 理由は簡単だ。軽自動車って基本的に燃費良い。普通車なら30万円以上高価になる「ハイブリッド代」を燃費向上分でカバー出来るものの、軽自動車だとせいぜい20万円くらい。ダイハツはロッキー(トヨタだとライズ)というコンパクトSUVにフルハイブリッドをラインナップしているが、普通エンジンより30万円高い。この価格差だと軽自動車じゃ通用しない。

ちなみにロッキーのハイブリッドシステムは日産eパワーと基本的に同じ。エンジンで発電機を稼働し、作った電力を使いモーター駆動する。電気自動車に発電機を搭載したと思えばいい。もちろんロッキーと同じシステムを軽自動車用として使うことだって可能。ただそれだと前述の通り30万円になってしまう。

そこでダイハツは「もっとコストダウンしなければ!」と考えた。

ダイハツ ロッキー プレミアムG HEV|Daihatsu Rocky Premium G HEV 写真=ダイハツ

ダイハツ ロッキー プレミアムG HEV|Daihatsu Rocky Premium G HEV 写真=ダイハツ

聞けばロッキーのシステム、モーターやインバータなど基本構成部品をトヨタのハイブリッド(例えばヤリス)と共用してるという。軽自動車として考えると少しばかりオーバーキャパシティ。もっと小さくて良い。

そこでダイハツはロッキーと同じハイブリッドシステムを、独自開発で驚くほどシンプル&コンパクトにした。それをモーターショーに展示したのである。

ダイハツの新ハイブリッド、かなり優秀?

初代プリウスからハイブリッドを見てきた私からすれば、びっくり仰天の小ささ。

写真のシステムの中にエンジンを始め、発電用モーター、走行用モーター、電流をコントロールするインバーターまで組み込まれている。現在ダイハツ車に使われているエンジン+変速機のスペースにそのまんま入ってしまう。このユニットに走行用の電池を組み合わせればフルハイブリッド車のできあがりだ。

ダイハツが軽自動車用に新開発したストロングハイブリッドシステム「e-SMART HYBRID」

ダイハツが軽自動車用に新開発したストロングハイブリッドシステム「e-SMART HYBRID」

システムをシンプルにすれば当然ながらコストだって安く出来る。金額ベースについては現時点で情報開示されていないものの、当然ながら20万円を下回ってくると思う。

リッター15km走る軽自動車だと走行1万kmあたりのガソリン代は10万5000円前後。ハイブリッドで25km/L走るようになれば6万4000円前後だ。5万km走ると20万浮き「ハイブリッド代」が捻出出来る。

5年くらいで乗り換えるとすれば、下取り価格だって10万円以上ハイブリッド優位。20万円高だったらハイブリッドを買った方が圧倒的にお得になるということ。もちろん地球環境的に考えると二酸化炭素の排出量を大幅に削減出来るから嬉しい。ユーザーにとっても地球環境にとってもウィンウィンの関係になる。

環境問題にボランティア精神を要求してもダメ。やはりコストだ。

ダイハツの新ハイブリッド、さらなる発展性もある。搭載されている駆動用モーターは64馬力くらいあると考えていい。となればエンジンと発電用モーターを取り去り、床下に大容量電池を搭載することで電気自動車にもなるのだった。低コストかつ安全なLFP(リン酸鉄リチウム電池。燃えない)を組み合わせることで中国のBYDと勝負できるリーズナブルな電気自動車も作れる。

新ハイブリッド搭載「Kビジョン」、その正体は?

ダイハツが初公開した軽ワゴンのコンセプトカー「K-VISION(Kビジョン)」

ダイハツが初公開した軽ワゴンのコンセプトカー「K-VISION(Kビジョン)」

さて、新しいハイブリッドシステムはいつ頃、どんなクルマに搭載されるだろうか? 興味深いことにハイブリッドシステムと一緒に展示されていたのは次期型タントと思える「Kビジョン」なるスライドドア式のコンセプトカー。

タントのフルモデルチェンジは来年と予想されている。高い確率で搭載されてくるんじゃなかろうか。間違いなくヒット車になると思う。

というのも現在64馬力のターボ車は20万円高くらいの設定。ハイブリッドはシステム出力でターボ車と同じくらいになると思う。それでいて燃費は圧倒的に良い。自然災害時に圧倒的な威力を発揮する100V/1500Wの外部給電装置も付けられるから嬉しい。さらに電気自動車バージョンだって安く作れる。

2年後の軽自動車業界は勢力図がガラリと変わりそうだ。

ダイハツ Kビジョン|Daihatsu K-VISION

ダイハツ Kビジョン|Daihatsu K-VISION

記事の画像ギャラリーを見る

この記事をシェア

  

Campaign

応募はこちら!(11月30日まで)
応募はこちら!(11月30日まで)