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最終更新日:2021.01.15 公開日:2021.01.15

「アメリカバイソン」|第19回アニマル”しっかり”みるみる

世界中から集まったさまざまな動物たちを、間近で見て・感じられる施設がサファリパーク。そんなサファリパークで動物たちの世話をする飼育員さんに、知っておくとちょっぴり動物通になれるポイントを、 "しっかり" ご指導いただきました。富士山の自然豊かな環境にある富士サファリパークの動物展示課飼育担当吉村さんに、「アメリカバイソン」とウシ科の5種類の動物を解説してもらいました。

くるくら編集部 上條 謙二

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一時は絶滅の危機に瀕したことも

アメリカバイソンは、大きな頭部とそれを支えるために発達した肩の筋肉が特徴。

 アメリカバイソン(別名アメリカヤギュウ)は、アメリカからカナダにかけての森林地帯や草原などに暮らしている大型のウシ科の動物です。体長は2.4~3.8m、肩までの高さが1.5~2m、体重は0.5~1.1トンほどです。

 19世紀の初頭には数千万頭が生息していたと推測されていますが、アメリカ大陸に入った入植者などが乱獲したことによって、20世紀初頭にはアメリカの西部とカナダの森林でわずか数百頭にまで減ってしまいました。その後、アメリカとカナダの政府が国立公園で保護した結果、保護区を中心に生息数は回復し、現在は、保護区における個体と飼育されている個体を合わせると約20万頭ほどとされています。

⼭のように盛り上がる肩の筋⾁

アメリカバイソンは、換毛の変化がはっきりとしている動物。

 アメリカバイソンの特徴は、大きな頭部とそれを支えるために発達した肩の筋肉です。「肩の筋肉は大きくて山のように盛り上がっています」(※吉村さん以下同)。頸部と胴は太く、4本の足は胴体に対して細く比較的短めです。特に肩の筋肉の盛り上がりはオスに顕著で、上半身は大きく発達しており、1トンを超える個体はオスに多く見られます。

 アメリカバイソンでもう一つ特徴的なのが、とても分厚く密に生えた体毛です。成獣は、頭部や肩、前足のあたりが長く縮れた体毛で覆われます。短い毛の中に長い毛が混じって生えており、保温性に優れた分厚い毛皮によって寒さから守るようになっています。換毛の変化がはっきりとしており、特に野生種では、換毛の時期になると長い縮れた毛がずるっと落ちて下に生えていた短い毛が露出する様子が観察できます。そんな姿は「一見、ボロ毛布をまとったように見える」そうです。

 また体毛の色も年齢を経ることで変化します。生後2か月くらいまでの子供の体毛は赤に近い茶褐色、4か月くらいになると黒に近い焦げ茶色へと変化していきます。

 続いての特徴は角にあります。アメリカバイソンはオスもメスも角が生えます。大体生後1年ほどで小さな角が生え始め、生涯伸び続け、成獣のオスで60センチくらいになります。その生え方は「最初はこめかみのあたりから棒のように生えた角が、次第に耳の上から外側に向かって生え、内側に反り返って弓型に近い丸みを持ってきます」。

 オスはその角を群れ内の順位決めの戦いに使います。 「角を激しくぶつけ合うというより、頭を付け合い、角を使って力比べをするように押し合う感じの戦いです」。戦いは長くて5分くらいで、その場から先に離れた個体が負けになるそうです。

 ちょっと意外なのがその鳴き声です。アメリカバイソンはウシ科の動物なので「モー」という声を出すのかと思いきや、「ブー」とか「ゴー」というような鳴き声を上げます。大体は威嚇する際にそんな鳴き声を出します。また子供のアメリカバイソンの場合は、「ピー」とか「キー」というような、ブタに近いような高い声で鳴きます。いかつい外見からはなかなか想像できない鳴き声ですね。

温厚でも、一度興奮すると走り回って手が付けられなくなる

アメリカバイソンは、普段は温厚だが、一度興奮すると走り回って手が付けられなくなることがある動物。走れば時速65㎞は出るという。

「アメリカバイソンが砂浴びで寝転がっているとき、4本の足がピンと上に向かって伸びているのが、何ともいえず可愛いです」と飼育担当の吉村さん。

 そんなアメリカバイソンとは、どんな性格の動物なのでしょうか? 

「普段は温厚ですが、一度興奮すると走り回って手が付けられなくなる」ことがある動物です。環境の変化にとても敏感で、些細なことをきっかけに興奮し、走り出す というのです。例えば、自分たちのいる場所に他の動物が紛れ込んできたとか、数週間だけ別の場所にいた親子のアメリカバイソンを元の展示スペースに戻したということが原因となり、最初の1頭が驚いて興奮すると、それがすぐに群れ全体に広がって、走り回る事態を招きます。群れに興奮が伝わってしまうと20~30分くらいは収まりません。

「体が大きいので、一旦走り始めるとエサを与えようが何をしようがそれを止めることは不可能です」。1頭の興奮が群れ全体に広まってしまうほど、群れの団結力が強い動物なんですね。

「アメリカバイソンあるある」についても伺いました。

 それは「砂の山があるとすぐにひっくり返って砂浴びをすること」です。砂浴びが大好きで、起き上がりこぼしのように何度も倒れ込むのを繰り返すこともあるそうです。

園内で見られるその他のウシ科の動物は?

●「ヒマラヤタール」・・・中国やネパールの山岳地帯に生息する。2つに分かれた爪を使い、断崖や斜面なども軽々と移動することができる。オスは成獣になると、首から胸部にかけて体毛が伸び、豪華な襟巻きをしているように見える。

 アメリカバイソンは、今年の干支である「ウシ」科の動物です。園内にはアメリカバイソン以外にも、ウシ科の動物がいます。

 ウシ科の動物の一般的な共通点は、「食べた草を反芻(はんすう)すること」「一生伸び続ける曲がった角を持つこと」「臆病な性格であること」など。

 今回は「2021年丑年スペシャル」ということで、5種類のウシ科の動物(ヒマラヤタール、エランド、シタツンガ、ムフロン、ブラックバック)を紹介します。

●「エランド」・・・アフリカに生息するウシ科のレイヨウ類。レイヨウの仲間では最も大きくなる種類で、ねじれた角と首元にある胸垂(きょうすい)と呼ばれる皮膚の垂れ下がりが特徴。

●「シタツンガ」・・・沼地や湿地帯に生息するレイヨウ類。長くて幅のある蹄(ひづめ)を持っているため体重が分散でき、湿地などでも体が沈むことなく歩くことができる。泳ぎも得意。

●「ムフロン」・・・現在家畜として飼われているヒツジの祖先の一種であると考えられている(諸説あり)。オスには立派な角が生え、年を重ねるごとに渦巻き状に伸びていく。

●「ブラックバック」・・・インドやパキスタンの森林や乾燥地帯で数十頭の群れを作って生息する。オスだけに角が生え、成長とともに螺旋(らせん)状に伸びていく。ブラックバックのバック(buck)にはオスという意味があり、成長とともにオスの背中の毛が黒くなっていくことから、この名前がついたともいわれている。

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