タイヤにタンコブ? バーストの危険もある「ピンチカット」とは
タイヤのトラブルの1つに「ピンチカット」というものがある。側面(サイドウォール)にタンコブのような膨らみが生じ、内部にあるカーカスのコードが切れている状態のことだ。そのまま走行すると、タイヤがバーストする危険性もある。生じる原因と対処、そして予防法を紹介する。
運転中の変化が少ないピンチカット
タイヤトラブルの1つに「ピンチカット」というものがある。外見はタイヤの側面(サイドウォール)がタンコブのように盛り上がり、いかにも危ない感じ。内部は、ゴム部分を支えるカーカスのコードが切れてしまった状態で、サイドウォールのゴムだけで充填空気圧に耐えている状態なので、このまま走行を続けると、サイドウォールが裂けるなどしてバースト(破裂)を起こす危険性がある。
ピンチカットができただけだと、パンクのようにハンドルがとられるなどの影響は少ない。目視による点検が習慣化していないと、見逃してしまう可能性も高いだろう。
縁石に乗り上げるなどの強い衝撃で発生
ピンチカットが生じる状況は、縁石に乗り上げたり、擦ったりするなど、サイドウォールに強い衝撃が加わったときだ。これらの強い衝撃からサイドウォールが大きく変形し、内部にあるカーカスのコードが切れてしまう。カーカスのコードが切れると、サイドウォールのゴム部分が内部の空気圧によって押されてタンコブのように膨らむのである。
カーカス、サイドウォールの役割とは
カーカスはタイヤの形状を保持するための骨にあたる部分で、ポリエステルやナイロン、レーヨンなどの素材で構成されている。カーカスは走行中にタイヤが受ける荷重、衝撃、充填した空気圧に耐えるという役割を担っている。つまりカーカスが切れているのは、人で例えるなら骨折した足で走り続けているようなものだ。
またサイドウォールはカーカスを保護する役割とともに、走行中は路面の凹凸を吸収したり、車が曲がる、止まるなどの際に屈曲(変形)することで衝撃を吸収する。これによって乗り心地の向上や、滑らかな足回りなどに寄与しているため、サイドウォールは接地するトレッド面などに比べて、ゴムの厚みが薄くなっている。このようなことからサイドウォールへ、強い衝撃を加えることが禁物となっているのだ。
※パンクしにくいランフラットタイヤや扁平タイヤなどサイドウォールのゴムが厚いタイヤもある
ピンチカットは修理できる?
このピンチカットが生じたタイヤは、残念ながら内部のカーカスを修理することができないので、タイヤ一本を丸ごと交換するしかない。もしサイドウォールにタンコブを発見した場合は、そのタイヤでは走行しないこと。すぐにスペアタイヤに交換する、もしくはJAFなどのロードサービスに連絡しよう。ピンチカットが発生したタイヤは、バーストという最悪の結果が生じる可能性がある。
<動画で見る運転中にバーストした車はどうなる>
こんな場合もピンチカットに
ピンチカットの原因はサイドウォールへの強い衝撃だが、充填空気圧が低いと発生する率が高くなる。また、重い荷物を積んだ状態で強い衝撃が加わると発生するケースもある。日ごろから段差を通過する際に減速、もしくは徐行して、大きな衝撃を和らげることを心がけよう。
さらに、インチアップによって扁平率が高いタイヤを装着している場合も、強い衝撃でピンチカットが発生するケースがある。適正な空気圧を保っても、標準タイヤより充填されている空気の量が少ないので、衝撃への耐性が低くなることもある。
日常点検による予防
日常点検という視点では適正な空気圧を保つことが第一歩だ。加えて運転前にタイヤはトレッド面の摩耗具合だけでなく、サイドウォールのキズを目視点検する。
キズだけでなくサイドウォールのゴムのひび割れも確認しよう。ひび割れがひどいと、カーカスを保護する能力も低下している。そのため正常な状態よりも衝撃に弱くなっているので、ピンチカットが発生する確率が高い。ひび割れは程度によって走行に問題ないケースもあるが、写真のような重度のひび割れは、交換を急いだほうが賢明だ。