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公開日:2025.10.06

群馬~長野の新ルート「上信自動車道」が整備中!「鳥居峠越え」の計画はどうなった? 関越道~草津温泉はもうすぐ直結【いま気になる道路計画】

工事が進む上信自動車道

群馬県の草津温泉へのアクセスを担い、将来は長野県内へ直結する「上信自動車道」の整備計画が進行中だ。すでに多くの区間が開通済みだが、メインとなる「鳥居峠越え」区間の計画も具体化しつつある。開通のメリットや、現在の進捗状況を見ていこう。

工事が進む上信自動車道

文=鳥羽しめじ

資料=国土交通省、群馬県

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関越道から草津温泉、長野県方面をつなぐ新ルート

上信自動車道の概要

上信自動車道の概要

上信自動車道は、その名が「上野国(上州)」と「信濃」の頭文字から取られているとおり、群馬県~長野県をつなぐ高規格道路だ。

総延長は約84kmとなっており、関越自動車道「渋川伊香保IC」を起点に、渋川市・中之条町・東吾妻町(ひがしあがつままち)・長野原町・嬬恋村(つまごいむら)といった吾妻川沿いの市街をつなぎ、最終的には「鳥居峠」を越えて長野県上田市内で上信越自動車道へ接続する計画だ。

国道353号・国道145号・国道144号の代替として、急勾配・急カーブを無くし、立体交差を基本とした高規格バイパスとなる。鉄道における「JR吾妻線」に相当するものだ。

上信道の整備により、当エリアに点在する温泉地など観光スポットへの交通アクセスが、格段にスムーズになる。たとえば草津温泉の玄関口となる長野原まで、関越道から渋滞の無いダイレクトアクセスが誕生。国交省の試算では、関越道~草津温泉の時間短縮効果は「約29分」にのぼるという。

開通ラッシュに沸く上信道、現在の状況は?

工事が進む上信道「渋川西バイパス」

工事が進む上信道「渋川西バイパス」

そんな上信道の整備状況だが、現在まさに「開通ラッシュ」と言える状況だ。すでに着工済みの約50kmの進捗を具体的に見ていこう。

まず、関越道 渋川伊香保ICから5kmの工区「渋川西バイパス」が、2025年度内に最終完成予定。関越道を下りると、しばらく立派な4車線道路が続く。ここは旧県道35号と市役所通りという一般道を活用した区間が開通済み。その先の1.9kmが整備中で、工事は大詰めとなっている。

次に、上信道 金井IC~箱島ICの「箱島バイパス」7kmは開通済み。その先の区間、箱島IC~厚田ICの「吾妻東バイパス」13kmは、2029年度を開通目処として整備が進められている。吾妻東バイパスでは、途中に新巻IC、植栗・中之条IC、川戸・原町ICの3つのICが設置予定。

さらにその先、厚田IC~与喜屋IC(仮)までの3区間「吾妻西バイパス」「八ツ場バイパス」「長野原ハイパス」計16kmは開通済みとなっている。

つまり、ここまでの区間で未開通なのは「渋川西バイパスの一部」と「吾妻東バイパス」の2区間である。これらが開通すれば、上信道はいよいよ中之条町中心街を越え、JR郷原駅付近、八ッ場ダム、長野原町中心街を過ぎ、ついには草津温泉への入口までつながる。

気になる吾妻東バイパスの進捗だが、工事が進行中で、各地で橋脚が立ち並んでいる状況。場所によっては橋桁の架設開始も近いと見える。

しかし、用地取得に課題があり、もともと2026年度に西半分が先行開通する見込みだったが、用地取得の遅れで全体的に2029年度の開通へと延期となった。取得率は2024年3月の時点で、西側が93%、東側が85%となっている。

トンネルなどの難工事箇所が無いため、用地取得さえ完了すれば工事は比較的スピーディに進むと思われる。2029年度の具体的な開通見通し発表に期待したい。

いよいよ進みだす長野県方面、並行する鉄道の事情も

事業が進む上信道「長野原嬬恋バイパス」

事業が進む上信道「長野原嬬恋バイパス」

さて、事業化はされたが、未着工の区間についても具体的にみていこう。

与喜屋IC(仮)~鎌原IC(仮)の「長野原嬬恋バイパス」8.5kmは2019年に事業化済み。ここでは途中に、古森IC、袋倉IC、芦生田(あしうだ)IC、鎌原ICが設置予定(いずれも仮称)。2024年から用地取得が始まったところで、まだ着工までは時間がかかりそうだ。

その先、「嬬恋バイパス」12.1kmは2025年度に事業化されたばかり。これから調査設計が行われ、その後に用地取得が始まる。嬬恋村役場のあるJR大前駅(JR吾妻線の終点)周辺を越えて、田代地区へ到達する区間で、工区としては群馬県最西端に位置し、長野県境にある「鳥居峠」の入口へとつながる。

そしてその先、約20kmの区間は事業化されていない。ここは「上信道」のハイライトといえる県境「鳥居峠」越えの区間で、上信越道 東部湯の丸IC~上田菅平ICに相当する。東御市~上田市あたりで上信越道へと接続する計画となっている。

この県境越え区間、ながらく「二の次」扱いになっていたところ、2025年に大きな動きがあった。関東地方整備局の2025年度予算概要に「県境部付近を含む残る調査中区間の計画の具体化に向けて、概略ルート・構造の検討等を群馬県及び長野県と連携して進めます」と明記されたのだ。

事業化へのステップは、まず「計画段階評価」によって地域アンケートなどを経て概略ルート・構造が決定。その後、都市計画決定・環境アセスメントが完了すればいよいよ事業化待ちとなる。今回、明記された文言は、その計画段階評価へと踏み出していく意思表示といえるものだ。

実は群馬県から長野県へ抜けていくネットワークは、JR吾妻線でも計画されていた。1961年に打ち出された構想では、嬬恋村から長野県の北部「須坂市」を越え、豊野駅へ接続することになっていたようだ。結局は、嬬恋村役場のある大前駅までで建設が終了。いわゆる盲腸線(※)として今に至る。

上信自動車道は、国鉄が果たせなかった「県境越え」の夢を、高規格道路によって果たす存在となるのだ。

なお、並行するJR吾妻線にとって、上信道は「草津温泉アクセス」の脅威となるかもしれない。上野駅から長野原草津駅をつなぐ特急「草津・四万」は、毎日2~3往復走るほど需要の高い路線だが、それはライバルとなる高速バスに比べて1時間以上速いという速達性に裏打ちされている。

しかし2029年度、上信道が吾妻東バイパスまで完成し、関越道~長野原が直結すれば、いよいよ高速バスの優位性が高まってくるのは間違いない。その時に、JR吾妻線の需要体系はどう変化するのだろうか。こちらにも引き続き注視していきたい。

このように上信道の計画は、群馬県側ではもうすぐ完成という所まで来ており、長野県側では計画段階評価が大きなステップとして待ち構えている。まずは、目前に迫った2区間の開通を心待ちにしながら、鳥居峠を含む県境超え区間の早期事業化に期待したい。

※盲腸線とは、公共交通機関において営業距離が短く、かつ起点もしくは終点のどちらかが他の路線に接続していない行き止まりになった路線のこと。

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