「ムフロン」|第1回アニマル”しっかり”みるみる
世界中から集まった様々な動物たちを、間近で見て・感じられる施設がサファリパーク。そんなサファリパークを120%満喫するため事前に知っておくべきポイントを、担当飼育員さんに "しっかり" ご指導いただきました。教えてくれるのは、富士山の自然豊かな環境をバックに動物たちの姿を楽しめる "富士サファリパーク" の植木さん。草食動物担当の植木さんに、野生のヒツジ「ムフロン」を120%解説してもらいました。
渦巻のなかにも個性がある、ムフロンの角
ヒツジの祖先種とも考えられているムフロン。何といっても一番の特徴は、ぐるぐると渦巻く大きな角です。
「独特なカーブを描く2本の角は、後方に円を描くように渦を巻いて伸びます。角はオスにしか生えません」と植木さん。観察ポイントは、その角の形と伸び方にあるのだという。
「きれいに渦を巻いて伸びるもの、左右非対称に伸びるもの、丸みを帯びて伸びるものなどいろいろあります。角は一頭一頭その伸び方に個性があるから、観察のしがいがあります」(植木さん※以下同)
ムフロンの角は、ちょっと見は渦の巻き方や質感も「アンモナイト」の化石のようです。角は生まれて2か月齢くらいから徐々に生えてきます(オスの場合)。死ぬまで生えかわることはなく、折れてしまうとその部分は欠けたままになるそうです。
「その角ですが、自分の首に突き刺さってしまうような形に伸びてしまう場合もあるんです」
オス同士が角の突き合いで群れの中の順位を決めるムフロンにとって、角の形はとても重要な意味があります。角が変な形に伸びるということは突き合いによる戦いでは不利になることを意味します。強くぶつけることに不向きだったり、貧弱な角だと出世もおぼつかないというわけです。角が変な形に伸びるのは、野生下では栄養不良であることが原因と考えられています。より栄養のある食事にありつくため、一食一食が戦いでもあるのですね。
ムフロンのオス同士は、よく角の突き合いを行っていて、恋の季節ではより激しくなるそうです。メスでは頭突きになりますが、オスほど激しくはなく、軽く頭をぶつけ合う程度だそうです。
春は赤ちゃんムフロンが見られるチャンス!
ところでムフロンってどんな性格の動物なのでしょう?
「警戒心の強い動物ですが、その一方、人間に慣れやすい側面もあります。オスのムフロンは、ナビゲーションカー(園内を周遊するゼブラ模様のレンタカー)のエサあげにはすぐ近寄ってきますよ」
またメス同士の結びつきが強いことが特徴です。
「ムフロンは群れで生活し、2種類の群れを作ります。一つは『オスの群れ』、もう一つは『メスと子供たち』で構成される群れで、メスたちはそれぞれ協調しながら暮らします」
人間でいえば子供たちとママ友の集まりみたいな感じでしょうか。恋の季節になるとオスとメスの群れが合流することもあるそうです。特にムフロンのメスは母性が強く、しっかり子育てをするのが特徴。
「頻繁に子供の体をいたわるようになめてあげたり、子供がちゃんと自分の後をついてきているかをいつも確認したりする様子が見られます」
ムフロンの母子を見かけたら、その愛情の細やかさもしっかり観察してください。
春先は赤ちゃん誕生ラッシュで、生まれたばかりの赤ちゃんムフロンがお母さんの後を遅れまいと必死に追いかける姿が見られます。生後1~2か月くらいだと、毛がモコモコしていていかにも赤ちゃんぽい。体色は大人に比べてやや灰色がかっています。生まれたばかりでも足は太くて、地面をしっかり踏みしめます。おっぱいを飲むときも力強く、グイグイ乳首を引き寄せるように飲む姿はたくましい。2月末~3月にかけて誕生することが多く、4~5月までに訪れれば、まだ赤ちゃんムフロンの姿が観察できます。
「あと顔がめちゃくちゃ可愛いです」
さぁどう可愛いのか、赤ちゃんの顔も要チェックです。
しっかり動物観察をするために欠かせない道具って何?
ところで、動物観察には欠かせない道具があるのをご存じですか?
「それは『双眼鏡』です! 車だとどうしても動物までの距離が離れてしまうことが多いし、草食動物は体の小さな動物種も多いし、動物の赤ちゃんたちは小さいですから。細かな部分を拡大してしっかり観察するためには必需品です」
最後に「ムフロンあるある」を伺ってみました。
「春先のあるあるなのですが、お母さんムフロンが『メ―メ―』と鳴きながら何かを探している光景によく出くわします。子供を見失って、心配で鳴き声で呼び寄せようとしているんです」
こんなところにもムフロンのお母さんの母性の強さを感じますね。