「シマウマ」|第23回アニマル”しっかり”みるみる
世界中から集まったさまざまな動物たちを、間近で見て・感じられる施設がサファリパーク。そんなサファリパークで動物たちの世話をする飼育員さんに、知っておくとちょっぴり動物通になれるポイントを、 "しっかり" ご指導いただきました。富士山の自然豊かな環境にある富士サファリパークの動物展示課飼育担当佐藤さんに、「シマウマ」を解説してもらいました。
吸血バエは縞模様が苦手⁉
シマウマは、アフリカの東部から南部(モザンビーク北部からザンビア、タンザニア、コンゴ、ケニアなど)にかけての草原やサバンナ地帯に生息する奇蹄目ウマ科の動物です。体長はおよそ2.0~2.5m、体重は150~350kgほどあります。
シマウマの特徴は、その名前が示しているように体全体に白と黒のはっきりした縞模様があることです。たてがみも縞模様になって生えています。シマウマの地肌は黒く、その上に縞模様の体毛が生えています。縞模様は、「シマウマの種類によっても柄が異なり、同じ種類であっても一頭一頭で異なります。よく見ると足の付け根の柄だけがちょっとだけ違っていたりする」(※佐藤さん以下同)そうです。
現在園内で飼育されているシマウマは、サバンナシマウマの仲間である「グラントシマウマ」という種類です(他にヤマシマウマやグレービーシマウマなどの種類がある)。他の種類のシマウマに比べると、黒い縞の部分が太く、比較的縞の数が少ないという特徴があります。
そのシマウマの縞模様の理由ですが、諸説あります。ここではそのうちの代表的な3つの仮説を紹介します。
その1は、「カムフラージュ」説。シマウマの縞模様には、肉食獣が狩りをする際に一斉に逃げ出すと縞に眩惑されてターゲットを絞りづらくしたり、木々に同化して保護色の役割を果たしているなどのカムフラージュ効果があるのではないかというもの。ただ最近の研究でシマウマを捕食する肉食動物の多くが縞模様を明確に識別できないことが分かってきており、この説には否定的な意見が多くなっています。
その2は、「体表面温度を下げる効果」説。日中の気温が40℃を超えるサバンナのような環境では、皮膚の表面温度が上がり過ぎないようにすることが重要になります。この説は、縞の黒い毛の部分と白い毛の部分の熱吸収の差によって空気の流れが生じて、体表面の温度を下げるのに役立つのではないかというものです。
その3は、「防虫効果」説。シマウマが生息するアフリカのサバンナ地帯には伝染病を媒介する吸血バエがおり、ある調査によると、そのハエは縞模様を避ける習性があることが分かりました。このことからシマウマの縞模様は、吸血バエを遠ざけて伝染病から身を守るためのものではないかというものです。最近ではこの説が有力となっています。
体型はウマよりもロバに近い
シマウマは、寸胴な体幹、短いたてがみなど体型から見るとウマというよりもロバに近い特徴を持つ動物です。ただウマ属の動物に共通する特徴の一つである足の内側にある「附蝉(ふぜん)」はついています。附蝉は、3~4cmくらいの楕円形で褐色のかさぶた状になっており、拇指(おやゆび)が退化した痕跡だとも言われています。ウマは4本の足すべてに残っていますが、シマウマは前足のみにあります。
シマウマは鳴き声によってコミュニケーションをとる動物です。その声もロバに近く、「ヒーハー」という声で鳴きます。親子であれば遠くにいる子供を探すとき、大人のオスであれば自分の群れを呼ぶときなどに鳴く場合が多いようです。
そんなシマウマですが、嗅覚・聴覚・視覚に関しては、ウマと同様の優れた能力を持っています。とくに嗅覚は鋭く、ちょっとした変化も感じ取ります。
治療の際にエサの中に薬を混ぜて与えることがあるのですが、「薬が苦いことを経験的に知っているシマウマの場合、錠剤がたった1錠入っているだけもその匂いで気づき、食べないことがあります。飼育員が薬を触った手でエサを扱っただけでも口にしない個体もいる」とのこと。匂いにはとても敏感な動物なんですね。
人慣れせず、気性は荒い
ではシマウマとは、どんな性格の動物なのでしょうか?
名前に「ウマ」とあるので、つい家畜のウマを想像して、人慣れして穏やかな性格だと思いがちですが、人にも慣れず、気性が荒い動物です。「相手の体が自分よりちょっとでも小さいとみると肉食動物のチーターであっても強気に出て、向かっていくこともあるほど」です。特にオスの性格は戦闘的だと言います。一方、メスであっても、オスほどではないものの気性は荒く、メス同士でも順位決めを行う際などにはお互いを蹴り合ったりします。園内のシマウマ同士で一度戦いが始まるとなかなか収まらないことがあるそうで、「長いときは、朝から午後まで数時間も、噛み合ったり、前足で蹴り合ったりして、エサを与えてもエサには見向きもせず、ケンカをし続ける」こともあります。
最後に「シマウマあるある」についても伺いました。
それは、「立ったまま寝てしまうこと」です。しかも寝ているときは、「後ろ足の1本だけを浮かして、3本の足で立っていることが多い」とのこと。シマウマにも寝相ってあるんですね。