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公開日:2025.07.10

スズキ初のBEVとは思えぬ完成度! 新型「eビターラ」に感じた手応えとは?【試乗レビュー】

スズキ eビターラ|Suzuki eVitara

スズキ初のBEVがついに日本上陸! 「eビターラ」の2WD/4WDモデルにモータージャーナリストの原アキラが試乗。

スズキ eビターラ|Suzuki eVitara

文と写真=原アキラ

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スズキが2024年11月にワールドプレミアした同社初の量産BEVが「eビターラ」だ。自動車デザインの聖地であるイタリア・ミラノを最初の発表の場所として選んだのだから、そのルックスには相当自信があるはず。そしてその性能にも。

6月末に千葉県・袖ヶ浦フォレストレースウェイで開催されたeビターラ プロトタイプの試乗会に参加して、出来栄えを確かめてきた。

コンパクトなSUVボディに2WD、4WDのEVパワートレイン

eビターラのボディは、全長4,275mm、全幅1,800mm、全高1,640mm、ホイールベース2,700mmで、既存のフロンクスよりちょっとだけ大きなコンパクトSUV。

2023年に公開された「eVX」コンセプトをベースにしたスズキ初のBEVモデルで、製造するのはお馴染みのインド・グジャラート工場だ。2025中に日本だけでなく、欧州、インド、さらにその他の国と地域で順次販売するグローバルモデルという立ち位置で、鈴木俊宏社長が「インドでの電気自動車の生産、販売、輸出で1位を目指す」と株主総会で宣言した中での最初のモデルでもある。

プロダクトコンセプトは「Emotional Versatile Cruiser」で、「感性をゆさぶる多用途クルーザー」とでも訳せようか。

ランドブリーズグリーン・パールメタリック&ブラックルーフの2トーンカラー。暗めのグリーンがeビターラを象徴する色味とされていることからも、このモデルがアクティブなイメージを持たせたいことが伝わってくる。

ランドブリーズグリーン・パールメタリック&ブラックルーフの2トーンカラー。暗めのグリーンがeビターラを象徴する色味とされていることからも、このモデルがアクティブなイメージを持たせたいことが伝わってくる。

シャーシはBEV専用に新開発した「ハーテクト-e」プラットフォームで、フロアに敷いたリン酸鉄リチウムイオンバッテリーは2WD用の49kWhのものと、2WD、4WD用の61kWhの2種類。

駆動用モーターは49kWhの2WDが最高出力106kW(144PS)、最大トルク193Nmを発生。また61kWhの2WD用は128kW(174PS)/193Nm、同4WD用はフロント128KWとリア48kW(65PS)の2モーター「オールグリップ-e」システムを搭載して、システム合計で最高出力135kW(183PS)、最大トルク307Nmを発生する。

プロトタイプの車重、航続距離、0-100km/h加速をそれぞれの順番で記すと、1,700kg/400km以上/9.6秒、1,790kg/500km以上/8.7秒、1,890kg/450km以上/7.4秒。最高速度はどれも150km/h。

また充電性能は、普通充電の200V 6kW(10→100%)/急速充電の90kW(10→80%)が41kWhモデルで約8.5時間/約45分、61kWhモデルで約10.5時間/約45分を公称している。

ヒートポンプシステムを採用した空調とステアリング&シートヒーターの直接暖房の組み合わせ、さらに寒冷地での走行前にバッテリーを温めるバッテリーウォーマー機能や走行中のバッテリー昇温機能など、最新BEVとして必要とされる機能をきっちりと搭載している点も見逃せない。

eビターラのボンネットを開けた状態

eビターラのボンネットを開けた状態

エクステリアで2WDと4WDの違いはぱっと見では分からず、リアにeアクスルがあるかないかで判別できる。こちらはeアクスルが見えているので4WD。

エクステリアで2WDと4WDの違いはぱっと見では分からず、リアにeアクスルがあるかないかで判別できる。こちらはeアクスルが見えているので4WD。

攻めたエクステリアと上質なインテリア

エクステリアのコンセプトは、「ハイテク&アドベンチャー」。

聞き慣れた名称だが、EVらしい長いホイールベースとキャビンに、SUVらしい立ったフロントウインドウ、厚みのあるフードとフェンダーを組み合わせたボディは、3点に発光する特徴的な3ポイントマトリックスヘッドライトを持つ顔つきとともに、結構攻めたデザインで仕上げている。

サブキーワードが「メタルビースト(鉄の野獣)」だったというそれは、一目でeビターラとわかるものであり、筆者がちょっと前に見たアルファロメオ製コンパクトSUVの「ジュニア」(こちらも原点はミラノにある)に勝るとも劣らない出来といっていい。

3ポイントマトリックスヘッドライトは欧州のSUVのような立体感がある。

3ポイントマトリックスヘッドライトは欧州のSUVのような立体感がある。

ブラック&ブラウンの2トーンインテリアは上質な仕上がりだ。異形ステアリングの奥には、メーターとインフォテインメントを1枚ガラスで繋いだ横長の「インテグレーテッドディスプレイ」が広がり、フローティングのセンターコンソールには右に回してドライブ、左でバックのシフトダイヤルが備わる。

2WD車はその右に「ドライブモード」、左に「ワンペダル」と「SNOW」、4WD車は右に「ドライブモード」と「TRAIL」、左に「ワンペダル」と「ヒルディセント」のボタンがあり、差別化を図っている。

ラゲッジは少し狭めだが、リアシートにわざわざスライドをつけたり、4:2:4の分割可倒にしたりと、スズキらしい工夫が詰め込まれている。

ブラック&ブラウンを多用したeビターラのインテリア。実はスズキがメーターディスプレイとセンターディスプレイを一体化したのは、このモデルが初めてとのこと。センターコンソールも含めて全体の質感は良いが、これにより結構良いお値段になるのでは? という懸念も。

ブラック&ブラウンを多用したeビターラのインテリア。実はスズキがメーターディスプレイとセンターディスプレイを一体化したのは、このモデルが初めてとのこと。センターコンソールも含めて全体の質感は良いが、これにより結構良いお値段になるのでは? という懸念も。

eビターラの後部座席は十分な空間が確保され、前席と同様に座り心地も良い。リアシートは160mmまで前後にスライド可。

eビターラの後部座席は十分な空間が確保され、前席と同様に座り心地も良い。リアシートは160mmまで前後にスライド可。

eビターラのラゲッジスペース。荷室長は675mmだが、リアシートをスライドさせることで最大835mmになる。

eビターラのラゲッジスペース。荷室長は675mmだが、リアシートをスライドさせることで最大835mmになる。

2WDと4WD、走りに違いは?

サーキット走行に臨んだ2WDモデルの印象は、とても扱いやすい、というのが第1印象。

ステアリング特性も足回りも加速も、どれも手の中にある範囲に収められる、という感じで、スムーズに、気持ちよく駆け抜けることができた。ワンペダルは停車まで行うタイプではないので過激な部分がなく、滑らかにブレーキングできるのがいい。ただ、3段階に調整できる回生レベルは、いちいち停車してからでないと変更できない、という設定は「?」の部分ではあるのだが。

スズキ eビターラ|Suzuki eVitara

スズキ eビターラ|Suzuki eVitara

一方の4WDモデルは、前後にeアクスルを搭載した「オールグリップ-e」と、よりパワフルになったモーターの力によって、安定感と加速性能がさらにアップしているのが印象的。

前後の駆動力配分をコントロールするだけでなく、コーナーでは内側のブレーキを軽くつまむベクタリング効果が前後タイヤに効いているので、フロントタイヤのコーナリングフォースが増し、狙ったラインをより正確に捉えながら走ることができるようになったのがわかる。これなら、腕の立つ欧州ドライバーが走らせても不満の声は出ないはずだ。

開発スタッフに話を伺うと、実はスズキの四駆モデルはイタリアなどと親和性があって、現行のビターラ(エスクード)やイグニス、ジムニーなどは狭い道路や駐車スペースの少ない彼の地では重宝されているのだとか。

スズキ eビターラ|Suzuki eVitara

スズキ eビターラ|Suzuki eVitara

eビターラのメーターディスプレイ画面

eビターラのメーターディスプレイ画面

ここ日本でもしっかりと売れるよう、専用のアウトドア用品だけでなく、自宅設置用の充電器、コンソール内にコンパクトに取り付けたETCや車載カメラ機器、はたまた鈴木式織機で織った前掛けや充電コード入れなど、さまざまなグッズを丁寧な仕上げで用意しているところを見ても、スズキの良心と本気度が伺える。

クルマの出来はいい。あとは価格。EV環境の厳しい日本でいくらの値付けになるのか、興味を持って見守りたい。

スズキが用意していたオプションは、SUVらしくアウトドア向けのアクセサリーが多かった。

スズキが用意していたオプションは、SUVらしくレジャーで活躍するアクセサリーが多かった。カータープはogawa×スズキのコラボモデル。他にはベースキャリア、サイドシルスプラッシュガード、アルミホイールガーニッシュなどが良いアクセントになっている。

SPECIFICATIONS
スズキ eビターラ|Suzuki eVitara(プロトタイプ)
ボディサイズ:全長4275×全幅1800×全高1640mm
ホイールベース:2700mm
車両重量:1790kg[1890kg]
駆動方式:2WD[4WD]
総電力量:61kWh
モーター最高出力:フロント128kw(174PS)[135kW(183PS)]
モーター最大トルク:193Nm[307Nm]
一充電走行距離(WLTC):500km以上[450km以上]
最高速度:150km/h
価格:未定
※[ ]は4WDモデルの数値

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