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公開日:2025.12.08

広島~米子に最短ルート誕生!「江府三次道路」が整備中。長大トンネルの「貫通ラッシュ」でどう便利になる?【いま気になる道路計画】

鍵掛峠道路の新屋地区改良工事の様子。

広島県と鳥取県を結ぶ新たな物流ルートを確保するため「江府三次(こうふみよし)道路」の整備が進められている。一部では開通済みの区間や工事中の区間もある。同道路の開通メリットや進捗状況を紹介しよう。

鍵掛峠道路の新屋地区改良工事の様子。

文=鳥羽しめじ

資料=国土交通省、広島県、鳥取県

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重要物流道路の「江府三次道路」とは

「江府三次道路」の概要。

「江府三次道路」の概要。

広島県と鳥取県を結ぶ延長約90kmの高規格道路「江府三次道路」の計画が進められている。

「江府三次道路」は、基本的に国道183号を高規格化(バイパスもしくは拡幅)するもの。中国自動車道の三次市・庄原市付近から分岐し、北東へ進み、米子自動車道 江府IC付近へ到達するルートで計画されている。これが完成すれば広島市~米子市がほぼ最短距離で結ばれることになる。

現在、中国道~米子道を移動する場合、岡山県真庭市旧落合町の「落合JCT」で乗り換える必要がある。関西方面からは、北西へ真っ直ぐ進めばいいが、広島方面からは三角形の2辺を大回りするようなルートを通るのだ。

また、高速を降りて、国道183号を経由すれば、広島市~米子市間を約70kmショートカットできるが、国道183号は峠越えも複数あり、全般が2車線の狭い山道となっている。

 

国道183号現道は、狭隘な2車線道路。

国道183号現道は、狭隘な2車線道路。

「江府三次道路」は、2022年に国が指定する「重要物流道路」に新たにリストアップされた路線だ。重要物流道路の目的は、高さ4.1m、長さ16.5m、重量最大44tの「国際海上コンテナ車」が自由に通行可能となる道路規格を確保するものだ。

つまり、国道183号は重要物流道路として、大型トラックやセミトレーラーによる運送にも耐えうるようにアップデートされることを意味する。

同時に地域高規格道路として、「高速道路から遠い奥地」であるという現況を改善し、地域の循環型ネットワークを形成するという目的もある。大雨や土砂崩れなどの災害による通行止めや、急勾配・急カーブで多発する交通事故による通行止めで、地域が孤立状態になるリスクを解消することができるのだ。

難所ではトンネルが貫通!

貫通したばかりの鍵掛峠トンネル。

貫通したばかりの鍵掛峠トンネル。

中国道、米子道に次ぐ「第三の広域ネットワーク」となる江府三次道路は、どこまで完成しているのだろうか。

現在、難所をバイパスするトンネルも貫通するなど、各地で順調に整備が進んでいる。順番に見ていこう。

・高(たか)道路:2008年開通
中国道 庄原ICの北東側にある、JR芸備線を越える3km区間が先行開通。トンネル・高架・切土という整備方法で周辺集落をバイパスする区間だ。

・鍵掛峠(かっかけとうげ)道路:2025年10月 鍵掛峠トンネル貫通
広島県と鳥取県の県境にまたがる「鍵掛峠」は、国道183号の難所だ。最大勾配は広島県側で12.5%、鳥取県側で10.4%とかなり厳しく、急カーブも多数ある。冬になればスリップや立ち往生が頻発し、夏は土砂崩れで106時間もの通行止めが発生した。

ここを新ルートで抜けるバイパス「鍵掛峠道路」約12kmは、2005年に着工して現在も工事中だ。国道314号のJR芸備線「道後山駅」付近から分岐し、北進して鳥取県に入るルートで計画されている。

この区間のハイライトとなるのが、長さ3475mにもおよぶ「鍵掛峠トンネル(仮称)」だ。中国地方では、高速道路を除いて最長のトンネルとなる。標高755mの鍵掛峠に対し、トンネルは標高710mから550mへ真っ直ぐ下っていく設計となっており、勾配負担がかなり緩和される。広島県と鳥取県でちょうど半分ずつを受け持ち、整備が進められている。

2022年に着工して採掘工事が進められてきたが、2024年4月に破砕帯にあたり激しい湧水が発生。濁水処理施設増設や水抜きボーリングの実施などの対策が必要になって工期を延長。2025年10月29日についにトンネルが貫通した。いよいよトンネル工事は、仕上げの段階に入っている。

・生山(しょうやま)道路:2005年開通
JR伯備線「生山駅」付近をトンネルと高架で通過する延長約3kmのバイパス。江府三次道路としては最初の開通区間である。

・江府道路:2025年7月 久連トンネル貫通
JR伯備線「武庫(むこ)駅」の南側から長さ2605mの「久連トンネル」で山を通過し、米子道 江府IC南側に直結する延長約4.1kmの区間だ。

「久連トンネル」は、2022年に着工し、鍵掛峠トンネルに先行すること3か月、2025年7月30日に貫通を迎えた。

将来はどうなる?気になる最近の動きは?

「江府三次道路」の概要。

「江府三次道路」の概要。

前述したのは、「江府三次道路」の中で既に事業化されている区間だが、それ以外の区間の進捗はどうなっているのだろうか。

高道路の前後にある、庄原市内の3工区の24km区間。江府道路の延長にある9km区間などが事業化候補となる「検討区間」として残されている。

庄原側は、事業主体である広島県の「道路計画2021」にリストアップされておらず、地元の庄原市から「着手区間38kmの早期事業着手についてお願いする」という要望書が上がっている。2026年からの新計画でどう扱われるかに注目が集まる。

いっぽう、鳥取県が事業主体となる江府側は、バイパス整備でなく「現道活用」となりそうだ。鳥取県知事は議会答弁で、地元自治体の総意として「単なる自動車専用道路を造るという一辺倒の話ではなくて、現道改良だとか、そういうことも含めて調査をしてもらいたい」という要望を受けている。

久連トンネルの先にある根雨地区では「さらに規格のいい道路というのは考え得る」とバイパス建設も候補に入れたうえで、そのほかの区間は現道改良等や個別の災害対策で事足りると考えているようだ。

もちろん道路整備は県の単独予算ではなく、国から一定割合の補助を受ける。国としては「重要物流道路」という最終目標を見据えているため、現道活用ではその役割に足りない。鳥取県や地元自治体の要望とは裏腹に、国からの要望によって、バイパス整備になる可能性も残されている。

このように「江府三次道路」は、事業化されて順調に整備が進む区間と事業化を待つ区間が入り乱れている。未事業化区間がどのような形で事業化していくのか、今後の動向にも注目していきたい。

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