日本の狭すぎる「機械式駐車場」でも停めやすいクルマ探し! BMW 1シリーズからどのモデルに買い替える?
引っ越し先の機械式駐車場が狭すぎたため、愛車のBMW1シリーズからコンパクトカーへ乗り換えることを決意した、自動車ジャーナリストの山崎 明氏。ついに候補車を「アクア」「フィット」「マツダ2」の3車種まで絞った筆者は、最終的にどのモデルを選んだのか。これは、同氏が次なる愛車を求めて苦悩の日々を綴った、ノンフィクションだ。
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目次
有力候補の「アクア」、新型ではまさかのGR SPORT廃止?
私のクルマ買い換えプロジェクトだが、前回の記事に書いたように、買い換え候補は「アクア」「フィット」「マツダ2」の3台に絞られた。まずは近所のショッピングセンター内にあるトヨタディーラーでアクアを見てみることにしたのだ。そしてそこで衝撃的な話を聞くことになる(訪れたのは2025年6月)。
なんとアクアは9月に大がかりなマイナーチェンジがある予定で、もう現行モデルは発注できないという。まだマイナーチェンジの内容はディーラーにも届いていないということで、何か情報があったら連絡をもらうことにした。
ネット上で検索したところ、電動パーキングブレーキの採用など装備の充実だけでなくフロント回りのデザインも大きく変わるという。なんとプリウスのようなハンマーヘッドデザインになるという噂だ。となるとアクアのマイナーチェンジ情報が確定するまで買い換えプロジェクトは一旦休止せざるを得ない。
そして7月初旬、トヨタディーラーから連絡があった。デザインはまだわからないが、予約発注は可能になったという。しかし個人的にハンマーヘッドデザインのような「薄目」のデザインはあまり好みではない。現行モデルの顔は好きだが、マイナーチェンジ後の顔は私の好みに合わない可能性がある。デザインがわからないまま発注するのはあまりにリスキーだ。
その後、さらに決定的な情報が告げられたのだ。なんとマイナーチェンジ後はGR SPORTグレードが廃止になるという。アクアを買うならGR SPORTと決めていたので、これはとても悲しい情報だ。顔の変化+GR SPORT廃止でアクアはあえなく候補から外れることとなり、フィットとマツダ2の2択となった。

トヨタ アクア GRスポーツ|Toyota Aqua GR SPORT
360°カメラなしの「フィット HOME」で駐車してみると……?
フィットの場合、BASIC/RS/CROSSTARには360°カメラがオプションでも付けられない。そうすると候補はHOMEかLUXEだが本革シートは好みではないのでHOMEということになる。
そこでホンダ広報部に相談したところ、360°カメラのついた広報車を貸してくれるという。広報車を受け取りに行き、早速カメラを試してみようと思ったのだが、なんとカメラのスイッチがない。そのクルマのスペック表には確かに付いていることになっているのだが、見当たらないのである。担当の方もいろいろ調べてくれたのだが、ないものはない。どうやらスペック表が間違っていたようだ。ほかのフィット広報車もすべて付いていないという。
仕方がないのでリアカメラのみのフィットでマンションの駐車場に入れてみた。フィットのリアカメラは3つのビューを選べ、真上からのビューを選択すると駐車場のパレットと車体との関係がわかりやすく、必ずしも360°カメラがなくても安心して駐車できることがわかった。
性能的にはBMW 118dの最大トルク320Nmには及ばないものの、0回転から253Nmという電動車ならではの力強いトルクと、118dより270kgも軽い車重で走りはとても軽快だ。

BMW 118d(写真右)では両側60mmしか余裕がなかったのに対し、フィット(写真左)ではかなりの余裕があった。

ホンダ フィット HOMEのリアカメラ真上モード画面
「マツダ2」は駐車途中に思わぬ落とし穴
続いてマツダ2の試乗である。こちらはSPORTグレードの試乗車がロードスターを購入した近所のディーラーにあるということなので、それを借りてみることにした。このモデルは360°カメラ標準搭載である。しかし機械式駐車場には柱があるため、駐車途中でミラーを畳む必要があり、ミラーの下にカメラがある関係上畳むと360°カメラは機能しない。これで360°カメラが必須ではないことが決定的になった。
マツダ2はマツダらしいスポーティな走りで魅了されたものの、基本的にロードスターと同じエンジン(ハイオク仕様とレギュラー仕様の違いで出力は違う)なのでロードスターと共通する不満を感じてしまった。要するに低速トルクがあまり無いのである(最大トルクは142Nm/3500rpm )。
MTならトルクのなさを運転の仕方でカバーできるが、ATだとトルクのなさが強調される感じだ。もちろんマニュアルモードで高回転まで引っ張れば十分なパワーは出るのだが、一般道をDレンジで普通に走っている時にちょっともっさりとした印象(特にフィットe:HEVと比較した場合)を受けてしまうのだ。
マツダ2はMTであればなかなか良い選択だと思うが、ATの場合はフィットe:HEVの方に魅力を感じてしまう。装備とボディカラーではマツダ2はとても魅力的なのだが、今回は見送ることとした。

マツダ2 スポーツプラス|MAZDA2 SPORT+
悩みに悩んだ愛車選び。ついに買い替えるクルマが決定!
というわけで、車種はフィットe:HEVで決定である。そもそも世界中のBセグメント車の中で個人的に最も好きなモデルなので、最初から最有力候補ではあったのだが。
しかしこの4代目(GR型)フィットのデザインは不評らしい。私以外の自動車ジャーナリストの評価も高いのだが、一般的にはミニバン以外のホンダ車にはスポーティさを求める人が多いようだ。それゆえ、来年あたりと噂されているモデルチェンジではよりホンダらしいスポーティなフォルムになる可能性が高い。
しかし私はこの現行型フィットのちょっとのんびりした感じのスタイルが大好きなのだ。フロント回りの造形も人を威圧することのない穏やかな表情が好きなのである(ポルシェ911が好きなのも同じ理由)。だからモデル末期であっても新車を購入することに躊躇はなかった。マイナーチェンジ後のアクア同様、新型フィットのスタイルは私の好みに合わない可能性が高いからだ。

購入車はホンダ フィット e:HEV RSのボディカラー「スレートグレー・パール」に決定!
フィットはそのコンセプトからするとHOMEを選ぶのが妥当であることはわかっていたが、このグレードにはちょっと悩ましいポイントがあった。内装がブラックか白に近いライトグレーの2択なのである。ライトグレーは華やかでおしゃれだが座面部分がウルトラスエード張りで、ほとんどデニムしか履かない私としては色移りがとても心配である。黒はダッシュやドアトリムも真っ黒になるので少々味気ない。
そこで俄然魅力を感じたのがRSの内装である。黒と薄すぎないグレーのコンビでイエローのステッチが加わり、黒のHOMEより華やかさを感じさせる。外装もボディの下回りに黒い装飾が加わることでかなり引き締まって見える。前述したように360°カメラが付けられないことはもう問題ではない。乗り心地は若干堅くなるものの、十分しなやかと言える範囲だ。

ホンダ フィット e:HEV RSの内装。アクセントに使われたイエローのステッチも気に入った。
そしてRSならばスレートグレーという私の好みのボディカラーが選べる(7月10日の小改良でHOMEでも選べるようになったが)。色味こそ違うものの、スレートグレーという名前はポルシェの伝統的ボディカラーで、スティーブ・マックイーン主演の映画「栄光のルマン」の冒頭シーンでマックイーンが乗って現れるポルシェ911のボディカラーなのだ。
現行の911にもオプション色でスレートグレー ネオという色が存在する(この色はフィットのスレートグレーに近い色味だ)。そんな事実も私の背中を押す恰好になり、フィットe:HEV RSのスレートグレー・パールを発注することとなったのだ。
オプションはHONDA CONNECTディスプレイとユーロホーン(日本車を買う場合、必ずホーンは交換している)と、フロアマットだけである。そして希望通りの仕様の在庫車がディーラーにあり(不人気車ゆえか?)、8月下旬には納車されることとなったのである。
(次回に続く)
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