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公開日:2025.09.10

中央道をショートカットする「甲府富士北麓連絡道路」どこまで出来た?「新たな御坂トンネル」も着工準備【いま気になる道路計画】

富士吉田市内で2015年に開通した、国道137号「吉田河口湖バイパス」。

甲府方面と富士吉田エリアを最短距離でつなぐ高規格道路「甲府富士北麓連絡道路(こうふふじほくろくれんらくどうろ)」の計画が進んでいる。完成によるメリットや、現在の進捗状況について解説していこう。

富士吉田市内で2015年に開通した、国道137号「吉田河口湖バイパス」。

文=鳥羽しめじ

資料=国土交通省、山梨県

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「甲府富士北麓連絡道路」で国道137号を重要物流道路

「甲府富士北麓連絡道路」の概要

「甲府富士北麓連絡道路」の概要

「甲府富士北麓連絡道路」は、甲府盆地(笛吹市内)の国道20号 勝沼バイパスおよび中央自動車道 一宮御坂ICから、富士吉田市までを直結する、延長約35kmの高規格道路だ。

主に国道137号を高規格化するもので、山梨県東部の郡内地方において最大人口を持つ富士吉田市への最短アクセスを担う。さらにその先、御殿場方面や東名高速・新東名高速へのスムーズな連絡も期待されている。

現状、高速道路を利用して甲府~富士吉田~御殿場を移動する場合、いったん中央道 大月JCTまで出る必要があり、三角形の2辺に沿うような大きな迂回を強いられている。

しかし、甲府富士北麓連絡道路が完成すれば、甲府市~富士吉田市の所要時間は現状の約58分から約50分へと約8分の短縮が見込まれている。

それだけでなく、中央道 勝沼IC~大月JCTなど、渋滞しがちな区間を避けられるほか、事故渋滞の代替ルートとしての機能も期待される。さらに甲府方面への緊急医療輸送にも有効で、大規模災害時、特にエリア固有の課題である富士山噴火の発生時などに広域的な避難ルートとしての役割を持つ。

社会便益としても、国の「重要物流道路」に候補路線としてリストアップされ、優先して整備すべき道路となっている。

最大の難所「御坂峠」に新たなトンネル計画

新たな御坂トンネルの計画ルート案。

新たな御坂トンネルの計画ルート案。

国道137号の高規格化は、ひとまず「地域高規格道路」としての機能レベルに準じた、4車線化やバイパスが両エリアで順次完成してきている。

まず甲府盆地側では、国道20号から約4.5kmが「御坂一宮バイパス」として、4車線道路になった。その先、盆地から山岳区間に入る約3.4kmでは「上黒駒バイパス」が2005年に完成(2車線+登坂車線)した。

いっぽう富士吉田側でも、河口湖エリアに「河口II期バイパス」(2車線)が2010年に開通。さらに市街地と河口湖エリアの渋滞区間を2476mの新倉河口湖トンネルで一気に短絡する「吉田河口湖バイパス」が2015年に開通した。

残った、立ちはだかる御坂山地の峠越えでは大改良計画が進行中だ。

現在は、1967年に有料道路として開通し、1994年に無料開放された「新御坂トンネル(2778m)」が抜けている。しかし、新御坂トンネルは、開通から半世紀が経過し、漏水やコンクリート剥落、ボルトの脱落など、老朽化が深刻になってきている状況だ。

それに加えて、新御坂トンネルの前後区間の道路線形が悪いのも課題だ。社会の変化とともに、とりあえず峠を越えられれば良いというだけでは不足となり、「重要物流道路」としての機能面での課題が浮き彫りになっているのだ。

御坂峠では、連続ヘアピンカーブを含む急勾配・急カーブで事故が多発し、10年間で124件の死傷事故というデータがある。特に冬季は、こうした道路は路面凍結で危険性が増加する。雪道でのスリップ事故に起因する通行規制は10年間で6回を数える。

さらに未整備の山道であることから天候変化に弱く、倒木や積雪による通行止めも目立つ。

いま進められている新事業は、この御坂峠を「甲府富士北麓連絡道路」の一環として、前後の通行困難区間も含めてバイパスする「新たな御坂トンネル」を整備するというものだ。

新トンネルのルートは、峠の手前にある「カムイみさかスキー場」付近から始まり、すぐに南へ進路を変えて、長さ4.7kmのトンネルで一気に河口湖側へ。「山宮トンネル」のすぐ手前へ抜ける計画となっている。道路は2車線(片側1車線)で、路肩と歩道が確保され、自動車と自転車・歩行者のどちらもより安心して通行できるようになる予定だ。

なお、現在のトンネルと比較すると、標高にして109mも低くなるため、アップダウンによる負担も大きく軽減される見込みだ。

また、ルート選定にあたっては、近接する富士箱根伊豆国立公園の環境や景観への影響を抑えるよう配慮されている。

「難所ゼロ」に向けてどこまで進行中?

新たな御坂トンネルの計画ルート案。青い線が現在の新御坂トンネルで、下部の赤点線が新トンネル。

新たな御坂トンネルの計画ルート案。青い線が現在の新御坂トンネルで、下部の赤点線が新トンネル。

「新たな御坂トンネル」のルート案が決まったのは2020年。2年後の2022年に、国道137号 河口〜藤野木区間として事業化を果たした。ルート案決定後は、定期的に「整備検討会」が開催されている。2月に開催されたこの最新の検討会(第5回目)の内容から、計画の進捗状況を確認してみよう。

現在は、4.7kmもの長大トンネルを建設するために、どういった技術的課題があるのか、洗い出しと対策検討が行われている状況だ。これが整理されれば、設計が本格化していくこととなる。残るボーリング調査(地質調査)は2か所なので、詳細設計のスタートは目前に迫っていると言ってもいいだろう。

同時に、トンネル前後の取り付け部分については、すでに測量設計がスタートしている。

この新トンネルが計画されている区間では、建設において地質的に特に難しいポイントは無く、突発的な湧水のリスクも少ないという。なお、避難用のトンネルは、水抜き効果や地質の見極めにも活用する意味合いで、本線トンネルの西側に設置される計画だ。

高速道路級とまではいかないものの、全面バイパスで快適な交通を図る「甲府富士北麓連絡道路」。そのハイライトとなる新たな御坂トンネルが、着工の時まで刻一刻と近づいている。悲願の完成を迎えるまで、引き続き注目していきたい。

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