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公開日:2025.10.15

近畿エリアの高速網に大変化? 新たな南北ルート「名神名阪連絡道路」計画が進行中。滋賀~三重のミッシングリンクを直結【いま気になる道路計画】

新名神高速道路と名神・名阪国道が縦でつながる!「名神名阪連絡道路」とは

滋賀県と三重県を南北に直結する「名神名阪連絡道路」の計画具体化に向けて検討が進行中だ。開通によるメリットや、現在の進捗状況を見ていこう。

新名神高速道路と名神・名阪国道が縦でつながる!「名神名阪連絡道路」とは

文=鳥羽しめじ

資料=国土交通省、滋賀県

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三重から新名神高速、名神高速を南北に繋ぐ

名神名阪連絡道路の概要

名神名阪連絡道路の概要

近畿エリアでは大がかりな道路整備プロジェクトが目白押しだ。たとえば新名神高速道路の最終区間(大津~高槻)の整備事業や、阪神高速道路5号湾岸線や淀川左岸線の延伸などがある。これらが完成すれば、中長距離交通の流れが大きく変わることになる。

いっぽう、これから計画の具体化をめざす「検討路線」にも、壮大なネットワークを実現するものがある。そのひとつが「名神名阪連絡道路」だ。

名神名阪連絡道路はその名のとおり、名神高速道路と名阪国道を縦に連結する道路計画。具体的には、滋賀県東近江市の八日市IC付近から南下して、新名神高速道路を甲賀土山IC西側付近で越え、三重県伊賀市の名阪国道 上柘植ICに接続するという、総延長約30kmのルートで検討されている。

名神名阪連絡道路の計画とメリットは?

近畿地方のハブ的南北軸として期待が高まっている

近畿地方のハブ的南北軸として期待が高まっている

名神名阪連絡道路が実現すれば、広大な「道路空白地帯」である滋賀~三重の南北軸が確保される。

甲賀・伊賀エリアは、内陸部の工業地帯を抱え、各方面への物流輸送が活発だが、とにかく南北方向、つまり名神高速・新名神高速・名阪国道の相互接続や北陸方面・和歌山・関空方面への連絡が貧弱だ。

また、奈良県や大阪府南部から名神高速・北陸方面へ向かう場合、いったん近畿道・名神高速や京奈和自動車道などを経由する必要がある。ここに名神名阪連絡道路という第2ルートが整備されることで、渋滞を避けた移動が可能となるほか、どちらかが寸断された場合の代替ルートとしても期待される。

現在の甲賀・伊賀エリアは山岳地帯が道路整備を阻んでおり、トラックだけでなく、乗用車すらスムーズに通行できるルートが少ない。何とか通行しようとしても、新名神高速 信楽ICから国道307号や国道422号を通行するルートで遠回りするしかない。かつては車幅ギリギリの恐ろしい峠越えや集落内道路の通行を強いられていたが、「伊賀コリドールロード」「三田坂バイパス」が開通して、やっと2車線の実用的な道路ができた。しかし、物流や緊急輸送を支える体制には乏しく、抜本的な高規格ルート整備が求められている。

さらに、名神高速・新名神高速・名阪国道の東西3軸は、鈴鹿山脈周辺での雨雪など自然災害による通行止めリスクもある。災害時に、通行止め区間から別ルートへ切り替えて移動を確保するための「ラダーネットワーク(東西軸を結ぶ南北軸)」も必要となっている。

そうした背景から名神名阪連絡道路は、国が機能強化を推進する「重要物流道路」候補路線に2018年に指定。一般的な生活道路の域を超えて、全国規模の物流ネットワークを支える道路だと判断されたことをきっかけに、本格的な検討が始まった。

なお名神名阪連絡道路の全体像はこれだけではない。次期整備区間として、名阪国道からさらに南に延伸して、近鉄大阪線と並行する国道165号の青山町付近までつなげる構想もある。

国道165号は奈良~三重をむすぶ東西幹線としては、阪和自動車道に次ぐ第2軸で、高規格改良が検討されている。この延伸区間が実現すれば、橿原(かしはら)・宇陀(うだ)方面をはじめとする奈良県南部、さらに松阪・伊勢方面からも北陸方面へとつながる新ネットワークになると期待されている。

この延伸区間については、いったん棚上げされており、まずは「先行区間」として名前の通り「名神~名阪間」の検討のみが進められている。

事業化に向けて、地元では着々とプロジェクト進行中

名神名阪連絡道路の概要

名神名阪連絡道路の概要

壮大な計画だが、現在はどこまで進捗しているのだろうか。

一般的に道路事業が正式にスタートする「事業化」までは、まず「計画段階評価」において地域アンケートなどを経て「概略ルート・構造」を決定する。それから都市計画決定と環境アセスメントの手続きを完了して、事業化の順番待ちということになる。

現在は、その計画段階評価の開始について準備検討を行っている。つまり、十分な便益が見込めるのか、社会的意義があるのかなど、データを整理・分析している状況だ。

計画段階評価からは国が主体で実施するが、そこまでは県や市など地元自治体が積極的に動かなければならない。そこで現在は、滋賀県と三重県が地域アンケートと住民説明会を行っているところだ。地域アンケートは10月1日に始まったばかり。回答期間は11月9日までで、新名神高速や名阪国道の通行頻度や、このエリアに対する交通課題への意識などが質問されている。

正式な計画段階評価の際に実施される1回目アンケートと大きくは変わらないので、正式に国が動き出すまでの「裏段取り」の意味合いも大きいだろう。インパクトの大きなプロジェクトなので、堅実かつ慎重にプロセスを進めていく必要がある。同時に10月中は、両県内の各地で住民説明会とオープンハウスが順次開催されていく予定だ。

なお、国土交通省近畿地方整備局の事業計画では、2025年度はまだ「計画の具体化に向けて、滋賀県及び三重県と連携して進めます」と書いているに過ぎない。進展への大きなトピックがあるとしたら、検討会や協議会が発足し、そこで計画段階評価の方針が正式に策定。年度はじめの事業計画にも「概略ルート・構造の検討」対象にリストアップされることだろう。長らく「夢物語」とされてきた名神名阪連絡道路の悲願の具体化プロセス開始に、引き続き注視していきたい。

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