SA・PAの駐車マスが足りない? 「短時間限定駐車マス」の実証実験で大型車の駐車環境を改善せよ!
NEXCO東日本・中日本・西日本の3社は、高速道路のSA・PAにおいて駐車ができず出ていく大型車が多いことから、「短時間限定駐車マス」を実験的に整備することを発表。2023年秋から全国11施設で順次検証を始めていく。
なぜ短時間限定駐車マスが必要なのか?
物流が活発化している現在において、全国の大型車の高速道路利用台数は2005年から2020年までの15年間で、約15万台も増加しており、休憩施設であるSA・PAの大型車駐車マスが不足している。そこでNEXCO3社は、2018年度からSA・PAの駐車マスの拡充・レイアウト変更を進め、これまで約3000台分の大型車用の駐車マスを増設し、2023年度も約600台分の駐車マスを追加する予定だ。
しかし、都心に近いSA・PAでは8時間以上の長時間駐車車両の割合は現在も高く、駐車マスがすべて埋まっていることもザラだ。そのため、後から立ち寄った大型車が駐車できずにSA・PAを出ていくケースも多く、本来の休憩機会を逸しているドライバーが大勢いると考えられている。
そのような課題を解決するため、NEXCO3社では「短時間限定駐車マス」整備による実証実験を、今秋から全国11施設でスタートする。この短時間限定駐車マスは、既存の駐車マスの一部を再整備し、新たに駐車時間を60分以内に制限した駐車マスを設けるものだ。
この実証実験により、多くの大型車が確実に駐車できる機会を確保し、休憩機会の変化や、周辺休憩施設を含めた混雑状況、効果的な整備位置などを検証していくという。
駐車マスはどれくらい足りていない?
独立行政法人“日本高速道路保有・債務返済機構”が2022年度に発表した「高速道路SA・PAにおける利便性向上の方向性」の中間まとめによると、高速道路のSA・PAは全国で852か所整備されている。その中で、大型車は平日で全体の約5~7割の施設で駐車マスが不足、休日で約1~2割が不足、普通車は平日・休日ともに1~2割の施設で駐車マスが不足している。
そして大型車の場合、およそ17~19時ころから長時間駐車が全国的に増加する傾向にあり、翌朝6~8時にかけて減少するまで駐車マスが飽和状態となり、駐車マスがない場所に駐車されてしまう施設がいくつもある。さらに、8時間以上駐車する大型車の台数は10%程度であるものの、時間占有率が60%を超える施設が全国的に見られ、次のドライバーが駐車できない事例が後を絶たない。
長距離を運転して疲労が溜まった状態では長時間の休憩が必要だが、後から休憩しようと施設に立ち寄ったドライバーが駐車できないというのは不憫でならない。「物流の2024年問題」が目前に迫っているいま、自動車運送事業者の負担を軽減できる、あらゆる施策を実施していく必要がある。
実証実験はどこで行われる?
短時間限定駐車マスは、休憩施設内に看板を設置して案内され、駐車マスには路面標示が施される。看板には「P60分」のマークと「大型車短時間P」の文字が、路面標示では黄色の駐車枠線に白文字で「短時間」と、大型トラックのアイコンが駐車マスの前後に設置される予定だ。
NEXCO3社では、短時間限定駐車マスの利用者は60分以内の出発を、それ以上の駐車を予定している人は、通常の大型車駐車マスを利用するよう呼び掛けている。また、同社では今後、実証実験の状況次第で、監視体制や駐車時間を判定するための画像処理技術など、必要に応じた対策も検討していくという。
短時間限定駐車マスの整備による実証実験は下記11か所のSAにて実施される。
・NEXCO東日本管内:東北道 蓮田SA(上り)、上河内SA(上り)、安達太良SA(下り)、国見SA(下り)
・NEXCO中日本管内:東名高速 足柄SA(上り)
・NEXCO西日本管内:山陽道 福山SA(下り)、吉備SA(上り)、龍野西SA(上下)/九州道 古賀SA(下り)/中国道 美東SA(下り)
また、上記以外にも実施箇所を拡大する可能性も視野に入れているとのことだ。
今回の「短時間限定駐車マスの整備」による実証実験は、「高速道路SA・PA における利便性向上に関する検討会」で、まとめられた対策のひとつだ。駐車マスの増設によって、大型車がSA・PAに立ち寄っても駐車できないという状況をどれだけ緩和できるか、その効果に期待したい。
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