意外に多い高速道路での「逆走」は、なぜ発生する? 注意点は?
NEXCO東日本の統計によると、高速道路での逆走事故は2日に1回の頻度で発生しています。死亡事故につながることもある極めて危険な行為ですが、いったいなぜ逆走は発生してしまうのでしょうか。またどのような注意が必要なのでしょうか。
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そもそも高速道路はなぜ一方通行?

高速道路の逆走事案は多く、標識が設置されるほどだ。
記事の画像ギャラリーを見るNEXCO東日本の統計によれば、高速道路での逆走事故は2日に1回の頻度で発生しています。また、警察庁が公表する「逆走防止に関するリーフレット」には、逆走事故において死に至る確率は、高速道路での事故全体に比べて約15倍に及ぶと記載されています。
高速道路のような一方通行の道路に逆から侵入する行為は、クルマ同士が正面衝突する危険性が非常に高く危険です。そのため、ドライバーは道路標識を十分に確認し、走行可能かどうか判断する必要があります。
では、そもそも高速道路はなぜ一方通行なのでしょうか。
警察庁が定めた交通規制基準において、一方通行の目的は「車両の相互通行に伴う複雑、危険な交通状態を単純化して交通容量を増大させ、交通の安全と円滑を図る」ためとされています。
つまり、一方通行の道路には対向車との衝突リスクの排除や、渋滞の緩和などの目的があるということです。
さらに、高速道路は一般道に比べて高速域(速度指定の無い区間では時速50km〜100km)での走行が前提となります。そのため、もし対向車との衝突事故が発生した場合は一般道よりも重大な事故につながるリスクが高くなります。
また、国土交通省が公表する「令和3年度 交通量整理表」によれば、高速道路の交通量は2021年時点で1日あたり750万台を超え、走行の円滑化は不可欠です。そのために一方通行が導入され、高速かつ円滑な走行を可能にしているというわけです。
高速道路で逆走が発生する原因

インターチェンジは逆走が発生しやすいポイント。
国土交通省が2023年に公表した資料「高速道路の逆走発生状況について」によれば、高速道路で逆走が発生する主な原因は「道間違い」で、全体の約5割を占めています。
特に、一般道路から高速道路の出口に誤進入するケースのほか、SAやPAから退出する際に入口側から出てしまうケース、ICや料金所で標識確認を怠り誤進入してしまうケースが多く見られます。さらに、カーナビの案内を誤って認識し、分岐部で進行方向を間違えてしまうことも逆走の一因となっています。
他にも目的地の出口を通過してしまい、元のルートに戻ろうとUターンして故意に逆走する事例も約2割存在します。
逆走するドライバーの多くは高齢者

年間で200件ほど発生している逆走事案のうち、7割ほどが高齢ドライバーにより引き起こされている。
また、前述の資料「高速道路の逆走発生状況について」によると、年間で200件ほど発生している逆走事案のうち、7割ほどが高齢ドライバーにより引き起こされたものであることが明らかになっています。
高齢ドライバーは、若年ドライバーに比べて判断力の低下が指摘されています。これは認知症によるものとされており、実際2015年〜2023年までに発生した1900件ほどの逆走事案のうち、逆走している認識がないまま走行していた高齢ドライバーは16.5%。さらに、高速道路を走行していることについても認識していなかった高齢ドライバーは、38.3%にも及んでいます。
高齢ドライバーは、定期的に自身の運転能力を見直し、必要に応じて運転を控えるという判断も下すべきでしょう。そのためには、家族や周囲の人々による高齢者の運転のサポートや助言も重要です。
ちなみに、NEXCO東日本で推奨されている判断力を測る方法として、「スマヌ法」があります。これは、背中にカタカナの「ス」「マ」「ヌ」の3文字のどれかを指で書き、どの文字が書かれたかを答えるというもの。書く文字をランダムに変えて計6回実施し、6回中3回以上間違える場合は皮膚感覚をキャッチする脳の力が衰えていることがわかるようです。
必ずしも逆走に関係するものではありませんが、判断力を測る簡単な指標として取り入れてみてもいいのではないでしょうか。
逆走を防ぐための対策

警戒色を用いて気づきやすいように。
高速道路での逆走を防ぐために、道路事業者も道路標識や路面表示を強化したり、合流部分にラバーポールを設置したりして対策をしています。
一方で運転者は、標識や路面表示を注意深く確認し、適切なルートを選択することが求められます。
先ほども述べたように、分岐部やSA・PAなどでは、入口と出口を間違えやすいため、進行方向を再確認して誤った進入を防ぐ意識を持つことが重要です。
また、最新の地図情報を備えたカーナビを使用し、逆走の危険がある場所で警告を受けるなど、適切なルート案内を活用して安全運転に努めましょう。さらに、運転前に十分な休息を取ることも逆走対策になります。疲労は判断力を低下させ、重大なミスを引き起こす可能性があるためです。
逆走に遭遇した場合の対処法

逆走で大事故が発生し得る。
万が一、逆走車両に遭遇した場合は落ち着いて速度を落とし、車間距離を十分に保ちながら走行し、安全な場所に停車して自車の安全を保つことが重要です。
また、一般的に逆走車は追越車線を走行しているケースが多いため、第一走行車線や路肩側へ退避することが推奨されます。周囲の交通状況を把握し、無理のない範囲で安全な位置を確保することが必要です。ハザードランプの点灯も周囲の車両への注意喚起になります。
その後、非常電話や携帯電話で通報したり、最寄りのSA・PAや料金所のスタッフへ速やかに申し出ましょう。そうすることで、逆走車がいることが情報板やハイウェイラジオで拡散され、他のドライバーへの注意喚起になります。
それでは自分自身が逆走してしまったと気づいた場合は、どのような対応を取るべきなのでしょうか。NEXCO中日本のWebサイトでは、以下のような対応が紹介されています。
1.中央分離帯が左、標識が裏側の場合、逆走の可能性があります。
2.逆走をしてしまったら、近くの安全な場所に停車し、ハザードランプを点灯してください。
3.ガードレールの外側などの安全な場所に避難してください。
4.110番や非常電話で通報してください。
自身が逆走してしまった場合は、二次災害を引き起こさないよう、できるだけ安全な場所にすみやかに停車しましょう。
このように、逆走事故はドライバーの注意と適切な対策によって、防ぐことが可能です。走行中は自車の進路の標識や他車に注意深く目を向けることはもちろん、万が一侵入してしまった場合は上述の対応を取り、自身だけでなく周囲のクルマに影響が及ばないようにすることが大切です。
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