クルマのある暮らしをもっと豊かに、もっと楽しく

Series

最終更新日:2023.06.14 公開日:2022.01.06

『イタリア発 大矢アキオの今日もクルマでアンディアーモ!』第23回 イタリアにはお父さん専用の駐車場がある!? 最新のパーキングシステムにハラハラドキドキ

イタリア・シエナ在住の人気コラムニスト、大矢アキオがヨーロッパのクルマ事情についてアレコレ語る人気連載。第23回は、便利? それとも不便? 駐車に関する謎のローカルルールについて。

文と写真=大矢アキオ(Akio Lorenzo OYA)

記事の画像ギャラリーを見る

近年はカードやスマートフォンのアプリを通じて料金が払える路上駐車スペースが出てきた。

食事中も自車を監視

イタリア・ティレニア海沿いを走る高速道路でのこと。あるサービスエリア(SA)の駐車場で2021年秋、不思議なものを発見した。アスファルト上に「WEBCAM」と記されているのである。付近の立て看板を見て、ようやく意味がわかった。ドライバーが駐車場から離れても、自分のクルマを監視できるサービスだった。

専用アプリケーション(アプリ)をダウンロード後、必要情報を入力してSA内のフリーWiFiに接続する。すると、駐車場に複数備えられたカメラを通じて、スマートフォン画面で自車を確認できるらしい。食事中も、いたずらや車上狙いを発見できるというわけだ。イタリア国内56カ所でSA内レストランを展開する企業「シェフ・エクスプレス」が導入を進めているものという。

洗面所の鏡にアプリ用QRコードが貼られていたので、スキャンしてみる。ところが、スマートフォンのアプリ用ダウンロード・サービス(App Store、Google Play)の個人IDがイタリアのものでないと、ダウンロード不可の設定になっている。筆者のIDは日本登録なのでダウンロードできない。これでは、周辺各国から来た外国人も使えないことになる。

そもそも「自分で監視できる」以上の機能はない。プライバシー保護に関する法律にしたがい、ナンバープレートや人物の顔は表示されないというから、証拠にするのもハードルが高そうだ。食事中に怪しい人物を発見しても、自分で「ゴルァ〜」と出てゆかなければならないわけで、早々にオワコン化しそうな設備である。

イタリアで一部の高速道路SAで導入が開始されている「ウェブカム監視サービス」付き駐車場。

脇の表示板には、ドライバーがどうすればウェブカムを通じ自車を監視できるかが説明されている。

「昼休み時間は無料」も

そうした最新設備に対して、イタリアでは駐車するのに役立つさまざまな”不変のルール”がある。今回はそれを紹介してゆこう。

はじめに、公共路上駐車スペースにおいて、いずれも原則として白枠は無料、青枠は有料である(一部住民専用の場合もあり)。さらに黄色は、近隣商店や宿泊施設の荷降ろし・荷積み用など、用途が限定されているスペースである。

基本的に白枠は無料、青枠は有料。

 無料スペースも、駐車時間の制限が設けられている場所が少なくない。その場合は駐車開始時間を示すプレートをフロントウィンドーの見えるところに置いておく。「ディスコ・オラーリオ」といわれるこのプレートは、レンタカーでもグローブボックスの中などに入っていることが多い。

駐車開始時刻を掲示しておく表示版「ディスコ・オラーリオ」。

 そうした無料駐車スペースでも、気をつけたいのが「掃除の日」である。ロードスイーパーのシルエットとともに曜日・時間帯が記されている。当日クルマを撤去しておかないと、ロードスイーパーの後ろについて来る市警察のパトロールカーによって、違反キップをワイパーに挟まれてしまう。

「毎月第2および第4木曜日の10時から12時」などと複雑な決まりが多いため、たとえ住民でもうっかりしてしまうのが現状だ。同様に広場(ピアッツァ)では、週1回の青空市が立つ日がある。そうした場所でも、無料・有料問わずクルマを撤去しなくてはならないから、こちらも要注意である。

ある無料駐車場で。ディスコ・オラーリオを掲示しておけば60分間駐車できるが、第2・第4木曜日の10-12時は掃除のため駐車禁止である。

当日は、このようなロードスイーパーが通過する。

シエナの城塞横にある有料駐車場は……。

毎週水曜日、青空市場に変わる。うっかり放置すると撤去されてしまう。それを示す左脇の標識にも注目。

 次に青枠、つまり有料のスペースについて説明しよう。近年は白枠から青枠に変更される場所が相次いでいる。したがって「あれ、前回来たときは白枠だったのに」と思わず声を上げてしまうことが多々ある。どの地方自治体も、収入を増やすべく、躍起になっているのである。

そうした駐車場の多くでは、パーキングチケットのお世話になる。発券機で購入後、ウィンドーに掲示しておくのは、日本と同じ要領である。参考までに、筆者が住むシエナでは、1時間1.5ユーロ(約200円)だ。

なお発券機は、日本のようにナンバープレートの数字を入力する発券機は見たことがないものの、設置されている都市ごとにかなり操作が異なる。同じイタリア人でも慣れない発券機の前では頻繁に首をかしげている。ゆえに、すぐわからないからといって、恥ずかしがることはない。

シエナにおけるパーキングチケット発券機。一応ディスプレイの言語は、伊仏英独が切り替え可能になっている。

近隣のタバコ店などで駐車カードを購入後、日時をスクラッチする方式もある。このドライバーは、長時間止めておきたい人とみた。

 特筆すべきは、たとえ青枠でも「無料の時間帯」が頻繁に設定されていることだ。とくに夜間は、近隣住民の便宜を図るため”タダ”、ということがたびたびある。例として「夜8時から翌朝8時までは無料」といった具合だ。

そうしたことを知らないで、たとえば夜7時に2時間分のコインを投入すると、発券機はその晩の1時間、プラス勝手に無料時間帯をまたいで翌朝9時までのチケットがプリントされてしまう。

人々が昼休みに一旦職場から帰ってくるような生活スタイルの街では、昼の数時間も同様に無料になる。したがって、よく確認しないと損をする。

「父」マークの意味

近年は日本の一部と同様にマタニティ用、つまり妊婦専用駐車場もショッピングモールなど民間施設を中心に導入が進められている。コウノトリのマークとともに、建物により近い場所に設けられているのが常だ。

マタニティ専用駐車場のアスファルト面はピンクに塗られている。フィレンツェ郊外のショッピングモールにて。

 いっぽうで筆者が初めてイタリアに来たとき、理解に苦しんだ記号があった。まるで漢字の「父」のように見えるのだ。ただし、お父さん専用パーキングではない。実際は働く日を象徴するハンマーを交差させた図案で、平日(月から土)を示す。

我が家では、在住四半世紀が経った今なお「今日は日曜日だ。ここは”父マーク”だから、今日は無料だぜ。ラッキー!」などと、一般社会には通用しない呼称を用いている。

「父」ではなく、ハンマーを交差させて平日(働く日)を示している。この場合、月曜から土曜の8時から19時30分は1ユーロ。トリノにて。

記事の画像ギャラリーを見る

この記事をシェア

  

Campaign

応募はこちら!(12月1日まで)
応募はこちら!(12月1日まで)