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最終更新日:2023.03.03 公開日:2023.03.03

Mr.ビーンやトップギアがやり放題! 英国の三輪車「リライアント・ロビン」──迷車? 珍車? 世界を驚かせた名車たち(第1回)

歴史に名を残した迷車・珍車を紹介する新連載がスタート。第1回目は、Mr.ビーンやトップギアでもお馴染み!? の3輪車「リライアント・ロビン」 を紹介。モータージャーナリストの武田公実が解説する。

文=武田公実

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 世に名車といわれるクルマは数あれど、ひらがな発音は同じだが意味はまったく逆の「迷車」ないしは「珍車」といわれるクルマたちも、130年以上におよぶ自動車史においては少なからず存在している。

 でも迷車・珍車と呼ばれるクルマには、不思議な魅力があるのも事実。それぞれにコアなファンがいたりもするようだ。

 そこでくるくらでは、歴史に名を残した迷車・珍車を紹介するコーナーを企画。今回ご紹介するのは、英国のカルトスター的三輪車「リライアント・ロビン」とそのファミリーたちである。

驚くほどに長命だった愛すべき三輪車

スペースシャトル!? いいえ、リライアント・ロビン(トップギア仕様の)です。

 いかに博識な「くるくら」読者諸賢とて、この小さな3輪自動車をご存知の向きは少ないかもしれない。

 もしもなにか連想するものがあるとすれば、英国の大ヒットコメディ「Mr.ビーン」にて、ローワン・アトキンソン卿のふんする主人公の乗るミニに煽られて毎度毎度の横転劇を演じる「やられキャラ」としてのクルマ。

あるいは、英国BBCの人気番組「Top Gear」において、なんとスペースシャトル風に魔改造されて、さらにロケットエンジンで打ち上げられてしまった(!)というコミカルな記憶に違いない。

 しかしこのリライアントは、母国イギリスにおいては格別の愛情とともに支持されてきたブランドなのだ。

 英国では免許制度や税制の優遇措置が採られていたため、第二次大戦前から3輪乗用車が大衆車、時にはスポーツカーとして確たる地位を占めていた時期がある。そんな三輪車を製造するメーカーの代表格となったのが、バーミンガム近郊のタムワースに本拠を構えるリライアント社。1935年から3輪自動車を生産・販売するかたわら、第二次世界大戦後はFRP成形の分野に乗り出し、大きな成功を収めてゆく。

 そして、三輪車とFRP成形というリライアントの得意分野を一つにまとめ、同社の成功を決定的なものとしたのが、1953年に登場した「リーガル」。および後継車として1973年秋にデビューした「ロビン」だった。

リライアント・ロビン|Reliant Robin

 リライアントが初めて手掛けたFRPボディ三輪車であるリーガルは、キャビンをフォード・アングリアやマツダ初代キャロルのような「クリフカット」スタイルとしていた。いっぽうロビンは、1960-70年代に英国で活躍した工業デザイン会社「オーグル・デザイン」のトム・カレン代表が手掛けた、可愛らしくも合理的なデザインとされながらも、実際のところ中身はほぼ同一のもの。

 ホイールベースやトレッド(もちろんリアのみ)はリーガルから若干延長されたが、ラダー型セパレートフレームのレイアウトなどは酷似しており、フロントがリーディングアーム+コイルによる独立懸架、リアは半楕円リーフで吊られたリジッドとなるサスペンションも、リーガルとロビンは事実上同じものを採用していた。

 いっぽう、シリンダーヘッド/ブロックともアルミニウム軽合金製とされるなど、基本設計が1950年代まで遡るわりには意外とモダンに感じられるエンジンは、リライアント社の自社開発による水冷直列4気筒OHV。

 リーガル時代に600ccから700ccに進化したのち、ロビンでは若干ボアを拡げた750ccを搭載。さらに75年秋以降には850ccに拡大された。こうしてリーガルからロビンへと受け継がれてきたメカニズムは、さらに1982年にデビューした「リアルト」にも継承されることになる。

ロビンのエンジンルーム。水冷直列4気筒OHVを搭載し、4速MTが組み合わされていた。

なんと21世紀まで生き残った!

 リアルトは、同時代の英国製4輪大衆車「オースティン・メトロ」を思わせるノーズや、ややスクウェアなスタイルとなったテール以外は、ロビンとほぼ同一のFRP製ボディを持つ。もちろんシャシーも、ロビンと共用。エンジンもロビンに中途採用された850ccユニットを採用する。つまりは、ロビンのビッグマイナーチェンジ版であった。

 しかしリライアント・ロビン/リアルトの凄さは、その生命力にあるといわねばなるまい。リアルト自体の生産も1998年まで続くロングセラーとなる一方で、89年にはリアルトにリアをハッチバック化した派出モデルを、再び「ロビン」名で追加。

 さらに1999年には、もともと英国内での知名度が高かったロビンに一本化されるかたわら、三度目のフェイスリフトを受けて21世紀的なデザインのノーズに進化。結局リライアント社が自動車生産を停める2002年まで生産されることになったのだ。

 実はリライアント社では、リーガル時代には「レベル」、ロビン時代にも「キトゥン」という4輪モデルも併売されてはいたものの、いずれもベースたる3輪モデルに比べると遥かに短命に終わってしまう。そのかたわら、老舗のうなぎ屋が先祖伝来のタレを継ぎ足しながら使い続けるかのごとく、リーガル以来のテクノロジーを連綿と継承してきたロビンとその係累は、21世紀まで生き残ることになった。

 自動車界の「生きる化石」と言えば、同じ英国でもモーガンを思い浮かべる向きが多いだろうが、今世紀初頭におけるリライアント・ロビンとそのファミリーもまた、立派な(?)「生きる化石」だったのである。

イギリスの郊外を軽快に走るロビンの勇姿。

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