あおり運転は減ったのか? 2023年の取締りデータからみる傾向
ドライブレコーダーなどの記録映像による運転の様子がたびたび報道されているが、あおり運転の検挙数はここ数年でどのように増減しているのだろうか? 警察庁が発表している道路交通法違反取締り状況のデータを見ながら傾向を探る。
検挙数は昨年比で増加も、複雑な心境
2019年の6月に妨害運転(あおり運転)に対する罰則が強化されたことで、急ブレーキ禁止違反や車間距離不保持等の違反を行うことは、厳正な取締まり対象となり、最大で懲役3年の刑に処せられる決まりとなっている。それから4年以上の月日が経過しているが、現在もあおり運転関係の報道は多いように感じる。実際はどのような傾向にあるのだろうか?
警察庁は、3月7日に2023年中の交通死亡事故や道路交通法違反取締りについての統計を発表している。この統計データの中では、高速道路における道路交通法違反の取締り状況が記載されているので、今回は「車間距離不保持」という項目に注目し、あおり運転の傾向を確認していきたい。
「車間距離不保持」は、前方車両に対して後方車両が適切な車間距離を保持しておらず、前方車両が急停車した際に追突する可能性があると違反と見なされるあおり運転行為のひとつだ。この項目について警察庁のデータを過去数年分まとめてみると、次の結果になった。
2016年→6690件
2017年→6139件
2018年→1万1793件(取締り強化)
2019年→1万3787件
2020年→1万1523件(厳罰化)
2021年→7422件
2022年→5213件
2023年→5527件
車間距離不保持による検挙数はこのように推移している。あおり運転の周知とともに取締りが強化された2018~2019年は、それ以前の検挙数から倍近く増加。厳罰化された2020年からはコロナ禍の影響もあったのだろう、3年連続で大きく減少し続けていた。この流れで2023年はどうなるかと思っていたが、結果は2022年と比べて314件増(前年比増減率+6%)となっている。
この数値はあくまで高速道路上での車間距離不保持における取締りの結果なので、あおり運転全体の傾向を知る判断材料にはならない。ただ、筆者個人の肌感覚としては、運転時にもたしかにあおり運転に近い行為をする人を目撃することがあるので、この検挙数の微増は妥当のようにも感じる。
しかし、あおり運転の罰則は最低でも免許取り消しという罰則があるうえに、ドライブレコーダーの普及は多くの人が認知しているハズだが、それでも検挙数が減らなかったということは、それだけ「危険性帯有者」が一定数はいるということだろう。
危険性帯有者は想像以上に多い?
危険性帯有者は「運転することで著しく交通の危険を生じさせるおそれがあるドライバー」を指し、主に薬物依存・覚せい剤使用者などに適用される処分だが、取締り強化の際に、自己制御ができない人たちも薬物依存者と同等の危険運転者と扱われることになった。
すぐにカッとなる人は自制ができないため、抑止力として期待できる録画行為も、彼らにとっては火に油を注ぐ結果になりかねない。このような人たちは、どれだけ厳罰化されようが関係ないのだろう。
私たちにできることといえば、ドライブレコーダーの搭載は大前提とし、迷惑・危険行為をされた場合は、対抗的な挙動は避けること。速やかに危険性帯有者から離れる努力を心掛けること。また、通報する際は決して車外に出ないこと。そして、自身も相手を不快にさせるような運転をしないよう心掛けるしかない。
あおり運転は今後、どのような対策をすればさらに減らせるのだろうか。今後もこのテーマを追い続けていきたい。
記事の画像ギャラリーを見る