横断歩道のデザイン、どこまで知ってる? 初期のチェッカー柄から現代的な立体デザインを紹介!
現在、日本の横断歩道はゼブラ模様(縞模様)のデザインに定着しているが、今からおよそ60年前はチェッカー柄であったことはご存じだろうか。日本の横断歩道のデザインの変遷や、ここ最近で登場している不思議なデザインの横断歩道を紹介する。
よりシンプルに。日本の横断歩道デザインの変遷
日本では1955~1965年頃(昭和30~40年代)に乗用車の普及が進み、1955~1974年(昭和30~49年)では車両の保有台数は約20倍に膨れ上がっている。しかし、その一方で児童を含む歩行者の交通事故が増加したことが問題となり、1959年(昭和34年)から小学校の通学路上に“緑のおばさん”と呼ばれる学童擁護員が立ち、通学する子どもたちを見守るようになった。この頃の横断歩道は、ただ側線(縦線)が引かれただけのものや、“わたるみち”と描かれた横断歩道など、デザインや名称も統一されていなかったという。
法律で横断歩道の表示が定められたのは1960年(昭和35年)のことで、ゼブラ模様が交互に配置されたチェッカー柄もこの時期に登場している。そして1965年(昭和40年)から、私たちが見慣れた側線付きのハシゴ型が使われるようになった。
さらに1992年(平成4年)になると、側線を省いたゼブラ模様の「国際的横断歩道側線」が採用され、現在もこのデザインが主流となっている。ハシゴ型では白線内に雨水が溜まりやすいなどの問題もあったが、側線を省いたことでこれを解消し、設置時間や材料費の削減、ドライバーからの視認性の向上などにもつながっている。
現代らしい、遊び心あふれる横断歩道とは?
前述の通り、側線を省いたゼブラ模様が現代の横断歩道の主流デザインではあるが、他にもさまざまな効果や遊び心を取り入れた横断歩道が存在する。
過去に環状交差点(ラウンドアバウト)を紹介した記事でも触れたことがあるが、道路標示物や構造物の中には、本来の交通整理の役割に加えて、地域性の演出を遊び心に加えるケースもある。例えばポーランドの首都ワルシャワはショパンの街としても知られており、文化科学宮殿前にある横断歩道はピアノの鍵盤を模したデザインとなっている。ちなみに日本でも、静岡県浜松市にあるヤマハ本社の敷地内にもピアノの鍵盤柄の横断歩道があるという。
他の例では、インド政府は交差点に進入してくる自動車の速度を落としてもらうため、事故が多い交差点の横断歩道に角度を付けて影も描くことで、ドライバーから見ると横断歩道が立体的に浮いているように錯覚させ、走行中のクルマを減速させる工夫をしている。
このアイデアは注目を集め、日本をはじめ他の国でも採用している地域があるが、地域によっては自動車の走行速度を下げる目的のはずが、トリックアートとしての側面の方が面白がられるようになり、SNS上でも歩行者が白線から落ちないようにポーズをとっている写真が溢れている。こうなってしまうと安全面では逆効果となってしまうので、今後普及するかは分からない。
これぞ次世代型? 無意識に作用する横断歩道
立体的といえば、日本には視覚的ではなく、物理的に立体的な横断歩道も存在している。神奈川県藤沢市にある「スムーズ横断歩道(またはスムース横断歩道)」は、進入速度の高い生活道路に設置され、横断歩道が車道より高い位置にあり、幹線道路と横断歩道の手前に傾斜があるため、クルマのドライバーはこの傾斜がある場所で無意識に減速するという仕組みだ。このハンプ構造は横断歩道や交差点などで連続して設置すれば、区間全体の速度を抑制することも可能なため、通学路などを中心に、今後増えていく可能性がある。
スムーズ横断歩道がドライバーに無意識に働きかける構造なら、歩行者に無意識に働きかける横断歩道もある。それが「二段階横断施設(または無信号2段階横断歩道など)」だ。これは、もともと横断歩道がない場所で歩行者の乱横断が繰り返され、事故につながる事例が多かったことから、宮崎県児湯郡などで設置されている横断歩道だ。
この二段階横断施設は、中央分離帯に歩行者用の待避所(交通島)を設け、信号のない横断歩道を2回に分けて横断してもらう機能を備えている。これにより、歩行者の一度に横断する距離が短くなり、横断時の安全確認も片側車線ずつで済むため、高齢者などにも優しい構造となっている。
このように、シンプルさを突き詰めたゼブラ模様の横断歩道も、さまざまな派生型が登場している。カラフルなデザインや、不思議な図形が描かれた横断歩道を見かけたら、そこにはそのデザインが採用された理由が周辺環境に隠されている可能性があるので、考察すると楽しめるだろう。
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