イラストレーターいとうみゆきの クルマのおうちで埼玉一周の旅 vol.3 川の国埼玉をめぐる〜北部地域編〜
海外でのクルマ旅を綴ったエッセイが話題となり、多くのファンに支持されるイラストレーター・いとうみゆきさん。ワーキングホリデーをきっかけにニュージーランドを訪れ、車中泊生活を経験したことからその魅力に取り憑かれたそう。そんないとうみゆきさんの新たな旅の様子を、連載企画としてお届けしていきます! 第1回目、2回目の記事では旅の準備編として愛車のカスタムを行いました。そして、第3回目は、いよいよ埼玉一周の旅がスタート。いとうさんが現在住んでいる埼玉県を5つの地域に区切り、テーマを設けて巡っていきます。「川の国埼玉」をテーマに、埼玉県の北部地域へ出発!!
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目次
④⑤上里町〜地元の食材でつくるオリジナルサンドイッチ〜
小腹が満たされたので、白くまに戻ってドライブ再開です。両窓をあけて、風いっぱいとりこんで、まだ青緑色の小麦畑のあいだを走ります。青くて広い空、風にさらさら揺れる小麦の葉。とってもいい気分です。
気持ちのいい景色と風に触れながら、上里町に入りました。調べてみたところ、種子小麦がこの町の特産品だそう。少し町のなかをうろうろして、地元産小麦を使った食パンと、農家さんの新鮮野菜を手に入れました。野菜の入手先は、「石井農園」の入り口にあった野菜の自動販売機。
無人販売所はよく見かけますが、自動販売機(コインロッカー?)を見たのははじめてです。有機野菜の詰め合わせを購入しました。やった〜。
手に入れた食材を白くまに持ち帰り、持っている材料と組み合わせたら……あっという間に上里町のサンドイッチの完成!

こうやって地元のものを食べられるのは、その場所にいるときならではの贅沢。しかも白くまには調味料や食材を載せているので、気軽にぱぱっとおいしいものを作れちゃうんです。
荷物をいっぱい持てるクルマ旅ならではの、自分だけがちょっとたのしいお昼ご飯。さっそく河川敷に行って、ちょっとしたピクニックです。
⑥美里町〜川のほとりの共同作業場〜
午後は、さらに川のことを知るべく歴史博物館「遺跡の森館」へ。ここでハニワの見学をしていたところ、川にまつわる場所「さらし井」というスポットを発見しました。
奈良時代の女性たちはその湧水の井戸に集まって布をさらす作業をし、洗った織布を朝廷に献納したそうです。ここは万葉集巻九にでてくる恋歌の発祥の地ともいわれています。

そういえば「かわはく」でも、昔の人たちが川の水をくんだり、河原で野菜や衣服を洗っている映像がありました。昔の人たちにとって、川は生活の中心だったんだろうなあ。「川を見て川を感じ、共に生きていく」という言葉が印象的でした。
今日だって、運転をしているとすぐに川を見つけることができています。とくに意識していなくても、気付くと橋を通っていたり、小川があったり……ちょっとの緑と水のきらきらがあるだけで、町のドライブも楽しくなるから不思議だよなあ。
住所:〒367-0112 埼玉県児玉郡美里町大字木部574番地
営業時間:9:00〜21:30 ※展示室の見学は、9:00〜17:00
定休日:月曜日(祝日・振替休日にあたるときは、その翌日)年末年始(12月28日~1月4日)その他臨時に休館あり
電話:0495-76-0204
駐車場あり
⑦神川町〜川の源流で見つけたすばらしい石〜
川にまつわる歴史や文化を知り、さらに川の魅力を求めてディープスポットへ。荒川の源流を辿り、奥地へ進むと、どんどん山が険しくなっていきます。
勾配のきつい道になるたびに白くまから頑張っている音が聞こえて、ちょっとどきどきしてしまう……。
こんなところ、クルマがなかったら来るのは大変だっただろうなあ。クルマがあると自分のペースでちょっと気になったところに行けるから、旅がしやすいものです。下久保ダム近くの駐車場に白くまを止めて、歩くこと数十分。「三波石峡」にやってきました。

橋の上から見えるのは、淡い水色の神流川と細いすじが美しい三波石。真上に建設されたダムにより荒廃してしまったという過去があるそうですが、現在は美しさを徐々に取り戻しているそうです。
下に降りると、美しい川の流れとたくさんの美しい石を間近に見ることができます。そのなかでも「三波四十八石」といわれる48個の巨岩・奇岩にはそれぞれ名前がつけられているそうです。

ちいさくて綺麗な石もたくさん。でもこの石、天然記念物なので持って帰るのは禁止です! いい石を見つけるたびに手がつい伸びてしまうのですが、先人たちにならって積み石をするだけに留めておきました。

……っていうかここ群馬県だ。(神流川は埼玉県と群馬県の県境になっていて、橋を渡って下に降りると群馬県になってしまいます)
⑧本庄町〜一日の終わりは川沿いでキャンプ〜
旅の終着地点は「おしごとマウンテン33 本庄キャンプ場」へ。


今は使われていないセメント工場がまるっとキャンプサイトになっているという、ちょっと面白いキャンプ場です。工場のなかで車中泊をしたり焚き火をするのも大丈夫なので、雨が降っても快適にキャンプができそうです。でっかくて細かい機械、高い場所にある窓や換気扇にわくわくしてしまいます。
でも今日は川の国を楽しむ日なので、施設内にある川沿いのサイトで一泊。

すぐ下を流れる小山川の音が聞こえるこの場所で、白くまと過ごすはじめてのキャンプです! 今日一日色んなところを巡ってきたので、もうくたくた。
着いたときにはすでに日は沈みかけていて、あっという間に夕方になりました。
それでもまだ一日を終わらせるわけにはいきません。昼間手に入れた地元の野菜や食材を使って、おいしいご飯で一日を終わらせたい。しかも今日は焚き火OKのキャンプ場なので、火をおこして料理をしよう!

作ったばかりの調理台を活用して食材を切って、最近手に入れた焚き火台で火をおこして……慣れない調理でちょっとばかし時間はかかりましたが、夜ご飯ができました!

今日の夜ご飯は炒飯、玉ねぎ焼き、セリの煮浸し。それからおやつにポッキーを少々。
焚き火をするときにいつも作りたくなるのが炒飯です。前日のご飯でもレトルトご飯でも、直火で作れば絶品になるからやめられない。ときどき、ふわっと香るチーズが隠し味です。

まわりになにもないこのキャンプ場だから、夜になると星がよく見えます。
バックドアのふちに座れば、縁側での夜ご飯のよう。
遊びまわった身体に夜風と炒飯が身に染みる、贅沢な夜ご飯です。
煙まみれの身体をシャワーでさっぱりさせて、寝る支度を整えたらさっさと白くまとベッドにもぐりこみます。

今日は一日いっぱい活動して、自分のなかの社交性と野外性を使い切ってしまいました。これでテントで一泊……ってなってたら翌日まで疲れが残るタイプの私にとって、一日の終わりに一番落ち着く自分の部屋でだらだらできるのは本当にうれしいこと。
気ままにいろいろな場所に行けるのも、落ち着く部屋でのんびりできるのも、クルマのおうちのおかげだなあ。iPadでちょこっと映画でも観ようかな、と思ったけど、あっという間に睡魔がやってきたので今日はおしまい。
窓を少しだけ開けると、春の夜のにおいとやさしい川の音がした。
静かな外から聞こえる音がとっても心地良い夜だったなあ。
T’S Resort おしごとマウンテン33 本庄キャンプ場
住所:〒367-0253 埼玉県本庄市児玉町河内562-1
営業時間:チェックイン13:00~17:00、チェックアウト11:00
定休日:なし
電話:080-5090-2276
Twitter @horsefield888
駐車場あり
※プラント内にフリーWi-Fi設置しました
※この記事は、カエライフに2022年6月14日に掲載されたものです。施設によって営業時間の変更や休業の可能性があります。おでかけの際には公式HPでご確認ください。また、事前にお住まいの地域やお出かけ先の情報を確認し、ご計画をお願いいたします。
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