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最終更新日:2025.05.07 公開日:2025.05.07

エコカー補助金なんか配ってる場合じゃない! 日本は全力で中国車対策せよ! 【国沢光宏がクルマ業界にモノ申す!】第4回

中国勢よりXiaomi(シャオミ)「SU7」

このままでは日本の自動車メーカーは全滅する! 「日本車は高くても売れる」はもう通用しない。上海モーターショー2025で感じた危機感とは? 自動車評論家の国沢光宏氏が日本のクルマ業界にモノ申す!

中国勢よりXiaomi(シャオミ)「SU7」

文と写真=国沢光宏

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中国市場で日本車の販売台数は右肩下がり

隔年で開催される『オート上海』は、今や出展社数が1000を超える世界最大のモーターショーになった。なにしろ2024年の中国新車販売台数は3150万台と、2位アメリカ(1600万台)の2倍! 世界4位の日本は440万台だから、圧倒的な市場規模である。参考までに書いておくと、3位インドで5位ドイツという状況。人口14億人を超えるのだから当然かもしれない。

新型コロナ禍以後、中国市場に於ける日本車の販売台数は、残念ながら右肩下がり。トヨタのみ何とか台数をキープしているものの、2024年の中国販売台数はホンダ85万台。日産70万台。2019年を見ると、ホンダも日産も155万台売っていた。ほぼ半減という状況。なぜ低迷しているかと言えば、電気自動車の投入遅れと、「日本車は高くても売れる」という強気の販売姿勢にある。

上海モーターショー2025では、26の国と地域から1000社近くの企業が出展、展示総面積は36万㎡を超え、過去最大規模となった。

上海モーターショー2025では、26の国と地域から1000社近くの企業が出展、展示総面積は36万㎡を超え、過去最大規模となった。

直近の5年で中国の電気自動車技術は大幅に進化すると同時に、コストダウンが進んだ。電気自動車と言えばガソリン車より高いというイメージを皆さん持つようだけれど、現在の中国を見ると全く状況が変わってしまった。エンジン車より高い性能を持ち、フル充電で400km以上走り、エネルギーコストもガソリンより安価な電気自動車をガソリン車より安い価格で買える。

例を挙げてみよう。新型カムリのベースグレードは2リッターガソリンで17万3800元(約350万円)。新型アコードの1.5リッターターボは360万円となる。これに対し、BYDや吉利汽車、長城汽車に代表される中国勢は10万元(約200万円)で同じサイズの電気自動車を出しているのだった。ここまで読んで「中国車は安かろう悪かろうでしょ」と思うだろう。

中華製サイバートラック? GAC(広州汽車)のピックアップトラック「PICK UP 01」

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中国人にとってEVとスマホ買い替えは同感覚

一昨年から日本に参入してきたBYDの評価を見れば解る通り、我が国の自動車メディアは絶賛(私はそこまで高く評価していない)。実際、耐久性や信頼性は未知数ながら、魅力的で高い性能を持ちながら安価である。中国の電気自動車に対する感覚はスマートフォンと同じ。3~4年で乗り換えるため、耐久性や信頼性を重視しない。高機能で高性能でフル装備ならOKなのだった。

中国の事情に疎い日本勢は(特に在日本の経営陣)、多少高い価格付けでも信頼性が高ければ売れると判断していた。中国だと評価の対象にならない信頼性(例えば大型液晶の寿命など)を第一に考えた結果、割高傾向に。加えて中国人は日本人と同じで自国ブランドを好む。割高で中国人の好みを考えず、楽しさや派手さも無い日本車の売れ行きが落ちるのは当然のことである。

これはビートル……? 中国勢より欧拉(Ora)「芭蕾猫( Ballet Cat)」

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日本は全力で中国車対策せよ

そんな状況にいち早く気づいたのがトヨタと日産だ。2年前のオート上海に出展された中国車を見て中嶋副社長は「このままだとトヨタは潰れる! 中国車を凌ぐ性能を同等の価格で作ろう」と決めた。同じ時期、日産の中国市場担当者も「負け戦になる!」と判断。日本側と折衝し、中国市場向けに開発するクルマは中国独自で判断&決定するということを許可してもらった。

オート上海に出展されたトヨタ「bZ3X」と日産「N7」を見て驚く。430kmの航続距離を持つbZ3Xは2リッターガソリン車で323万円(日本での価格)のRAV4と同じサイズのSUVなのに、200万円から320万円。カムリやアコードと同等サイズのN7も240~300万円という、エンジン車より安い価格を付けてきた。もちろんBYDや長城汽車ともガチンコで戦える。

「bZ3X」はトヨタと広州汽車集団有限公司、広汽トヨタ自動車有限会社、IEM by TOYOTAが共同開発したBEV

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東風日産から中国市場に導入される新型ミッドサイズBEVセダン「N7」

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安いだけでなく、中国人が評価基準としている車内エンタメや、半自動運転機能も充実している。bZ3Xに搭載された最先端の自動運転機能は中国勢と比べたって勝るとも劣らない(動画を参照)。N7も自動緊急回避性能で中国車を圧倒する優れたADAS(運転補助機能)を持つ。少しばかり出遅れたけれど、日本勢も中国勢と真正面から戦えるようになってきた。

とはいえ中国勢のイキオイは強烈だ。開発期間短く、思いきったコンセプトのクルマも多い。もはや欧州勢やアメリカ勢は完全に振り切られてしまった。中国勢が東南アジアやインド、南米、アフリカなどへ進出していくと、日本勢にとって驚異になる。BYDなど日本専用の軽自動車を開発し2026年に発売予定。全力で中国車対策をしなければ手遅れになる。

bZ3Xに搭載された最先端の自動運転機能。動画=Youtubeチャンネル「J GB」

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