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最終更新日:2023.08.02 公開日:2023.07.28

自動車保険会社にもユーザーにもメリット絶大!? いまのドラレコに足りていないものとは?

ドライブレコーダーはクラウドとの連携で大化けする!? カーAV評論家の会田 肇が提言する、次世代ドラレコのあるべき姿とは。

文と写真=会田 肇

変わりはじめたドラレコの最新事情

新型プリウスにオプション設定された「ドライブレコーダー機能付電子ミラー」。前方はADAS用カメラを活用して撮影している(写真:トヨタ自動車)

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今や装備するのが当たり前になりつつあるドライブレコーダーだが、純正にすべきか、カー用品として買うべきか迷っている人も少なくないだろう。そんな中で、最近になって純正品を取り巻く環境が大きく変化してきていることをご存知だろうか。

ドライブレコーダーの役割は言うまでもなく、走行中や駐車中に車両周辺で発生した事故を含むアクシデントを映像と音声で記録するものだ。そのため、走行中は常に記録を繰り返し、メモリーがいっぱいになったら古い順から順に上書きしていく。つまり、その記録は対象を選ばず、すべてを記録するのが基本となっている。でなければ、ドライブレコーダーとしての役割が果たせないからだ。

ところが、その記録すること自体が純正品として搭載されるのを遅らせていたことがわかった。まずはその背景を少し説明したい。

ドライブレコーダー用としても活用する新型プリウスPHEVのADAS用カメラ(撮影:会田肇)

「ドライブレコーダー機能付電子ミラー」をオプションで搭載した新型プリウスPHEV(写真:トヨタ自動車)

今、大半のクルマに車両前方に向けたADAS(先進運転支援システム)用カメラが搭載されている。これが前方の状況を捉え、必要に応じてブレーキや操舵を制御する役割を果たしてきた。ただ、このカメラをドライブレコーダーとして利用されることは、何故か行われないままで来た。

それが2020年に登場したハリアーに「録画機能付デジタルインナーミラー」が搭載されて以降、クラウンやシエンタ、プリウスなどにADAS用カメラを使った「ドライブレコーダー」がライン装着されるようになってきたのだ。そのきっかけはなんだったのだろうか。

実はドライブレコーダーは本来、業務用途で使われることが多かった。それが2017年6月に発生した東名高速でのあおり運転を起因とする交通事故が発生して以来、その対策としてドライブレコーダーの役割が有効とされるや、一気に一般ドライバーへと利用が広がった。

確かに初期の頃のADAS用カメラはモノクロで撮影していたこともあり、ドライブレコーダー用として使うには力不足だった。しかし、2017年時点ではすでにADAS用カメラはカラー化が一般化しており、ドライブレコーダーとして使うことも可能だったはずだ。ただ、そうした状況にも関わらず、ドライブレコーダーはADAS用カメラは使われることはなく、たとえ“純正”だったとしても後付けで装着されるのが基本だった。

その理由はどこにあったのか。筆者はそのことについてADAS系の開発を行う担当者に幾度となく訊ねてきた。そこにはADAS用カメラとの併用によってECUの負荷が増えることも想定されたが、担当者の説明ではそれは大した負荷ではないという。そんな中でその回答として共通していたのが、ドライブレコーダーが撮影することによって発生する“肖像権”への対応だった。

ドラレコと肖像権の問題

冒頭で述べたようにドライブレコーダーの役割は、走行中の状況を映像と音声で記録し続けることにある。状況によっては撮影されて困る映像も含まれるだろうし、あるいはその映像がSNSなどを通して拡散される可能性も否定できない。

この時、撮影された側から肖像権が主張され、そこに自動車メーカーが介在していると訴えられることも想定される。実際、海外ではこの肖像権絡みで今でもドライブレコーダーを禁じている国や州もあるほど。こうした事情が自動車メーカーがドライブレコーダーの搭載を躊躇させていたわけだ。

とはいえ、日本ではドライブレコーダーが禁じられているわけでもなく、むしろ「ユーザーからは搭載を望む声が多く上がっており、どこかがドライブレコーダーをライン装着して“露払い”してくれれば……」との声が担当者から聞こえていた。そんな矢先、トヨタがドライブレコーダーをADAS用カメラと共通化して“期待”に応えてくれたというわけだ。

日産も独立したカメラを使うものの、新型セレナでライン装着車を用意。これについて販売店に聞くと、「配線が露出しないで装着できることからユーザー方は好評で装着率は思ったよりも高い」という。こうした状況からドライブレコーダーのライン装着は今後さらに増えてくるのは間違いないだろう。

新型ハリアーに搭載された「録画機能付デジタルインナーミラー」の解説。ドライブレコーダー専用のカメラが用意されたことがわかる(資料:トヨタ自動車)

いまのドラレコに足りないものとは?

一方で、ドライブレコーダーがライン装着されたのにも関わらず、まだ不足していると思う機能がある。それはドライブレコーダーとクラウドとの連携機能だ。この機能が備わっていれば、衝撃をドライブレコーダーが検知すると自動的にその映像が通信を介してサーバーへ送信される。事故によって動揺している時でも確実にその映像がサーバーに保存されているわけだ。

見逃せないのは車両火災などで車両が消失してしまった時の対応だ。交通事故ではまれに車両火災を招くこともあり、仮に全焼となれば、事故の状態をドライブレコーダーで確認することは不可能となってしまう。もし、衝突時に自動送信されていれば、その状況はサーバーに送信された映像で確認できる。これこそアクシデントに強いドライブレコーダー本来の役割と言えるだろう。

もちろん、クラウドと接続するとなれば、仮にハッキングされればその映像が利用される可能性もゼロとは言えない。とはいえ、今や新型車ではクラウド接続の標準化が進んでおり、そこには自動車メーカーが想定したセキュリティ対策も施されている。これをドライブレコーダーにも活かせばいいことであり、その機能はより有効活用されるべきなのだ。

新型プリウスにオプション設定された「ドライブレコーダー機能付電子ミラー」では、Wi-Fi経由で映像をスマホに転送することができる(撮影:会田肇)

次世代ドラレコのあるべき姿

利用者としては送信されるデータが動画である以上、通信費用がかさむのは避けられないが、すでに自動車保険は特約としてこのサービスを提供中であり、自動車メーカーが提供中の通信サービスの課金制度を利用すればこれは解決できる問題だろう。むしろ、コネクテッド化が進む中で、ドライブレコーダーがライン装着していくのを機に様々なサービスにトライして欲しいと思うのだ。

たとえば、過去にはトヨタがテレマティクスサービスと連携した保険サービスを提供したことがあったが、ドライブレコーダーやADASでセンシングしたデータを活用すればより高精度に運転状況のリスクを算出することだってできるだろう。

それは自動車保険会社にもユーザーにもメリットをもたらすわけで、それこそが次世代のドライブレコーダーの姿と言えるのではないか。よりスマートにより高機能に、そしてユーザーに有益なドライブレコーダーの登場を期待したいと思う。

日産のディーラーオプションでは通信機能付ドライブレコーダーが用意される。写真は新型ルークス(撮影:会田肇)

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