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最終更新日:2024.10.07 公開日:2024.10.07

いま若者にもっとも売れてるクルマはどれか? 販売ランキングトップのクルマが支持を集める3つの理由。【クルマの経済学】

20代の若者がクルマを買う決め手はどこにあるのか? 新車販売ランキング上位のクルマについて調べてみると、そこには男女問わず若者に支持される理由がいくつも潜んでいた。マーケティング/ブランディングコンサルタントの山崎明氏が考察する。

文=山崎明

写真=トヨタ自動車

いま売れている国産車はどれだ?

若者に売れてる国産車は?(画像:©TK6 - stock.adobe.com)

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現在売れているクルマってどんなクルマなんだろう。日本自動車販売協会連合会が毎月車種ブランド別の販売ランキングを発表しているが、その2024年上半期(1~6月)のデータを見ると1位カローラ、2位ヤリス、3位シエンタとトヨタが上位を独占している。

ただし1位のカローラと2位のヤリスはそれぞれの車名を関した車種の合計である。つまりカローラにはカローラ(セダン)、カローラツーリング、カローラスポーツ、カローラクロス、カローラアクシオ、カローラフィールダー、GRカローラの合計であり、ヤリスはヤリス、ヤリスクロス、GRヤリスの合計である。

トヨタのホームページで月ごとのトヨタ車の売れ筋ランキングが公表されているが、これは車名別ではなく車種別である。それによると6月のトヨタ車販売ランキングは1位シエンタ、2位ルーミー、3位カローラクロス、4位アクアである。

つまり現在日本で一番売れているクルマはシエンタであることがわかる。実際、私の住む神奈川県藤沢ではものすごい数のシエンタが走っているので、実感としても納得のできるものだ。

またこのランキングはボディタイプ別、男女年代別のランキングを見ることもできる。若年層に注目して20代男性のランキングを見ると1位はカローラクロス、2位はハリアー、3位はライズ、4位はRAV4とSUVがずらりと並ぶ。なお、5位はシエンタ。20代女性は1位ライズ、2位カローラクロス、3位ルーミー、4位シエンタ、5位ハリアーである。女性でもカローラクロスやハリアーといったコンパクトとは言えないサイズのSUVが上位にランクインしている。

トヨタが毎月公表している車種別の売れ筋ランキング(データは2024年6月のもの)をもとに制作。出典元「トヨタ自動車」。

ファミリー層が中心となる30代ではミニバンが主流になるが、独身者や既婚者でも子供のいないカップルにとってはSUVが最適解なのだろう。

カローラクロスの価格帯は218.4万円から345.9万円だが、人気は最上位グレードのハイブリッドZのようで、325万円(2WDの場合)と手軽に買える金額ではないが、男女問わず若者に支持されているのだ。

なぜ若者はカローラクロスを選ぶのか

トヨタのカローラクロス。

それではカローラクロスがなぜこれほど若者に支持されているのか、考察してみたい。

売れている理由① ちょうどいいサイズ感

第一に考えられるのは人気のSUVという車型であり、かつサイズが大きすぎず小さすぎず使いやすいことだ。室内スペースも十分広いし、トランクスペースも487Lとこのボディサイズとしては非常に大きい。

一つ下のヤリスクロスではリアシートのスペースが十分とは言えないしトランクも100L近く小さくなる。ボディサイズが小さいにもかかわらず最小回転半径は5.3mとカローラクロスの5.2mより若干だが大きいという欠点もある(カローラクロスが優秀といった方が良いだろう)。一つ上のRAV4だとボディサイズが大きく、特に1850mmを越える全幅では駐車できない駐車場も少なくない。つまりカローラクラスはとても選びやすいサイズ感なのだ。

売れている理由② ハイブリット車の燃費の良さ

カローラクロスには通常のガソリンエンジン車とハイブリッド車があるが、売れているのは断然ハイブリッドのようだ。価格差は35万円だが、燃費はガソリン車の16.6km/Lに対しハイブリッドは26.4km/Lと圧倒的にハイブリッドの方が優れている。

ガソリン1Lを170円、燃費をカタログスペック通りとした場合、この35万円の差を埋めるには9.2万kmほど走らないと元を取れないのだが、ハイブリッド車は売る時のリセール価格が良く、静粛性も高いなど燃費以外のベネフィットもある。

オプション装備となるがハイブリッドであれば1500Wまで使える100V電源も装着可能で、アウトドアでの電源や災害時の非常電源にもなる。またCO2排出削減という社会的なメリットもある。

このカローラクロス・ハイブリッドのベネフィットは競合他車と比較しても際立ってくる。価格的に競合車として考えられるのはホンダヴェゼルe:HEV(ハイブリッド)、日産キックス(e-POWER)、マツダCX-30のディーゼルあたりだろうか。

ヴェゼルe:HEVはカローラクロスより若干小さいが価格は変わらず、燃費も若干だが劣る。日産キックスもサイズは若干小さいにもかかわらず価格は高く、e-POWERはそのシステム上トヨタハイブリッドシステムより燃費が悪くなってしまう(特に高速走行時の差が大きい)。CX-30ディーゼルは高速では燃費が伸び、燃料が安価な軽油のため燃料代は良い勝負となるだろうが、街中での燃費はトヨタのハイブリッドには遠く及ばないはずだ。

そしてこの3車はどれもオプションでも100V電源は付けられず、アウトドアレジャーを考えると少々不便だ。

売れている理由③ 絶妙なスタイリング

そして最後に私が考えるカローラクロス人気の最大の理由はスタイリングだ。

スタイリングはあくまで個人の好みで、私個人としてはCX-30の方が好みだったりするが、客観的に見るとCX-30は都会的に洗練されすぎてSUVらしい力強さに欠けているとも言え、好みが分かれるかもしれない。

カローラクロスはCX-30やハリアーにも通じる都会的なスタイリッシュさと、RAV4にも通じるラギッドさも兼ね備えた絶妙なデザインだと思う。一方RAV4はラギッド過ぎて好みが分かれるかもしれない。

売れない理由を見つけるのが難しい

カローラクロス最上級グレードの「Z」。

おそらく40代以上の世代からすると「カローラ」という車名からは安っぽさを感じてしまうと思うが、現車は全く安っぽさを感じさせず、特にハイブリッドの上級グレードの窓枠に装備されるメッキモールはドイツプレミアムブランドにも通じる高級感を演出している。Zグレードのホイールも質感の高いものだ。逆にハイブリッドで325万円、ガソリン版なら290万円というZグレードの価格は非常にお買い得に感じられる。

使いやすいサイズ、優れた燃費、魅力的なデザイン、優れたコストパフォーマンスとカローラクロスは売れない理由を見つけるのが難しいほどの商品力を持った車なのだ。20代の若者だけでなく30代男性でトヨタモデル中3位、40代/50代で2位、60代以上で4位とすべての年代でまんべんなく支持され、女性でもすべての年代でベスト5入りを果たしているのも頷ける。

男女すべての年代でベスト5入りを果たしているモデルはシエンタとカローラクロスのみで、相対的に若者の支持率が高いモデルがカローラクロスなのである。

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