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最終更新日:2024.01.22 公開日:2024.01.22

国道417号がついに開通! 事業化から20年、酷道といわれた冠山峠道路とは?

2023年11月19日、岐阜県と福井県の県境を結ぶ「冠山峠道路(かんむりやまとうげどうろ)」の開通に自治体や居住者は沸き立った。国道417号の冠山峠付近は通行不能区間となっており、代替路の林道も冬期は通行止めになることから「酷道」と言われ続けていた。地元の悲願といえる冠山峠道路の開通。一体、どんな道路ができたのか?

文=KURU KURA編集部

資料=福井河川国道事務所

「分断国道」だった国道417号

国道には通行不能区間のある「分断国道」あるいは「点線国道」(地図等において、分断区間が点線で表記されることがあるため)がある。国道の通行不能の区間は、当然ながら他の路線に迂回しなければならない。また、最短の迂回路は幅員の狭い林道だったりすることもあり、不便をともなうことから「酷道」と呼ばれたりする。

紫の線が国道417号。点線の箇所は車両で通行できない。(画像:福井河川国道事務所の資料をもとに作成)

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岐阜県と福井県を結ぶ国道417号もまた分断国道であり、酷道として知られた道であった。

国道417号は、岐阜県大垣市を起点とし、福井県の山間部を経て福井県南越前町に至るのだが、県境の冠山峠(かんむりやまとうげ)の付近が通行不能であった。代替路として林道(塚線・冠山線)があるものの、幹線道路の代替路としては過酷な状況であった。どのくらい過酷なのか、以下にみていこう。

【酷道ポイント①】狭隘・急カーブ・急勾配

国道147号の代替路の林道での事故や損壊の様子。(画像:福井河川国道事務所の資料をもとに作成)

国道417号の代替路となっている林道は、狭くつづらおりのヘアピンカーブが続き、激しいアップダウンが連続する道で、大型車両の脱輪など、交通事故や障害も発生していた。福井河川国道事務所の資料によると、林道の急カーブは19.4km内に73箇所あるという。

【酷道ポイント②】年間5割超の確率で通行止め

国道147号の代替路の林道は通行止めが多い。(画像:福井河川国道事務所の資料をもとに作成)

さらに、林道は冬期と悪天候時には全面通行止めとなる(連続雨量80mmで通行止め)。

年間(2021年)の通行可能日は157日(全体の43%)、冬期通行止めは208日(全体の57%)、年間208日通行止めとなっており、1年間では、通れる日より通れない日が上回っていた。

【酷道ポイント③】林道を通り抜けるのに2時間半かかる

岐阜県揖斐川町-福井県池田町間の所要時間を比較。(画像:福井河川国道事務所の資料をもとに作成)

また、過酷な条件のため、時間がかかるという問題もあった。岐阜県の揖斐川町-福井県の池田町間は、高速道路(北陸道・名神)を経路すれば約2時間15分(約150km)で移動できるのに対し、この林道を通り抜けるだけで約2時間35分(約80km)かかるという(福井河川国道事務所の資料による)。

また、携帯の電波も不通になりがちともいわれ、ドライバーにとっては不安の多い道で、地元では20年以上前から通行不能区間の早期整備推進を望む声があがっていた。

冠山峠道路は順調に整備を進め……事業化20年で開通

国道147号の点線を埋める冠山峠道路。ふたつのトンネルと複数の橋梁を設ける。(画像:福井河川国道事務所の資料をもとに作成)

このため、国道417号の通行不能区間にトンネルを貫通させる「冠山峠道路」の事業が推進されてきた。

起点は岐阜県揖斐郡揖斐川町塚奥山、終点は福井県今立郡池田町田代、延長は7.8km。そのうち、塚宮ケ原トンネル(延長1.2km)、冠山トンネル(延長4.8km)など大部分がトンネルで、複数の橋梁でつなぐ道だ。林道よりも距離が11.8km短縮され、幅は広く、急カーブや急勾配も解消され、冬期通行規制もなく通年で利用できる、期待の国道である。

その冠山峠道路が、20年の歳月をかけ2023年11月19日に開通した。

冠山峠道路の冠山トンネル。(画像:福井河川国道事務所)

しかし、なぜ国道417号の冠山峠道路は事業化から開通までこれほどの歳月を要したのだろうか。トンネルの掘削中にトラブルでも生じたか、それとも、何らかの事情で経路の変更を余儀なくされたか。福井河川国道事務所に問い合わせたところ「道路の整備は予定の通りで、順調に進められた」とのこと。

まず、冠山峠道路は地形の条件が厳しく、高度な技術を要する区間であること。その地形ゆえ、工事用の道路を設けられなかったことがあげられる。

岐阜県側には塚宮ヶ原トンネル、福井県側には冠山トンネルを掘り進めるのに、塚宮ケ原トンネルは岐阜県側から、冠山トンネルは福井県側から、一方向で掘削しなければならなかった。基本的には、トンネルは両端から掘り進めて貫通させるのだが、トンネルの反対側に車両や機材を移送できなかったためだ。また、同じ理由から、掘削中のトンネルを迂回して、途中の橋梁や道路の設置を同時並行で進めることもできなかったという。

何より、冬期間(おおむね12月から5月まで)は工事を停止しなければならず、厳しい工事であったため、当初より時間がかかることは想定されていたという。

祝・冠山峠道路開通! 地域の発展に期待高まる

国道417号の冠山峠道路は開通した。(画像:福井河川国道事務所)

自治体や居住者の悲願といえる冠山峠道路の開通で、岐阜県の揖斐川町と福井県の池田町の往来も時間が短縮された。

岐阜県揖斐川町~福井県池田町の所要時間。(画像:福井河川国道事務所)

岐阜県の揖斐川町から福井県の池田町まで、北陸道・名神高速を利用するルートでは所要時間は約2時間15分(移動距離151km)。これが、冠山峠道路を利用すると所要時間は約1時間25分(移動距離65km)で移動できるようになった。

また北陸自動車道の通行止めの際には、この国道417号冠山峠道路がバックアップ路線となり、岐阜-福井間の往来を支えることができる。

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