「ミーアキャット」|第4回アニマル”しっかり”みるみる
世界中から集まったさまざまな動物たちを、間近で見て・感じられる施設がサファリパーク。そんなサファリパークで動物たちの世話をする飼育員さんに、知っておくとちょっぴり動物通になれるポイントを、 "しっかり" ご指導いただきました。富士山の自然豊かな環境にある富士サファリパークの動物ふれあい課飼育担当の杉山さんに、「ミーアキャット」を解説してもらいました。
見た目は愛嬌があるものの、警戒心や攻撃性は強い動物
2本足で立つ姿が印象的なミーアキャットですが、どんな性格の動物なのですか?
「警戒心が強く、結構攻撃性の強い性格です。その一方、好奇心旺盛な一面もあり、気になるものに対しては群れ全体で見定めにいきます」と杉山さん。
すっくと立ってキョロキョロと周りを見回す、あの愛嬌のある姿が印象深かっただけに、攻撃性の強い性格だったのは意外でした。
そこでミーアキャットに近づいて観察してみることにしました。すると初めのうち単独だったこともあってか「フガフガ」と激しい息遣いで興奮している様子でしたが、いきなり「クククク~」と鳴き声をあげました(警戒の行動とのこと)。キャットというよりドッグっぽい鳴き声!? ミーアキャットはマングース科の動物だそうですけど…。
「肉食寄りの雑食性で、牙があります。肉を食べるときは、この牙と肉食動物にしかない裂肉歯(奥歯)を使って強いあごの力でワイルドに引きちぎって食べます」(杉山さん※以下同)
だから「好奇心旺盛なミーアキャットが、お客さんの気づかないうちに靴を鋭い爪でガリガリと引っ掻いてしまうことがあります。ご注意を」とアドバイスも。よく観察すると確かに体に比べると長くて鋭い爪を持っていることが分かります。
「この爪で、自然界では地面に穴を掘って暮らしたりします。巣穴は長いトンネル状です」。
ただ園内では、巣穴を掘る必要性があまりないので趣味的に掘っている感が強く、普段は前足の爪で砂をいじっている程度だそうです。
何事も必要に迫られないと真剣に取り組まないというのは、ミーアキャットも人間も同じですね。また狭い巣穴で暮らすのに適応した耳の形が独特です。動き回るのに邪魔になる「耳介」(頭部の両側にあって耳の穴を囲んでいる貝殻状の突起)が外にとび出していません。
大人が子供に教える、毒のあるサソリの食べ方
ミーアキャットは社会性のある群れをつくることが特徴です。
「群れの中で一番上位にいるのが一番強いメス。子供を産むのはそのメスの役で、子育ては他のメスやオスが担当します。一番上位のメスと相性の合わないメスは群れから排除されます。メンバーの8~9割に血縁関係があります。群れの中で細かい役割分担はないのですが、すっくと立ち上がって周囲を警戒する『見張り役』は群れの中の順位が下の個体が担当、1日の内で何回か交代します」。
しかもその群れのなかでは子供たちにある種の「教育」が行われると言います。「例えば野生下では毒のあるサソリも食べるのですが、子供には、死んだサソリ→毒針が抜いてある生きたサソリ→毒針のある通常のサソリ、と段階を踏んで与えるのだそうです。園内では、エサとしてミルワーム(ゴミムシダマシ科の甲虫の幼虫)を与えますが、最初は大人の個体が一度殺めてから子供に供します」。
直立は、日光浴中か見張り番の個体がとるポーズ
おなじみのあの立つポーズですが、あれはおおむね「日光浴」が目的なのだそうです。
「お腹を太陽に向けているから分かります。太陽でなくてもストーブや温かなライトでも立ちポーズをとります。ただ群れで暮らしている場合で、太陽の方向に向かずにキョロキョロと周りを見回していたら、それは『見張り役』です。危険を察知すると鳴き声で仲間に知らせます。天敵は野生下ではタカなどの猛禽類ですが、園内では上空を飛ぶ飛行機に反応します」。
飛行機を見つけると大慌てで巣穴に逃げ込む姿がみられるそうです。
撮影ミスではありません。それは「瞬膜」のせい!?
最後にミーアキャットあるあるを杉山さんに伺いました。
「写真を撮ると、目が白くなって写ることがあります。原因は、瞼と眼球の間にある半透明の『瞬膜』が、瞬間的に目の表面の角膜上を覆うからそう写るんです」。
この瞬膜は、目を保護するためにある膜で、鳥類や爬虫(はちゅう)類、哺乳類にもあるんだそうです。カメラテクニックが未熟だからじゃないんですって。