「八王子南バイパス」完成はいつ? 開通したら何が変わる?【いま気になる道路計画】
東京から長野までつながる国道20号(甲州街道)では現在、八王子南バイパスの開通工事が行われています。開通目処はいつ頃になるのでしょうか。進捗状況や開通効果について、国土交通省相武国道事務所に取材しました。
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八王子南バイパスって何? どこにできるの?
国道20号では2025年1月現在、八王子南バイパスの工事が行われています。国道20号は別名「甲州街道」と呼ばれており、東京都中央区を起点に、東京都八王子市、神奈川県相模原市、山梨県甲府市を結んで長野県塩尻市まで続く約230kmの幹線道路です。その歴史は江戸時代から続いており、産業や経済の発展に重要な役割を果たしてきました。
しかし、八王子市や日野市中心部を通る東西方向の幹線道路が国道20号と北野街道しかないことから、利用者が集中し渋滞が発生しやすい道路にもなっています。そのため、渋滞緩和や交通事故の減少を目的に、八王子南バイパス、日野バイパス(延伸)、日野バイパス(延伸)II期の3事業(計14.9km)が推し進められています。
そのうちの八王子南バイパスは、八王子市北野町から高尾山ICまでを結ぶ9.6kmの部分。4つの工事区間に分けて事業が進められており、高尾山IC〜町田街道までの約2.6kmは平成22年に開通済みです。現在は続く町田街道〜八王子市大船町までの約2.5kmの工事が行われています。
八王子南バイパスが開通することによる効果は?
八王子南バイパスが完成したらどんな開通効果があるのでしょうか。
まず、八王子南バイパス周辺の東西軸には中央道と国道20号がありますが、中央道が事故などで通行止めになった場合、現状では多くの利用者が国道20号の方に流れてくる形となります。しかし、国道20号は八王子の中心市街地を通る道路として既に多くのクルマが行き交っていることから、こうした際に交通渋滞などの混乱を招いてしまいます。
もし、八王子南バイパスが完成すれば、こうした状況でも片方の道路に集中する交通量を減らすことができ、渋滞や混雑の緩和につながるでしょう。
さらに、八王子南バイパスによる交通ネットワーク形成の効果は混雑緩和だけではありません。新しいバイパス沿いに商業施設が建設されたり、高尾山までのアクセスが向上して旅客の訪問数が増加すれば観光振興となったり、近隣に住宅が建つことによって移住者が増加したりと地域の発展につながることが期待されます。また、圏央道へのアクセスがよくなるため、物流促進やお出かけの面での利便性向上も見込まれます。
医療面での効果も期待されています。バイパスの高尾山IC〜八王子市大船町の付近には八王子市、日野市近辺では唯一の第3次救急医療施設である「八王子医療センター」があります。八王子南バイパスが整備された場合、日野市役所を起点とした八王子医療センターまでの所要時間は24分短縮されると想定されています。これにより八王子医療センターに所要時間30分で到着できる人口は、現在の約1.5倍にあたる167万人となり、救急医療の面においても大きな貢献が期待されています。
その他に見込まれる効果としては、バスの定時性の確保があります。国道20号は朝と夕方の通勤・帰宅時間に交通量が増加しますが、その時間はバスの利用も活発になり、定刻通りの運行がなかなか難しい現状があります。バイパスが整備されることによって、「通過交通」と呼ばれる、新宿方面から山梨方面を行き来するクルマがバイパスを利用することになるため、国道20号の交通量が減ってバスの運行がスムーズになり、定刻通りの運行を行いやすくする効果も期待されています。
整備済み区間の開通による効果は?
八王子南バイパスのうち、すでに開通済みの区間(高尾山IC〜町田街道)では、どのような効果があったのでしょうか。
整備前までは町田方面から高尾山方面まで移動するには、大きく遠回りするルートでしたが、バイパスの整備によって大幅にショートカットして通行できるようになりました。整備前のルートに含まれていた町田街道入口交差点付近の交通量は、1万4500台から1万2600台へと約13%減少しています。なお、バイパスの交通量は開通直後は3500台でしたが、現在では約1万台まで増加しており、交通量が分散していることがわかります。
八王子南バイパスの工事状況は? 開通目処はいつ?
現在工事が進められている区間(町田街道〜八王子市大船町)の状況はどのようになっているのでしょうか。
工事の管理をしている国土交通省相武国道事務所に取材をしたところ、「現在、舘第二トンネルの工事や、ゆりのき台で市道を跨道橋に移行するために橋をかける工事、めじろ台グリーンヒル通りや八王子城山線を連続で繋ぐために橋をかける工事を行っているところです」と答えてくれました。
実際に高架橋工事のため、2024年末には周辺地域である「めじろ台グリーンヒル通り」「市道横山32号線」と、八王子南バイパス(国道20号)の既存開通部(八王子城山線~めじろ台グリーンヒル通り)で通行止めが行われました。
一方、舘第二トンネルの掘削工事では強度の高い頁岩(けつがん)によって作業に時間がかかるといった課題があるそうです。
これについて、相武国道事務所は「頁岩によって掘削工事の作業効率が低下してしまうことから、現状ではまだ具体的な開通の見通しが定かではございません。そのため、町田街道〜八王子市大船町の開通時期については、進捗目処がたった頃に改めてお知らせをさせていただきたいと考えております」と答えてくれました。
残る区間については、用地買収や調査設計を進めており、八王子市大船町~八王子市片倉町では用地取得が完了。八王子市片倉町~八王子市北野町では用地取得が9割まで進んでいますが、現状ではまだ工事は進められていません。
そのため、八王子南バイパス全体の開通までには、まだ期間を要するということがわかります。まずは、着実に工事が進められている町田街道〜八王子市大船町の正式な開通時期のアナウンスと開通に期待がよせられています。
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