配色が逆なだけの「一方通行」と「左折可」。似ている標識シリーズ
いつも見慣れた標識も、実は時代とともに変化しているし、新たな標識も追加されている。そして、なぜか従来のとても似たデザインの標識もあったりする。そんな、ちょっと紛らわしい標識について紹介していこう。今回は「一方通行」と「左折可」。デザインはどちらも横向きの矢印で、異なるのは青と白の配色が逆なだけ。ただし意味はまるで異なる。なぜ「左折可」が生まれたのだろうか。
白地に青か、青地に白か、、、
地が青く、白い矢印の「一方通行」は、見る機会も多いお馴染みの標識だ。では、同じデザインで、地が白く、青い矢印の標示板をご存知だろうか。決して塗り方を間違えた「一方通行」ではない。これは「左折可」の標示版で、意味は、交差点で前方の信号機が赤や黄でも、周囲の交通に注意しながらなら左折してよいというものである。
まるで兄弟のような2つの標識だが、根拠となる法律も異なる。「一方通行」は、通行止めや速度制限などと同じ「道路標識、区画線及び道路標識に関する命令」という法令で定められた道路標識のなかの規制標識にあたる。警戒標識と並んで、運転時には特に重要な標識といえるだろう。
一方「左折可」は、道路交通法施行規則で定められた標示板である。パーキングメーターの時間制限を示す「時間制限駐車区間」や、災害時に一般車両の通行を禁じる「災害対策基本法の車両通行止め」などと同じ分類の標示版だ。
渋滞解消を狙いに登場したものの、減少中の「左折可」。
では、なぜ「左折可」という標示版が生まれたのだろうか。
「左折可」が標示されている場所は、交通量が多い交差点が多い。車線が直進、右折、左折という進行方向ごとに複数存在。または交差点手前で左折レーンだけ高速道路の合流のような斜めに交差する道路へ接続しているような車線などだ。
このような交差点で、交差する道路の信号機が右折の矢印を点灯している間、左折する車は進入する道路に車が走行していないが、信号機が赤なので停止している時間が生じる。この時間に左折させることで渋滞を減らそうという意図から、1990年代から「左折可」の設置が始まった。
しかし、2000年代に入ると新設が減り、撤去されるケースも増えた。減少した理由は、「左折可」のある交差点で歩行者・自転車との事故が増加したためだ。「左折可」がある交差点では、左折車は車だけでなく歩行者や自転車などにも注意しなければならない。ところが注意を怠る車が多く、歩行者、自転車などとの接触事故が増加した。さらに「左折可」を知らずに停車していると、後続車からクラクションを鳴らされるといったトラブルも生じた。
さらに、2010年代に入って警察庁が「自転車は車道が原則、歩道は例外」としたことから、自転車通行帯が設置された。これにより左折レーンの交通環境が大きく変わったこともある。これらの交通環境の変化により、現在は「左折可」が設置されていない県もある。
運転中に白地に青い矢印の「左折可」の標示板を見つけたら、周囲の歩行者、自転車、車、バイクなどの交通に注意して安全な左折を心がけてほしい。