シートベルト非着用時の致死率は約12倍!全席で着用を忘れない!!
シートベルトはドライバーと同乗者を交通事故の衝撃から守ってくれる命綱である。道路交通法では全席において着用が義務付けられている。改めて法令を確認し、シートベルトの重要性について考えてみよう。
シートベルトは全席に着用義務がある
シートベルトの着用は道路交通法によって義務付けられている。2008年6月に道路交通法第71条の3が改定され、運転席と助手席だけでなく、後部座席のシートベルト着用も義務化された。つまり、クルマに乗車している全員にシートベルト着用義務があるということは、多くのクルマユーザーに理解されていることだろう。しかし、交通事故の死傷者には、シートベルト非着用による車外放出などが後を絶たないことも事実である。シートベルト着用の重要性について、法令のおさらいとあわせて今一度考えてみよう。
一般道路、高速道路に関わらず、運転席と助手席のシートベルト非着用は、一般道路・高速道路を問わず違反点数が1点。後部座席の場合は、高速道路においてのみ違反点数が1点付される。いずれも反則金は科せられない。着用の免除規定はあるが、特定の職業に従事している場合や、療養上の理由など、極めて限定的なケースのみである。
シートベルト非着用時の致死率は着用時の約12倍
2019年11月に警察庁とJAFが合同で実施した「シートベルト着用状況全国調査」によると、一般道路におけるシートベルト着用率は、運転席98.8%、助手席95.9%と高い数値であるのに対し、後部座席では39.2%と未だに低い。また、高速道路においても後部座席の着用率は74.1%で、前席に比べて低い結果が出ている。後部座席の着用義務に対する意識が薄くなりがちなのは、一般道路の場合は行政処分が科されないことも原因のひとつと考えられる。しかし後部座席のシートベルト非着用には、大きな危険性が潜んでいるのだ。
・車内で全身を強打する可能性
交通事故の衝撃で、前席や天井、ピラー部(柱)などに頭や全身を打ち付ける危険性がある。
・車外に放り出される可能性
衝突の勢いが激しい場合、クルマの回転による遠心力で窓ガラスを突き破って体が外に放出される危険性がある。
・前席乗員が被害を受ける可能性
衝突の勢いで前方に投げ出され、前席の人がシートとエアバッグに挟まれ頭を強打したり、胸部を圧迫したりして重症を負う危険性がある。
例えば、時速60kmで走行しているクルマが壁などに衝突した場合、威力は高さ14mのビルから落下した場合と同等の衝撃となる。
どれほど恐ろしい威力なのか、JAFユーザーテスト「後席シートベルト非着用時の危険性」の動画で確認することができる。動画では、テスト車両(ミニバン)の前席と後席にダミー人形を各2体乗せ、後席運転席側のみシートベルト非着用とした。時速55kmでフルラップ前面衝突試験を実施した結果、シートベルト非着用のダミーは前方に大きく投げ出され、運転席のヘッドレストに頭を打ち付けた。そして、その衝撃により、シートごと運転席のダミーを押しつぶしてしまっている。
同テストでは、頭部が受ける衝撃を示すHIC(頭部傷害基準)値も計測された。シートベルト非着用の後席ダミー、シートベルトをした運転席ダミーのHIC値が最も高いのは、どちらも互いがヘッドレストを介して衝突した瞬間である。後席ダミーはHIC値2192、運転席ダミーはHIC値1171であった。HIC値は1000を超えると頭部に重大な損傷が発生する可能性があるため、非常に危険な値である。
このテストは、ドライバーがシートベルトをしていても、その後ろに座った同乗者がシートベルトをしていなければ、ドライバーが重大な傷害を負う可能性もあることを示している。同乗者がいる場合、運転者は全員のシートベルト着用をしっかりと確認したいものである。
致死率についても驚くべき数値が出ている。警察庁によると、後部座席シートベルト非着用時の致死率(2010年~2019年)は、一般道路においては着用時の約3.3倍、高速道路ではなんと約11.7倍にもなるという。
もちろん、後部座席に関わらず、どの座席においても運転中のシートベルト非着用は危険である。同じく警察庁が公開している2019年中の座席位置別死者統計を見てみると、シートベルト非着用死者は、後部座席以外でも運転席41.9%、助手席22.7%存在していることが分かる。
うっかりではすまされないシートベルト非着用。その危険性を再認識し、自分と同乗者を守るためにシートベルトは必ず着用するようにしたい。