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最終更新日:2020.06.30 公開日:2020.06.30

歩行者に優しい車種ランキング。JNCAP・歩行者保護性能ベスト10

国土交通省と独立行政法人 自動車事故対策機構(NASVA)が毎年公表している、新車の安全性能評価JNCAP(自動車アセスメント)。ここでは、2018年度からの2年間に評価を受けた23車種歩行者保護性能をランキング形式で掲載する。

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 クルマとの交通事故において、歩行者の頭部の負傷はほかの部位と比べて死亡につながる危険性が高い。それはデータで明らかになっており、たとえば2019年の歩行中の交通事故死者1176人を見てみると、50.7%を占める596人が頭部の負傷が主な死因となっている。2人に1人以上が頭部の負傷で亡くなっているのだ。

 こうした事実を受け、現在の車両開発では歩行者の頭部保護にも力が入れられている。JNCAPも、各メーカーに歩行者保護性能の高い車両の開発をさらに促すべく、衝突安全性能評価の中の項目として、歩行者保護性能評価試験を実施している。

画像1。頭部保護性能評価試験の様子。頭部インパクタがボンネットに衝突した瞬間。

 歩行者保護性能評価には、頭部保護と脚部保護の2種類の性能評価試験がある。歩行者が車体に乗り上げた際に、頭部を打ち付けてしまう可能性があるボンネットやフロントウインドウなどの衝撃緩和・吸収性能を評価するのが、頭部保護性能評価試験だ。同試験では、人の頭部を模した頭部インパクタを、試験車のボンネットなどの衝突点(基本10か所)に時速40kmで射出して傷害値を計測、点数化している(画像1)。衝突させる範囲は、車種のフロント部分の形状や長さ、車高などにより車種ごとに変わる。フロントノーズの長いセダンやクーペならほぼボンネットだし、軽自動車のようなコンパクトな場合はボンネット前端からルーフ前端までが範囲となる。

 一方の脚部保護性能評価試験は、最初に歩行者と接触する可能性が高いフロントバンパーの衝撃緩和・吸収性能が計測されている。成人男性の脚部(スネ部)を模した脚部インパクタを、試験車のフロントバンパーの衝突点(基本3か所)に時速40kmで射出して傷害値を計測、点数化している(画像2)。

画像2。脚部保護性能評価試験の様子。脚部インパクタがフロントバンパーに衝突した瞬間。

 そして得点以外にも、ボンネットとフロントバンパーの衝撃緩和・吸収性能(衝突安全性能)を2次元マッピングとして表した「グリッドポイント」が算出される(画像3)。 ボンネットのグリッドポイントは、10cm四方のマス目で分割され、フロントバンパーはどの車種でも1列6マスの上下2列で合計12マスに分割されて表される。

 どちらのグリッドポイントもマス目の色により、その部分の安全性能が表される。緑が衝撃緩和・吸収性能に最も優れており、緑→黄→オレンジ→茶→赤の順で性能が下がっていく。要は、緑が多ければ多いほど、歩行者にとって優しいボンネットやフロントバンパーであることがわかるのだ。

画像3。ボンネットおよびフロントバンパーの歩行者保護性能を表したグリッドポイント。

 ここでは、過去2年間で同一条件の評価試験を受けた23車種から、成績の良かった10車種を紹介しよう。歩行者保護は合計37.00点で、その内訳は頭部保護が最大32.00点、脚部保護が最大5.00点だ。

【歩行者保護ランキング(最大37.00点)】
1位:36.51点 クラウン(トヨタ)
2位:34.08点 フォレスター(スバル)
3位:31.66点 Cクラス(メルセデス・ベンツ)
4位:30.50点 デイズ/デイズ ハイウェイスター(日産)、eKワゴン/eKクロス(三菱)(※1)軽自動車
5位:30.37点 N-WGN/N-WGN カスタム(ホンダ)(※2)軽自動車

6位:29.96点 エクリプス クロス(三菱)
7位:29.84点 インサイト(ホンダ)
8位:29.34点 ポロ(フォルクスワーゲン)
9位:29.25点 クロスビー(スズキ)
10位:29.18点 RAV4(トヨタ)

11位:29.10点 NX(レクサス)
12位:28.47点 ロッキー(ダイハツ)
13位:28.24点 ミラ トコット(ダイハツ)軽自動車
14位:28.11点 アコード(ホンダ)
15位:27.86点 UX(レクサス)

16位:27.66点 タント/タント カスタム(ダイハツ)(※3)軽自動車
17位:27.48点 カローラ スポーツ(トヨタ)
18位:26.61点 オデッセイ(ホンダ)
19位:26.32点 カムリ(トヨタ)
20位:26.16点 N-VAN(ホンダ)軽自動車

21位:26.02点 CR-V(ホンダ)
22位:23.70点 ジムニー(スズキ)軽自動車
23位:22.93点 ミニ 3ドア/5ドア(ミニ)

※1 「デイズ」と「eKワゴン」は、日産と三菱によって共同開発された兄弟車。日産「デイズ ハイウェイスター」は「デイズ」のスポーティモデルで、三菱「eKクロス」は「eKワゴン」のクロスオーバーモデル。
※2 ホンダ「N-WGNカスタム」は、「N-WGN」の上級モデル
※3 ダイハツ「タント カスタム」は、「タント」の上級モデル

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歩行者保護第1位から第5位まで

第1位:クラウン(トヨタ)

歩行者保護:36.51点

頭部保護:32.00点(第1位)脚部保護:4.51点(第19位)

2018年に評価を受けたトヨタ「クラウン」のグリッドポイント。

 トヨタのフラッグシップセダンの15代目「クラウン」は、23車種のうち、頭部保護で満点である32.00点を獲得した唯一の車種だ。歩行者との接触を検知すると、ボンネット後端が持ち上がる「ポップアップフード」機構により、高得点を獲得した。同機構は、エンジンルーム上部に空間的な余裕を作ることで、衝撃を緩和する仕組みだ。一方、脚部保護性能はフロントバンパーの左右下部が黄となっており、4.51点止まり。脚部保護性能だけを見ると、第19位と低位だった。

第2位:フォレスター(スバル)

歩行者保護性能:34.08点

頭部保護:29.04点(第2位)脚部保護:5.00点(第1位)

2018年に評価を受けたスバル「フォレスター」のグリッドポイント。

 スバル車は、フロントピラーやワイパーピボットなど、硬い部位を覆うように歩行者保護エアバッグを展開させ、頭部を保護する仕組みを採用している。その効果により、クロスオーバーSUVの5代目「フォレスター」のボンネットのグリッドポイントは、赤や茶の部分が一切ない結果となった。オレンジの部分もわずかに2か所である。フロントバンパーは12か所すべて緑で、脚部保護性能で満点となる5.00点を獲得した。

第3位:Cクラス(メルセデス・ベンツ)

歩行者保護性能:31.66点

頭部保護:27.04点(第3位)脚部保護:4.58点(第17位)

2019年度に評価を受けたメルセデス・ベンツ「Cクラス」のグリッドポイント。

 4代目「Cクラス」は、歩行者との接触を検知するとボンネット後端が持ち上がる「アクティブ・ボンネット」機構を備える(※4)。それにより、従来なら構造的に衝撃緩和・吸収構造にしにくいフェンダー部分も緑となっている。ただし、アクティブ・ボンネットではフロントピラーやワイパーピボットなどの硬い部位を完全にカバーできるわけではないため、フロントウインドウの付け根は赤や茶などが目立つ。フロントバンパーに関しては半数が黄で、4.58点。脚部保護性能だけで見ると、第17位と低位にとどまった。

※4 アクティブ・ボンネット機構:ドイツ車は、ポップアップフード機構のことをアクティブ・ボンネット機構と呼ぶ。

第4位:デイズ/デイズ ハイウェイスター(日産)、eKワゴン/eKクロス(三菱)

歩行者保護性能:30.50点

頭部保護:25.44点(第4位)脚部保護:5.00点(第1位)

2019年度に評価を受けた日産「デイズ」のグリッドポイント。

 トールワゴンタイプの日産「デイズ/デイズ ハイウェイスター」および三菱「eKワゴン/eKクロス」の兄弟車(以下、代表して「デイズ」)は軽自動車部門の最上位、総合でも第4位を獲得した。

 「デイズ」などの軽自動車では、頭部インパクタの射出範囲がボンネット前端からルーフ前端までとなる。その範囲内には硬いフロントピラーが完全に収まってしまうため、どうしてもその部分の赤が目立ってしまうが、それを除けば緑の面積は広い。また、ワイパーピボットのあるフロントウインドウの付け根も、多くが黄で収まっており、それらが高得点につながった。フロントバンパーもオールグリーンで、最大の5.00点を獲得している。

第5位:N-WGN/N-WGN カスタム(ホンダ)

歩行者保護性能:30.37点

頭部保護:25.36点(第6位)脚部保護:5.00点(第1位)

2019年度に評価を受けたホンダ「N-WGN」のグリッドポイント。

 軽自動車部門第2位、総合5位を獲得した2代目「N-WGN」。軽自動車の中でもコンパクトなボンネットタイプであることから、頭部インパクタの射出範囲はルーフ上部にまで及ぶ。ボンネットのグリッドポイントで赤い部分は、フロントピラーだ。ルーフの縁の部分も赤が見える。フロントウインドウの付け根はややオレンジが多いものの、全体的に緑の面積は大きい。フロントバンパーはすべて緑で、最大の5.00点を獲得した。

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続いて第6位から第10位まで

第6位:エクリプス クロス(三菱)

歩行者保護性能:29.96点

頭部保護:24.96点(第7位)脚部保護:5.00点(第1位)

2018年度に評価を受けた三菱「エクリプス クロス」のグリッドポイント。

 第6位は、三菱のコンパクト・クロスオーバーSUV「エクリプス クロス」。ボンネットのグリッドポイントは、ヘッドランプ、フロントピラーの付け根など、衝撃緩和・吸収構造にしにくい部分が、オレンジから赤となり、その周辺は黄も目立つ。マス目の色のパターンが左右非対称なのは、ボンネットのすぐ下にあるエンジンルーム内の硬い機器類の配置や構造などの影響だ。一方のフロントバンパーは、オールグリーンで最大5.00点を獲得した。

第7位:インサイト(ホンダ)

歩行者保護性能:29.84点

頭部保護:25.44点(第4位)脚部保護:4.34点(第20位)

2019年度に評価を受けたホンダ「インサイト」のグリッドポイント。

 ホンダは、セダンやクーペへのポップアップフード機構の装備を進めており、「インサイト」もその1車種だ。インサイトはセダンだが、車高やフロント部分の長さなどの関係で、頭部インパクタの射出範囲はフロントウインドウ半ばまでとなっている。

 頭部保護は「デイズ」と同点の25.44点で第4位。ただし、フロントウインドウの付け根部分やフロントピラーなど、ポップアップフードではカバーしきれない部分にはオレンジや茶、赤などがやや見受けられる。またフロントバンパーは緑が半分にとどまり、脚部保護だけで見れば第20位となる4.34点だった。

第8位:ポロ(フォルクスワーゲン)

歩行者保護性能:29.34点

頭部保護:24.56点(第9位)脚部保護:4.74点(第14位)

2019年度に評価を受けたフォルクスワーゲン「ポロ」のグリッドポイント。

 フォルクスワーゲンのコンパクトカーである6代目「ポロ」もアクティブ・ボンネットを備えた1車種。頭部インパクタの射出範囲は軽自動車のそれに近く、フロントウインドウ上部までとなっている。ピラー部分が赤、フロントウインドウの付け根はオレンジや一部茶もあり、頭部保護の得点は第9位となる24.56点。またフロントバンパーは上部が衝撃緩和・吸収性能が下部に比べて低いようだ。脚部保護の得点は4.74点で第14位となっている。

第9位:クロスビー(スズキ)

歩行者保護性能:29.25点

頭部保護:24.24点(第10位)脚部保護:5.00点(第1位)

2018年度に評価を受けたスズキ「クロスビー」のグリッドポイント。

 スズキのコンパクトカー「クロスビー」。頭部インパクタの射出範囲は、軽自動車とほぼ同じで、ボンネットからルーフ前端までだ。ピラー部分の赤のほか、フロントウインドウの付け根はところどころでオレンジ。さらに、硬い部位のひとつであるヘッドランプも射出範囲に入っているため、その近辺にも茶がいくつか見られる。また、先端部中央に赤が1マスあるが、フレームの構造やエンジンルーム内の機器の影響などが考えられる。フロントバンパーはすべて緑で、最大の5.00点を獲得した。

第10位:RAV4(トヨタ)

歩行者保護性能:29.18点

頭部保護:24.16点(第11位)脚部保護:5.00点(第1位)

2019年度に評価を受けたトヨタ「RAV4」のグリッドポイント。

 トヨタのミドルクラス・クロスオーバーSUVの5代目「RAV4」。ボンネットのグリッドポイントで表示されている赤のうち、上部に見えるのはフロントピラーの付け根で、下部に見えるのはヘッドランプ周辺。ヘッドランプも衝撃緩和・吸収機能を持たせるのが難しい部位で、オレンジや茶も見られる。また、ボンネット前端部分もオレンジだ。フロントウインドウの付け根は、ドライバー側の方が衝撃緩和・吸収性能が低いのが見て取れる。エンジンルーム内の機器の配置などが影響しているようだ。フロントバンパーはオールグリーンで最大の5.00点を獲得している。


 グリッドポイントを見ると、現在のクルマは歩行者との事故の際に衝撃を緩和・吸収できるように作られていることがわかる。しかし、歩行者保護性能が高くなっているとはいっても、それは万が一の時のためのもの。歩行者を保護するには安全運転こそが最も有効だ。

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