横浜~逗子に「ニ層構造の道路」ができる! 横浜逗子線 釜利谷六浦地区の工事計画と進捗【いま気になる道路計画】
神奈川県の三浦半島は山が海の近くまで迫る複雑な地形のため、道路の建設が容易ではなく、少数の道路だけで多くのクルマの往来を担っている。その中でも主要な道路である横浜逗子線では、2025年5月現在、釜利谷六浦地区において変則的な4車線になる二層構造を採用した道路の新設工事が進行中だ。このプロジェクトの計画、進捗、意義を紐解いていこう。
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横浜逗子線、釜利谷六浦地区にできる二層構造の道路

横浜逗子線 釜利谷六浦地区の全体平面図・縦横断イメージ図。
横浜逗子線は、横浜市港南区の横浜鎌倉線から逗子市境に至る全長11.32kmの都市計画道路だ。このうち京浜急行・金沢八景駅近く、釜利谷南一丁目から六浦四丁目までの約1.4kmの区間は、2025年5月現在、未開通のままだが、この区間において「二層構造道路」の建設が進行中である。
起伏の激しい山がちな土地に多くの住宅が立ち並ぶこの釜利谷六浦地区にできるのは、地下2車線・地上2車線の変則的な4車線道路。地上において通常の4車線でスタートし、内側の2車線はトンネルに入り地下を通る片側1車線の本線となり、両サイドの2車線はトンネルに入らず地上を走行する地域住民向けのアクセス道路として整備される。
地上部の2車線はトンネルと分かれた後、すぐに合流して片側1車線道路に変わる。そして、地下と地上の二層構造区間は約660mにわたり続き、トンネルの終端に近づくと地上部は再び両サイドに分かれる。その後、地下部はトンネルを抜けた先で地上部と再び合流し、全体として4車線道路に戻る設計となっている。
なお、地上部には3.5m幅の広い歩道も整備予定で、安全性と快適性の両立が図られている。
なぜ二層構造なのか? 開通予定の道路に期待されること

横浜逗子線 釜利谷六浦地区の完成イメージ図。
今回の道路が新設される区間は、釜利谷交番前から分岐し環状4号線へと抜ける住宅街付近。現在、このエリアは片側交互通行を強いられる「白山道トンネル」をはじめとして非常に狭く、慢性的な渋滞が起こっている。生活道路に交通が集中することで、歩行者や自転車との接触のリスクや緊急車両やバスの通行に支障がでる問題も指摘されている。また、通勤・通学時間帯には車列が伸び、近隣住民の生活環境にも悪影響を与えているのが現状だ。
こうした課題を解決するのが、新たに整備される横浜逗子線の釜利谷六浦地区だ。逗子方面と横浜方面をつなぐ国道16号のバイパスとして既存の交通量を分散し、釜利谷六浦地区や環状4号、金沢八景周辺の渋滞が大幅に緩和されると見込まれている。
さらに、上下二層の構造で通過するだけの交通と生活するための交通を分離。これにより、住宅地が密集するこのエリアで平面かつ広い道路用地の確保を不要にするとともに、地域住民の安全性も確保している。利便性と暮らしやすさの両立を目指した、地域にやさしい道路計画といえるだろう。
釜利谷六浦地区の工事計画と進捗

横浜逗子線 釜利谷六浦地区の環状4号付近の工事状況。
横浜市道路局が2025年1月31日に発表した道路局予算概要には、2025年度は引き続き用地取得を進めるとともに、トンネル工事に着手すると記載がある。
横浜市ホームページによると、2024年度末見込みで事業進捗率は37%、用地取得率は84%。つまり、予算全体の37%がこれまでに使用され、道路を建設するのに必要な土地の84%はすでに取得や買収ができているという意味だ。土地が84%取得できているので100%の取得も目前かと感じられるが、実際はそうはいかないようだ。2021年当時の同ページに、用地取得率は2019年度末で83%だったとの情報がある。用地取得率が約4年経過してもほとんど増えていないということから、用地の確保が難航していると予想ができるのだ。実際、このエリアに限らず住宅が密集する場所では、交渉が難航するケースも多い。
また、2025年4月1日に発表された横浜逗子線事業概要では、事業期間は2004年度~2031年度となっている。しかし、2021年時点の横浜市ホームページでは、事業期間は2004年~2024年度との記載があるため、完成が遅れていることも確認できた。
この横浜逗子線の釜利谷六浦地区が最初に都市計画決定、つまり「将来ここに道路を作ります」と公式発表されたのは1957年12月17日。長い間コツコツと用地取得を積み上げて今に至っている。残りの用地16%を予定通りに取得し、遅延なく2031年度に開通することを期待したい。地域住民にとっては長年の悲願でもあり、実現が待ち望まれている。
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