なぜアイシンがお茶飲料を開発? 静岡「長峰製茶」とコラボした新感覚スパークリングティー「bodhi 9(nava)」を味わう。 【ノンアルのおいしいカーライフ Vol. 05】
静岡の老舗製茶会社「長峰製茶」の新感覚スパークリングティー「bodhi 9(nava)(ボーディーナヴァ)」は、伝統の後発酵茶をベースにしており、お茶の風味とわずかな酸味を感じられるノンアルコール飲料だ。実は車両のトランスミッションの製造で知られるアイシンの技術が使用されているという。なぜ長峰製茶とアイシンはタッグを組んで新たな飲料の製造に取り組んだのか。さっそく現地で話を聞いてきた。
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新感覚のスパークリングティーbodhi(ボーディー)誕生

長峰製茶の多々良氏、池田園の池田氏、安間製茶の安間氏ら3名による「菩提酸茶」開発で生み出された新感覚のスパークリングティー「bodhi(ボーディー)」。写真は新技術を取り入れさらに進化を遂げた9(nava)(ナヴァ)。写真はアイシン提供。
ドライブの主たる目的として、リゾート地の景色の良いレストランでの食事、というのは鉄板だろう。しかし問題となるのは、ドライバーはアルコールの飲料が飲めないということだ。カジュアルなレストランであればソフトドリンクでも良いし、最近はノンアルコールのビールはたいてい用意されているからそれを飲めば良いが、ちょっとしゃれたフレンチやイタリアンのレストランであればビールというわけにはいかないだろう。食事とのペアリングとしてはスパークリングワインやワインがほしいところ。
高級フレンチやイタリアンでどうしてもノンアルコールということであれば、ペリエやサンペレグリノといったスパークリングウォーターを選ぶのが一般的ではないだろうか。もちろんノンアルコールのワインというものも存在するが、置いてある店は限定的だし、値段の割に満足度はあまり高くないものが多いように感じる。和食の場合はお茶のみになってしまうのが一般的だろう。
このような状況の中、食事とのペアリングという意味で大本命になるポテンシャルを感じる飲料を見つけた。静岡県焼津市にある長峰製茶が開発した、bodhi(ボーディー)である。製茶会社が開発したとあって、ベースとなっているのはお茶だ。カテゴリーとしてはスパークリングティーということになるが、これはお茶という概念から全く逸脱した味わいと香りを持った製品だといえる。
柑橘系の爽やかな香りとすっきりした酸味を感じさせる味わいで、他のどの飲料とも違った味わいなのである。お酒を飲んでいるという気分はノンアルコールのビールやワインを上回り、脂っこい肉料理などの口直しにはワインと同様の効果があるように感じられた。

カナッペ(クリームチーズを使用した和風カナッペ)やダークチョコレート、クランベリーガナッシュ、カマンベールチーズなど、本来はワインと好相性なメニューとのペアリングをおすすめしている。写真はアイシン提供。
このbodhiの正体は一体何か。長峰製茶の多々良高行氏と茶葉を育成する池田園の池田佳正氏と安間製茶の安間孝介氏に話を伺った。一般的に茶を発酵させたものが紅茶といわれているが、紅茶は酵素の作用によって酸化したもので厳密には発酵ではないそうだ。
微生物による本来の発酵をさせた茶を後発酵茶と呼び、日本でも極めて限定的ではあるが長い伝統があるという。その中で注目したのが四国を中心に作られている乳酸発酵茶で、酸味のある独特の味わいがある。

発酵中の茶葉は葉と茎がやわらかくなると同時に茶の香りも色濃くなる。
乳酸発酵茶は中国雲南省やタイ、ミャンマーなどアジアの一部地域に見られる伝統的なお茶で、中国雲南省の竹筒酸茶もその代表例である。一般的に植物を乳酸発酵させるためには塩を加える必要があり(代表的なものは漬物)、塩がないと腐敗してしまうのだが、お茶にはカテキンが含まれるため塩を加えなくても腐敗しないのだそうだ。
2019年に静岡でも実験としてその生産にチャレンジしたのがはじまりだという。四国の伝統製法を参考にしつつも最新の技術や手法を取り入れて改良していった結果、非常にクリアで酸味のあるお茶ができたという。これを菩提酸茶と呼び発売したのだ。
さらに、従来のお茶にはない特長のある香りや味のあるこの菩提酸茶の新しい活用法についても検討が始まった。そのプロセスの中、ワイン製造会社の人に試飲してもらったところ、炭酸を加えればスパークリングワインのような味わいになるのではと提案されたという。そこで炭酸を加えてみたところ、ワイングラスに注いで香りを嗅ぐと爽やかな香りが立ち、お茶として飲む場合とは異なる独特の味わいのものとなったのだ。
茶葉の生産がまだ限定的で、発酵プロセス、乾燥プロセスにも手間がかかるため少量ながら現在通販で販売されている。200mlで1200円と高価ではあるが、試してみる価値はあると思う。興味のある方は以下にアクセスされたい。
(https://nagamine.jp/c/gr4/10002535)
アイシンの技術「AIR(アイル)」で進化を遂げる

新技術を取り入れbodhiの味わいは進化を遂げる。アイシンのAIR(アイル)を照射するための機械を設置し、茶葉の発酵を深めている。
このようにスタートしたbodhiであるが、さらに進化することになる。ここで登場するのがお茶とは全く関わりのないように思える会社、アイシンである。アイシンといえば車のトランスミッションだが、アイシンは様々な技術開発を行っている。
その一つにAIR(アイル)という技術がある。スチームの水の粒子が1000nmくらいであるのに比べ、AIRは約1.4nmという極小サイズの水粒子を放出する技術である。この技術により、いままで水分を行き渡らすことのできなかったところにまで行き渡らせることができるという。現在、髪に水分を加えるHydraidというヘアケア機器と肌に水分を与えるWINDSCELLというスキンケア機器でこの技術が使われている。AIRに関して、アイシンのAIR事業推進部の岡本祐介氏に話を伺った。
アイシンとしてもこの技術にどのような可能性があるのかがわからないので、応用範囲を広げるべく静岡大学と共同研究をしているのだそうだ。その共同研究の中でAIRが発酵を促進する効果があることがわかったという。そして静岡大学と長峰製茶との関係から、乳酸発酵茶への応用を試してみることになったのだ。そのため茶葉にAIRを照射する特別な装置が開発された。

装置内に入れられた茶葉。蓋をしてじっくりとAIRを照射していく。
そしてAIRを8時間照射することで、発酵が促されるだけでなく茶葉が柔らかくなる効果も確認できたという。この効果により、通常のものより堅いオーガニック栽培の茶葉も使いやすくなった。海外ではオーガニック栽培の茶葉が好まれるので、bodhiの海外展開も可能性がでてきたということだ。AIRは日本酒もまろやかにする効果があることが確認されており、これからの展開が楽しみな技術である。
このAIR照射した茶葉を使ったbodhiだが、照射してないものよりさらに香り高くクリアとなり、より洗練された味になった。これをbodhi 9(nava)(ボーディーナヴァ)と名付けて、マクアケで100本限定にて販売したところ瞬く間に売り切れたという。

瓶詰されたばかりのbodhi 9。今後はAIR照射した9(nava)のみ製造するという。
現状では、AIR照射をはじめとした製造工程の兼ね合いで大量生産はできず、次回発売は2025年秋になるという。
海外でも試飲の結果好評を博しているそうで、大規模生産には時間がかかるかもしれないが非常に楽しみな飲料が誕生したことは確かだろう。bodhi 9(nava)に注目である。
INFORMATION
【長峰製茶】
〒425-0054
静岡県焼津市一色45
TEL:0120-00-4714
https://nagamine.jp/
【直売店舗】
〒425-0064
静岡県焼津市三和60
TEL:054-625-1251
営業時間:9:30-18:00
KURU KURAでは、増え続ける飲酒運転による交通事故の根絶に向けた取り組みとして、「アルコール分0.00%のおいしいカーライフ」をテーマに、ドライバーも安心して楽しめるノンアルコール飲料の魅力をお届けしています。