大渋滞する滋賀の「国道8号」に! 悲願の「彦根東近江バイパス」計画が進行中。早ければ「2026年事業化」もある?【いま気になる道路計画】
滋賀県彦根市を中心に、湖東エリアで慢性的な渋滞に悩まされる「国道8号」。ここに「彦根~東近江」を結ぶ新バイパスのプロジェクトが進行中だ。計画の概要とメリット、現在の進捗状況などを見ていこう。
この記事をシェア
「彦根東近江バイパス」は延長約23kmの壮大な道路!
国道8号の彦根~東近江バイパスの概要。
滋賀県内で慢性的な渋滞が続く、国道8号の“難所区間”にいよいよメスが入る。長年の課題解消をめざし、「彦根~東近江」の区間で大規模なプロジェクトが動き出そうとしているのだ。
その名も「国道8号 彦根東近江バイパス」は、滋賀県彦根市内から甲良町・愛荘町・豊郷町・東近江市(旧五箇荘町)を経て、近江八幡市に至る道路。総延長は約23km、4車線道路で計画されており、国道8号の東側を丸ごとバイパスするものだ。
国道8号の彦根~東近江バイパスの概要(右が北)。
彦根東近江バイパスより北側では、2025年9月に「米原バイパス」が全線開通済み。これは国道21号が分岐する「西円寺交差点」などの渋滞ポイントをショートカットする湖側ルートで、佐和山を「彦根トンネル」で貫き、佐和山町にて国道8号に合流している。
彦根東近江バイパスは、この米原バイパスをそのまま南東方向へ延伸する道路。彦根の市街地を避けて名神高速の東側にある山岳地帯を抜け、多賀スマートIC付近を経由。そこからは東海道新幹線の東側1~2kmほどを並行するように南下し、愛知川を渡ると進路を南西へ変え、旧安土町の手前で国道8号に合流するルートで計画されている。
ちなみに検討段階では、他のルート候補として、佐和山・彦根ICより西側(国道8号側)を抜ける案、あるいは国道8号をそのまま現道拡幅する案があったが、便益の大きさ、環境への影響、用地取得の難易度などを総合的に勘案し、最終的に現在の「山側ルート」が採用された経緯がある。
国道8号の「渋滞ポイント」を丸ごとスルー
彦根市の国道8号 外町交差点付近。
国道8号の彦根市~東近江市といえば、旧態依然とした2車線道路で交通容量に課題があるほか、交通情報でもおなじみの悪名高い渋滞スポットが点在する。それらの渋滞スポットでは以下のような対策が行われている。
・外町交差点(彦根市)
国道306号および「中濠(なかぼり)東西通り」が接続する交差点。彦根城周辺に広がる彦根市中心街の交通のほとんどがここに流入し、さらに名神高速「彦根IC」のアクセス交通が集中することで、慢性的に混雑している。南側にも西沼波町・地蔵町・高宮町という信号交差点が連続し、通過には長時間を要する。
ここでは、交通分散のために、北側の「城北通り」を古沢町交差点から山側へ伸ばして彦根ICへ直結する「彦根お城トンネル」が2024年12月に開通したばかり。しかし、国道8号では外町交差点周辺の交通流こそ分散したものの、古沢町交差点から佐和山トンネルにかけては依然として渋滞が激しい。
・御幸橋(愛荘町・東近江市)
愛知川を越える橋が極端に少ないこともあり、湖東エリアの中でも有数の深刻なボトルネックとなっている。
緊急対策として南岸側の簗瀬(やなせ)・簗瀬北交差点で車線増設工事が行われているほか、約2km下流側の県道206号(神郷彦根線)で新たな橋の建設が終盤に差しかかっている。
このように対策は進められているとはいえ、やはり地元自治体は「生活交通と中長距離交通を切り分ける」抜本的な対策として、新ルートとなるバイパスへの期待を高めている。
事業スタートも間近。現在の状況は?
栗東水口道路Iと大津能登川長浜線の様子。
現在、事業はどの段階まで進んでいるのだろうか。
彦根東近江バイパスの検討が本格化したのは2015年。「計画段階評価」を始める方針が発表され、2018年に近畿地方小委員会で最初の会議が開かれて、第一歩を踏み出した。
一般的には、計画段階評価において2~3回の地域アンケートなどを経て、概略ルートが決定。それを基に都市計画決定と環境アセスメントが進められ、それらが完了すれば事業化を待つだけとなる。
彦根東近江バイパスは、2017年3月に1回目の地域アンケート、2018年9月に2回目の地域アンケートを実施。2019年、ついに概略ルート方針案が決定した。そして、この概略ルートが2022年に地元自治体へ引き継がれ、都市計画決定と環境アセスメントが開始。2025年現在、この2つの手続きが進行中となっている。
しかし、環境アセスメントの完了は目前に迫っている。具体的には、「方法書」「準備書」「評価書」というプロセスがあるうち、最後の「評価書」の取りまとめが進められているのだ。この評価書が環境大臣へ意見照会され、2025年1月にその返答意見が送られた。あとは、報告書として総仕上げをするだけだ。
そして2025年11月7日に都市計画審議会が開催される予定。無事に都市計画決定となれば、最速で2026年度に事業化される可能性も十分あり得る。
というのも、県内では先述した「米原バイパス」、さらに「山手幹線」と「栗東水口道路I」が開通。「湖西道路4車線化」や「小松拡幅」も完成。また「野洲栗東バイパス」もすでに工事がピークを迎えている。つまり「次の事業」をスタートするのにちょうどいいタイミングなのだ。いわば「今が一番ホットな状況」である。
果たして彦根東近江バイパスは、無事に都市計画決定されるのか、今後の動きにも注目していきたい。
記事の画像ギャラリーを見る



